リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第5回公判①証人尋問ーリンゼイさんの両親 2011/7/11

2016-05-15 | 死刑/重刑/生命犯

 産経ニュース 2011.7.11 11:43
英国女性殺害 第5回公判(2011年07月11日)

【英国女性殺害 市橋被告5日目(1)】「英国の法廷はショー」 弁護側発言にリンゼイさん父、いら立ち
 《千葉県市川市のマンションで平成19年、英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で、殺人と強姦致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第5回公判が11日、千葉 地裁(堀田真哉裁判長)で始まった。今回はリンゼイさんの両親に加え、批判覚悟で市橋被告の支援を続けてきた大学時代の恩師らへの証人尋問が行われる》
 《これまでの公判で、市橋被告はリンゼイさんへの殺意を否定。2日間にわたって行われた被告人質問では、リンゼイさんが死亡した後の心境について「夢か現実か分からなくなった」と語り、遺体遺棄の理由などについては「分かりません」などと繰り返している》
 《今回の公判は前回に続き、リンゼイさんの父、ウィリアムさんの証人尋問から始まる。ウィリアムさんは第4回公判で、まな娘の命を奪った市橋被告への怒りを爆発させ、「この国で最も重い最高刑を望みます」と死刑を求めた》
 《市橋被告が2年7カ月の逃亡生活をつづった自らの手記『逮捕されるまで』の印税を遺族に支払うとしていることについては「娘を殺しておいて、それをネタに金を稼いでいる」と糾弾し、「一銭もほしくない」とも述べた》
 《今回はウィリアムさんに続き、母のジュリアさんの証人尋問も行われる。法廷ではこれまで、市橋被告がリンゼイさんを乱暴した際の生々しい記録や証言が次々と白日の下にさらされている。母の目にはどう映ったのだろうか》
  《午後には弁護側の情状証人として、市橋被告の千葉大時代の恩師2人が出廷する。うち一人は、千葉大大学院の本山直樹名誉教授。本山さんは「市橋達也君の適正な裁判を支援する会」のメンバーで、ホームページ上で、顔を変え逃亡中の市橋被告に出頭を呼びかけたり、支援金集めを呼びかけるなど、批判を受けながらも活動を続けた》
 《7月8日付の本山さんのブログによると、これまでに集まった支援金は333人から約330万円。すべてが弁護側の裁判費用に充てられるという。市橋被告とは空手同好会の顧問として知りあったというが、法廷では何を訴えるのだろうか》
 《午前10時、黒っぽいジャケットに身を包んだホーカーさん一家が入廷する。ウィリアムさんとジュリアさんは検察官席の後ろに、リンゼイさんの姉妹は傍聴席の一番前に着席した》
 《次いで市橋被告が刑務官に付き添われ、左側の扉から入廷する。黒いシャツに黒いジーンズ姿。うつむいたまま、ウィリアムさんらに向かって頭を下げるが、ぼさぼさの髪がさえぎり、その表情はよく見えない》
 《午前10時5分、裁判員らが入廷し、裁判長が開廷を宣言。前回に続き、ウィリアムさんの証人尋問を行うことを告げる》
 《ウィリアムさんが席から立ち上がった。市橋被告を威嚇するかのように胸を張り、証言台に向かう。刑務官3人が立ち上がり、市橋被告をガードするように囲んだ。市橋被告はじっとしたまま動かない》
 《8日の法廷では、ウィリアムさんが市橋被告に近づき、怒りの形相で市橋被告を見下ろす一幕があった。刑務官はそれを警戒したのだろう》
 《裁判長が尋問に当たっての注意点を述べた後、弁護人が立ち上がり、女性通訳を介しての尋問が始まる》
 弁護人「証人のお仕事について伺います。2007年(平成19年)3月、事件当時どのようなお仕事をされていましたか」
  証人「自動車教習所の教官でありました」
  弁護人「現在のお仕事は?」
  証人「同様であります」
  弁護人「(事件前後で)お仕事は変わっていないということでよろしいですね」
