マイナンバー制度 ありがちな8つの誤解と対処法

2015-09-09 | 社会

マイナンバー、ありがちな8つの誤解と対処法 一般編
 2015/09/09 大豆生田 崇志=日経コンピュータ
 インターネットではマイナンバー制度への誤解を基にした書き込みが少なくない。マイナンバー制度導入に反対する人だけでなく、自由に使わせようと求める人にも誤解がある。マイナンバーに関係する事務に携わる企業などの関係者は、こうした誤解を一つひとつ解きながら対応を準備する必要がありそうだ。まずは一般的な誤解への対処法をまとめた。
1. 個人情報が一元化され、預貯金が差し押さえられたり副業がばれたりする?
 マイナンバー制度で最も理解されていないのは、そもそもマイナンバーがなぜ必要なのかだ。端的にいえば、マイナンバー制度を導入する目的は、縦割り行政で見逃されてきた社会保障の不正受給や課税逃れをなくして必要な人に再分配をするためだ。
 2011年6月に政府・与党社会保障改革検討本部がまとめた「社会保障・税番号大綱」は、制度が「公平性・透明性を担保し、もって本当に困っている国民を支えていくための社会インフラであり、国民にとって、そのようなメリットが感じられるものとして設計されなければならない」としている。
 行政機関はこれまで、氏名や住所などを使って個人を特定していた。ところが、2007年に「消えた年金記録問題」で持ち主の分からない5000万件もの年金記録が発覚した。それを契機に企業の顧客番号と同じように行政機関も一人ひとりの情報を管理できる仕組みが検討されはじめた。従業員の社会保障費を納めていない企業の不正が把握されやすくなったり、極端に所得が少ない人が税控除や年金の免除申請がしやすくなる可能性はある。
 ただし、行政機関は個人情報を一元管理しない。これは重要なポイントだ。
 国や自治体で保有する個人情報は、マイナンバー制度の下でも各省庁や各自治体が個別に管理する。マイナンバーで個人情報を突合するには「情報提供ネットワークシステム」にアクセスしてマイナンバーを機関別符号に変換し、それぞれの行政機関のシステムにあるデータに照会する必要がある(図1)。

   

