『私たちが、地球に住めなくなる前に―宇宙物理学者から見た人類の未来』
リース,マーティン【著】〈Rees,Martin〉/塩原 通緒【訳】
内容説明
2050年には地球人口が90億人に達するとされている。食糧問題・気候変動・世界戦争などの危機を前にして、人類は何ができるのか?宇宙物理学の世界的権威が、バイオ、サイバー、AIなどの飛躍的進歩に目を配り、さらには人類が地球外へ移住する可能性にまで話題を展開する。科学技術への希望を語りつつ、今後の科学者や地球市民のあるべき姿勢も説く。地球に生きるすべての人々へ世界的科学者が送るメッセージ!
目次
第1章 人新世の真っ只中で(危険と展望;核の脅威 ほか)
第2章 地球での人類の未来(バイオテクノロジー;サイバーテクノロジー、ロボット工学、AI ほか)
第3章 宇宙から見た人類(宇宙を背景にした地球;太陽系の先で ほか)
第4章 科学の限界と未来(単純なものから複雑なものへ;この複雑な世界を理解する ほか)
第5章 結び(科学の営み;社会における科学 ほか)
著者等紹介 リース,マーティン[リース,マーティン] [Rees,Martin]
1942年生まれ。世界的に著名なイギリスの宇宙物理学者・天文学者。英国王室天文官、元ロンドン王立協会会長、元ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学寮長
塩原通緒[シオバラミチオ]
翻訳家。立教大学文学部英米文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
◎上記事は[紀伊國屋書店]からの転載・引用です
【書評】近藤雄生(ゆうき)(ライター)
『私たちが、地球に住めなくなる前に』マーティン・リース著
東京新聞 2020年2月9日
倫理に導かれた技術を
地球が経てきた四十五億年以上の歴史の中で、今世紀は特別だと著者は本書の冒頭で明言する。「人類というひとつの生物種が、この惑星の未来を掌中にできるほど権限と支配力を持った初めての世紀」だからだ。
しかしその結果、私たちは現在、無数の問題に直面している。人口増加、気候変動、我々をどこに導くかわからない新技術。そして格差、貧困、政治……。それらの難題を私たちはどう乗り越え、そして未来はどうなるのか。その重大なテーマに、世界的な天文学者である著者が正面から向き合ったのが本書である。
著者は各問題の本質とともに私たちが採れる方策を具体的に提示していく。その中で彼が貫くのは、技術の発展を肯定的に評価する「テクノロジー楽観論者」としての姿勢である。決してブレーキをかけることなく「適切なテクノロジーをいっそう迅速に配備する」ことが、私たちが選ぶべき道だとする。
ただ同時にこうくぎを刺す。テクノロジーは「社会科学と倫理に導かれたものでなくてはなら」ず、私たちは地球規模かつ長期的な視点に立ち、「責任あるイノベーション」を起こし続けていく必要があるのだと。
著者の考えには、科学に実直に向き合ってきたことを感じさせる公正さと深い知恵、そして、人間の力を信じようとする強い思いが滲(にじ)み出る。未来は私たちの意思次第で変わりうる。それゆえに、著者のその真摯(しんし)な意思を知ることは、私たちの誰もに少なからぬ意味があると思った。
ちなみに、著者が提示する、さらに先の未来の可能性が衝撃的だ。AI(人工知能)やロボットの発展によって今後、無機的な知能が人間に取ってかわって何十億年も存続していくことになるのかもしれない。とすれば、地球上で人類が支配的な地位にいるここ数千年など、その前段階のほんの一瞬の出来事にすぎないかもしれないのだ。
説得力のある予測に感じた。と同時に、現在の予測などほとんど無意味なほど未来は未知なのだとも思えてくる。
塩原通緒(みちお)訳、作品社・2420円
※もう1冊
スティーヴン・ホーキング著『ビッグ・クエスチョン-<人類の難問>に答えよう』(NHK出版)。青木薫訳。
◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2020.2.9 Sun〉
日頃、感じていたこと。ただ私が強く憂慮してきたのは、人類がこの地球を破滅(環境破壊)させたために、他のすべての生きものが生存できなくなるという申し訳なさであった。公園散歩の仲間ともよく話す。
しかし、上記事は、次元が違う。人類の遺産(無機的な知能)がこの地球を支配するということだ。無論、他の罪のない生物は生存できないだろう。恐ろしいことを人類はしでかしてしまった。
* 素晴らしい宇宙、地球をお創りになった神は、なぜ邪悪な人類を造られたのか 〈来栖の独白 2019.8.2〉
『創世記』
神はお造りになったすべてのものをご覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。(第1章21節)
主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。(第6章5~6節)
この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。(第6章11~12節)