  証人「そうです。しかしながら自営であります」
  弁護人「証人の最終学歴を教えてください」
  証人「ちょっと理解できないのでもう1度お願いします」
  弁護人「日本でいう高校卒業が最終学歴ということでよろしいですか」
  証人「私は専門教育を受けたエンジニアです」
  弁護人「それは日本でいう技術学校のようなものでしょうか」
 《ここで裁判長が「日本の制度で聞かれても分からないと思いますが」と発言。弁護側は質問を取り消し話題を変える》
 弁護人「リンゼイさんが死体で発見されたことは、いつ知りましたか」
 《ウィリアムさんは「すーっ」と深く息を吸った後、質問に答える》
 証人「26日の日曜日でした。日中か夜間かについては、はっきり記憶していませんが、その日に行方不明になったと知らされました。死体で発見されたというのは、日曜日から月曜日(27日)の間だったと思います」
  弁護人「日本と英国の時差は8時間ですね」
  証人「おっしゃる通りだと思います」
  弁護人「リンゼイさんが遺体で発見されたのは(平成19年)3月26日の夜遅く。日本とイギリスの時差を考えても、26日の昼から夕方にかけて、娘さんの死亡が知らされたと思いますが」
  証人「何日かというのははっきりしませんが、月曜日は仕事に行きまして、その間に娘の(日本の)勤務先(の英会話学校)から行方不明という電話を受けました」
  「連絡を受けて妻の仕事先に向かい、娘の勤務先や友人に連絡を取ろうとしました。同日夜にかけて娘の死亡を知らされました」
  弁護人「娘さんの死亡を知らされ、日本に来ましたね」
  証人「それより早くリンゼイが不明という連絡を受け、すぐに妻が日本に行く搭乗券の手配をしました」
 《傍聴席に座るリンゼイさんの姉妹は、ウィリアムさんの背中をじっと見つめている。ウィリアムさんの声がマイク越しに法廷内に響く》
  弁護人「あなたは平成19年3月31日、駐日英国大使館で、検察官の聴取を受け、調書を作成していますね」
  証人「日付の記憶はありませんが、たしかに娘が殺害された後です」
  弁護人「日本では警察や検察から(事件について)どう説明を受けましたか」
  証人「まず警察と接触したときには、それほどの情報はいただけませんでした」
  弁護人「検察は?」
  証人「検察官からは、どのような気持ちですかと質問がありました」
  弁護人「警察や検察からは、娘が強姦され、殺害されたという説明は受けませんでしたか」
 《通訳が「一番初めですか?」と質問する。弁護人が「そうだ」と答える》
 証人「いいえ、そのときに聞かされたのは『殺害された』ということのみです」
  弁護人「最初に来られたときに『殺害された』ということは聞かされていたんですね」
  《法廷で弁護側は市橋被告に殺意はなく、事件は傷害致死罪に相当するとの主張をしている。捜査側が当初から『殺害』という言葉を使い、『殺人罪』での立件を視野に捜査していたことを強調したいようだ》
 証人「はい」
  弁護人「市橋という男が逃げたということは聞かされていましたか」
  証人「容疑者はいるということは聞かされていました」
  弁護人「話は変わりますが、イギリスで刑事裁判を傍聴されたことは?」
  証人「一切ありません」
  弁護人「イギリスでは陪審という制度があることをご存じですか」
  証人「もちろんです。私は英国に住んでいますから」
  弁護人「陪審制度ではときに法廷がショーのようになったりするという話は聞いたことがありますか」
 《8日の証人尋問でウィリアムさんは、市橋被告の法廷での証言を「計算されつくし、リハーサルされたものだ」と批判。「まるでショーのようで、まったく悔いていないことは明らかだ」と発言している。弁護側の質問はその当てつけなのだろうか》
 証人「先生。どうぞ、私は自動車教習所の教官にすぎず、法廷弁護士ではありません。裁判の知識はテレビや新聞で見る程度で、それが私の得られる知識のすべてです」

【英国女性殺害 市橋被告5日目(2)】慈悲の心...「イチハシはない」断言した父の心中は?