  図1●マイナンバー制度での個人情報の管理(出所:内閣官房)
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 情報提供ネットワークシステムから情報を引き出すと、いつ情報が見られたかという記録が残る。個人は2017年から利用できる「マイナポータル」で、どんな情報に照会をかけられたか確認できるようになる予定だ。
 もちろん、番号で情報を管理するのは両刃の剣だ。一人ひとりに割り当てられるマイナンバーは、個人を特定できる強力な索引となる。番号が悪意の者によってさまざまな個人情報をひも付けて違法に利用する恐れはある。
 そこでマイナンバー制度は、法律や条例で定められた手続きに利用目的を限定している。仮にマイナンバーが漏洩しても、なりすましを防ぐために写真付きの身分証などで本人確認と番号確認が必要なので、それだけでは何もできない仕組みだ。
 野村総合研究所(NRI)でマイナンバー制度に詳しい梅屋真一郎・制度戦略研究室長は、個人にとってマイナンバーは「クレジットカード番号と同じくらい大切な情報」と指摘する。必要ないのにクレジットカード番号を伝えることはないのと同じように、法律や条例で定められた手続き以外でマイナンバーを教えてはいけない。
 企業も、個人からマイナンバーを伝えてもらう際には、税や社会保障の手続きのために利用するという目的を知らせなければならない。本人が同意していても、法律に決まっていない目的では利用できない。
 逆に言えば、国民がマイナンバーにどんな情報をひも付けていいのか、国民の監視が必要だ。9月5日に、政府が消費税率を低く抑える軽減税率のために、「マイナンバー制度を使って所得税から軽減分を還付する」という財務省案が報道された。
 しかし、そもそも希望者にしか配布しない個人番号カードに対応して、全ての小売り店がカード読み取り装置を設置して購買履歴をひも付けるのは実質不可能に近い。国民の合意を得られるとも考えにくく、極めてハードルが高いだろう。
 2015年9月に成立したマイナンバーの法改正は、2018年から預金者が口座に任意でマイナンバーを付けられるようにした。その利用目的は、行政が、金融機関が破綻した際に預金保険機構によるペイオフで預貯金を合算したり、社会保障制度での資力調査、国税・地方税の税務調査で預金情報を利用するためだ。政府は今回の法改正で預貯金の差し押さえには使えないと説明している。
 また、雑誌やネットでは、マイナンバー制度で勤務先に隠していた副業がばれるといった話も広がった。実際には所得に応じて変わる住民税の納付方法のうち、会社の給料から天引きする「特別徴収」を選ぶと把握されやすくなるという内容で、直接マイナンバー制度とは関係ない。マイナンバー制度への誤解に振り回されたり、特殊詐欺の被害に遭わないよう最低限の知識は身に付ける必要がある。
2. 日本年金機構で個人情報の漏洩があったばかりなので危険?
 日本年金機構は2015年6月、125万件の年金情報などが流出したと公表した。マイナンバーの利用範囲を広げる2015年の法改正では、日本年金機構はマイナンバー制度の利用開始後も一定の期間、マイナンバーの利用や特定個人情報の照会、提供を行わないとした。
 年金機構での情報流出の原因は、個人情報の取り扱い方法に不備があり、以前から課題が指摘されていたのに改善されなかったためとされる。日本年金機構の漏洩によってマイナンバー制度は危険だという批判が集まり、マイナンバー法改正案の国会審議も一時中断した。
 しかし、NRIの梅屋氏は著書「これだけは知っておきたい マイナンバーの実務 」(日経文庫)で、「もしマイナンバーを取り扱っていたら、このような漏洩事件は起きないか、仮に起きていたとしてもここまで被害が拡大しなかったのではないか」と指摘する。マイナンバーのルールが厳格で、取り扱い状況を厳しく監視・監督されるためだ。
 仮に漏洩した情報が、マイナンバーと結び付いた個人情報である特定個人情報であれば、関係者は重い処分の対象になった可能性もある。マイナンバー制度によって、行政機関ごとに異なっていた情報セキュリティのレベルを一斉に引き上げる契機にしなければならないだろう。
3. マイナンバーの通知カードの受け取りを拒否できる?
 マイナンバーの通知カードは2015年10月以降、約5500万世帯に簡易書留で一斉に送られる。ところが、Twitterを中心に「通知カードの受け取りを拒否すれば制度は止まる」という偽情報が広がった。受け取り拒否しても制度に影響はない。困るのは、むしろ本人と源泉徴収などの手続きの際にマイナンバーを記載することを課せられた企業などだ。
 総務省の公表資料によると、通知カードが受け取り拒否された場合の対応案がある(図2)。それによると、通知カードの保存期間は3カ月で、2015年末までは無料で再送される予定という。

   