 弁護人「証人は、イギリスで無罪の報道を目にしたことはありますか」
 《ここで若い男性検察官が「異議あり」と立ち上がった》
 検察官「必要のない質問です」
 《堀田真哉裁判長が弁護人に説明を求めた》
 弁護人「証人の証言の信用性を確かめるための質問です」
  検察官「信用性とどう関係するのですか」
  弁護人「それをこれから確かめていくのです」
  検察官「それに、証人を困惑させる質問でもあります」
 《双方、口調が厳しさを増す。堀田裁判長が「どの件についての信用性ですか」と割って入った。弁護人が「『証拠に基づいた審理を望む』との証言についてだ」と説明した》
  《ウィリアムさんは8日開かれた第4回公判で、「裁判長、裁判員の方々にはぜひ、証拠に基づいて判断してもらいたい」と語っていた。この発言を指しているのだろう。しかし、堀田裁判長は質問の仕方が適切でないと判断したのか、「質問を変えてください」と促した》
 弁護人「証人は被害者遺族としてこの裁判に参加されていますね?」
  証人「そうです」
 弁護人「いまここで行われていることは、証拠に基づき、処罰を認定する手続きだと理解されていますか」
  証人「私がここに来たのは、実際に娘に何が起きたのか究明するためです。処罰の認定は法の統治のもと、行われるべきで、私はそれを尊重します」
  弁護人「証人の母国、イギリスでは、死刑がないですね?」
  証人「そうです」
  弁護人「イギリスはヨーロッパ連合、すなわちEUに加盟していますね?」
  証人「もちろんです」
 弁護人「EU加盟国はすべて死刑を廃止しています。その通りですね?」
  証人「そう認識しています」
  弁護人「最後に処罰意見について聞きます。前回、処罰意見について『家族で同じだ』とおっしゃりませんでしたか」
  証人「そうです」
 弁護人「最初、来日したとき、検察官に処罰意見は、あなたと奥さんや娘さんたちと違うとおっしゃっていませんでしたか」
  証人「(在日英国)大使館で検察官にそう述べたことを覚えています。私は、はっきりと『この国での最高刑を要求します』と述べました。それが死刑なら当然それが適用されるべきと思う。妻と娘は検討の余地があるとしていました」
 《ジュリアさんはほおに手を当て、真剣なまなざしで証言を続ける夫を見つめている》
  証人「私としては変える余地がない。EUとか質問なさいましたが、これはこの国で起きた犯罪です。今回の事件は、日本の法律で治められている日本で起きました。日本での最高刑を望む気持ちに変わりはありません」
 《きっぱりこう答えたウィリアムさんに弁護人が矢継ぎ早に質問する》
妻と娘は検討の余地があるとしていました」
 《ジュリアさんはほおに手を当て、真剣なまなざしで証言を続ける夫を見つめている》
  証人「私としては変える余地がない。EUとか質問なさいましたが、これはこの国で起きた犯罪です。今回の事件は、日本の法律で治められている日本で起きました。日本での最高刑を望む気持ちに変わりはありません」
 《きっぱりこう答えたウィリアムさんに弁護人が矢継ぎ早に質問する》
 弁護人「奥さんと娘さんたちは終身刑を望んでいたのでは?」
  証人「それは違います。(妻や娘は)当時、まだ事実を知らされていませんでした」
  弁護人「最後になります。日本では和ということを大切にしているということをご存じですか」
 《通訳は「和」を「Harmony(ハーモニー)」と翻訳した》
 証人「ハーモニーを尊重するのは、日本だけでなく、世界共通だと思います」
  弁護人「日本では、慈悲と寛容の心を大切にしているのはご存じですか」
  証人「聞いたことがあります」
  《こう述べた後、ウィリアムさんは語気を強めた》
  証人「しかし、イチハシ(市橋被告)は聞いたことがない、と思います」
  裁判長「他に尋問はありますか」
 《堀田裁判長はこう聞き、検察側にも質問がないか確認した上で、約20分間の休廷を告げた》
 《ウィリアムさんは「サンキュー」と述べ、証言台の席を立った。証言台の後ろの長いすに座っていた市橋被告はうなだれたような姿勢のまま動かなかった》

【英国女性殺害 市橋被告5日目(3)】テコンドー学んだリンゼイさん 母「力の限り自分を守ろうと」