  図2●通知カード返戻時の対応フロー(案)
  出所:総務省、月刊J-LIS7月号からの抜粋を基に作成
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 ただし、2016年1月以降の再交付は有料となる恐れがある。市区町村の窓口で本人確認のうえで受け取るか、自治体によっては独自サービスで簡易書留で再送する対応も検討するとしている。
 企業が従業員や支払い相手からマイナンバーを集められなかった場合の対応については、国税庁が「国税分野におけるFAQ」というWebページで詳細に対応方法を説明している。
 個人番号の提供を受けられない場合、法律で定められた義務であることを伝えて、それでもなお提供を受けられない場合は、提供を求めた経過などを記録・保存し、企業として単なる義務違反ではないことを明確にするよう求めている。さらに国税庁は「個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません」と明記している。
 総務省は2015年8月に、事情により住民票のある住所で通知カードを受け取れない人への案内を公表した。東日本大震災の被災者やDV(ドメスティック・バイオレンス)、ストーカー行為や児童虐待などの被害者のほか、一人暮らしの長期入院者らが避難先など住民票のないところでも、送付先を変更できる(総務省のWebサイトの該当ページ)。
 しかし、自治体を対象に実施した総務省のサンプル調査で、通知カードの275万世帯分が「受取人不在」などの理由で届かない可能性があると報道された。しかも通知カードを受け取る方法の説明には不親切な点が多い。
 総務省のWebサイトからは「やむを得ない理由により住所地において通知カードの送付を受けることができない方への各種質問について」という文書をダウンロードできる。文書には成年後見人が被後見人の通知カードを受け取る方法に異なる説明が別々の場所にある。
 この総務省の文書に記載されている問16の「成年後見人が自らの住所などを登録できるか」という質問に対して、同居していなければ、「成年後見人の住所等を当該成年被後見人の居所として居所情報の登録申請を行うことはできない」と回答している。
 一方で、問25では「成年被後見人の通知カードについて、当該者の成年後見人が交付を受ける方法はあるか」という質問に、「成年後見人に来庁させ、本人確認の上、当該通知カードを交付して差し支えない」として市区町村に相談するよう求めている。
 介護施設などに入居する高齢者は、住民票に記載した住所とは別に、親族らが成年後見人として市区町村からの書類を受け取っている人も多いだろう。誰もが自分のマイナンバーをしっかり管理できるように丁寧な説明が必要だ。
4. マイナンバー制度のような仕組みは日本にしかない?
 日本のマイナンバー制度と全く同じ仕組みという意味では海外にはない。
 ただ、当初の検討段階から海外の制度や失敗例も議論された。内閣官房が公開している検討資料では、米国が1936年に導入した社会保障番号(SNS)や、行政分野で単一の番号を利用しているスウェーデンのほか、納税者番号を導入したものの他分野での利用や情報連携には慎重なドイツの例が紹介されている(図3)(=省略. 来栖)。
 しかし、米国や韓国などでは、本人の申告による「番号」のみで本人確認をしていたため、なりすましなどの不正利用が社会問題となった。そこでマイナンバー制度では、番号のみで本人だと判断しないように、原則として写真付きの身分証明書などで本人確認したり、番号が正しいものか確認したりすることが決められた。米国のようにクレジットカードや銀行口座の申し込みをする場面で、社会保障番号を使って本人だと確認するような利用は認められていない。
 また、マイナンバー制度では悪用される恐れがある場合、新しい番号に変更して、古い番号を無効にできる。こうした仕組みも、原則変更できない韓国の住民登録番号とは異なるという。さらに、公正取引委員会と法的に並ぶ、特定個人情報保護委員会(2016年1月に個人情報保護委員会に改組)がマイナンバーの利用などを監督する。マイナンバーに携わっていた人が正当な理由ないのにマイナンバーを含む情報を提供した場合は最高で懲役4年や200万円以下の罰金が科せられる。
 ただ、通知カードが送付される2015年10月中旬以降はマイナンバー制度の最初の混乱が予想される。こうした混乱を抑えて、誰もがマイナンバーの扱い方に慣れた段階を経たうえで、国民が安心して納得できる分野や方法でマイナンバー制度の利用範囲の拡大を検討する必要がある。
 残る4つの「誤解」については、次回解説する。

 ◎上記事は[日経コンピュータ]からの引用です 
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「軽減税率」に騙されるな 新聞業界に対しては増税プロパガンダへの協力を求めるエサにもなる 2012-05-14 


3 コメント

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脱 国民洗脳なら副島隆彦の学問道場 (脱 国民洗脳なら副島隆彦の学問道場)
2015-09-10 13:24:38

日本はアメリカの属国、つまり家来国家である! アメりカの洗脳広告代理店、電通による、テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ等の、マスコミを使った偏向報道で、見事な国民洗脳をされ続ける日本人は、自分自身の脳、すなわち思考そのものを点検せよ! さらにネット洗脳システムのツイッターやフェイスブックの利用、まとめサイトには注意が必要である。 我々はハッ、と気付いて、常に注意深く、用心して、警戒し、疑いながら生きれば、騙されることはない。 すべてを疑うべきなのだ!

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徒然ばぁば様 (ゆうこ)
2015-09-09 21:01:17
 コメント、本当に嬉しいです♪
 ただ、「ソフィアの母」さんが書かれていました
≪気を使ってくださって、私のブログも訪問しなければ・・なんてことは思わないでくださいね。お気遣いなく≫
 は、そのまま私の気持です。絶対に、お気を遣わないでくださいませね。弊ブログは自分のための備忘録、メモにすぎません。備忘録といっても、ネットの海に浮かぶ泡のようなもの・・・いずれ消える儚いものです。
 私は裕ちゃんが他人!と思えず、会いたくて、訪問しています。徒然ばぁばさんと一緒にいて欲しい、そんな気持ちばかりです。「徘徊」は、チョット大変。お二方とも健康体で、と祈っています。
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ゆうこ 様 (徒然ばぁば)
2015-09-09 15:58:01
世の中 分からない事が 多すぎて・・・私は、ついて行けないよ・・・(笑)。

昨日からの雨が止み、また 暑くなってきました。
昨夜は とても 寒かったのに・・・。

風邪をひかないように・・・お互いに 体に 気を付けましょう。
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