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん) 致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第5回公判が再開。堀田真哉裁判長からリンゼイさんの父、ウィリアムさんに対する 裁判所側の尋問がないことが告げられた》
 《続いて、リンゼイさんの母、ジュリアさんの検察側証人尋問が始まった。法廷中央の証言台に進んだジュリアさんだが、市橋被告と目を合わせない。市橋被告もうつむいたままだ》
 検察官「リンゼイさんの実の母親ですか」
  証人「そうです」
  検察官「リンゼイさんは護身術などを学んでいましたか」
  証人「13~16歳の間、テコンドーを学んでいました」
  検察官「護身術を使って事件でも抵抗したと思いますか」
  証人「死にものぐるいで、力の限り、必死で自分を守ろうとしたと信じています。護身術は身に付いていたと思います」
 検察官「リンゼイさんは大学卒業後、なぜ英会話講師を始めたのですか」
  証人「リンゼイは大学を卒業した時点で18年間の教育を受けていました。その後、教職か医者かで(将来を)迷っていました。外国で無為な時間を過ごすのでなく、進路を決めるため海外に行きました」
  検察官「なぜ日本を選んだのですか」
  証人「小さなころから東洋にあこがれを持っていました。着物やヘアスタイルに興味を持ち、日本語の会話を学んだこともありました。そして、日本は 安全と確認しました。英会話学校のイギリス支部で面接を受け、宿泊費や旅費を学校側に持ってもらう条件でオファーを受けたのです」
 《リンゼイさんは、市橋被告へのプライベートレッスン後、レッスン料を忘れたという市橋被告とともにマンションに向かい、被害に遭った。英会話学校での授業が控 えていたリンゼイさんは、マンション4階に向かうエレベーターで、仕切りに腕時計を気にする様子が防犯ビデオに映っていた》
 検察官「イギリスでは事件はどのように報道されましたか」
  証人「実はリンゼイの死を真夜中に聞きました。月曜日の夜中から火曜日の朝方にかけてです。しかも、それまで音信不通で、2日間寝ていませんでした。事件は新聞など、ありとあらゆるところで報道されました」
  検察官「イギリス人の日本に対する印象はどうなりましたか」
  証人「残念なことに、この事件で、日本は世界で最も安全でない国になりました。海外で英語を教えようとしていた人が、日本から行き先を変えたと聞いたことがあります」
 検察官「事件は家族に対し、どのような影響を与えましたか」
 証人「みなさん、子供が死んだとき、親がどのような思いになるか分かりますか。想像を絶する悲しみがあります。子供が親より先に死ぬのは普通ではあり得ないことです。しかも、リンゼイは殺害されました。苦しみや悲しみは言葉を絶します。食べることもできません」
  「残された2人の娘が目の届かないところに行くと、不安になります。なぜ日本に行かせてしまったのか。自宅にはベランダやバルコニーがありますが、足を踏み入れることはできません。エレベーターに乗っていて、誰かが乗ってくると震えます」
 《リンゼイさんの遺体は市橋被告のマンションのベランダに置かれた浴槽の中で土に埋められていた。ジュリアさんは、ベランダやエレベーターなど事件を連想させる場所に近づけないことを主張した》
 証人「2人の娘は"親友"を失いました。影響は言葉では語れません」
  検察官「2人の娘さんは公判傍聴のために日本には来ないということでしたが、なぜ家族みんなで来たのでしょうか」
  証人「この目で自分の姉妹を奪った男を直視することが死の喪失感への対処につながると考えたからです。娘たちには判断力があります」
 《ジュリアさんは、長女が事件のショックでカウンセリングを受けていたことを明かした上、力強く語った》

【英国女性殺害 市橋被告5日目(4)】手記の印税「1ペニーも受け取らない」 痛烈批判に被告の震え止まらず
 《検察側は市橋被告からの謝罪の手紙について質問している》
 検察官「弁護人を通じて、謝罪の手紙を届けたいという意向は伝えられていますか」
  証人「私どもは何度も来日し、自首(出頭)するように要求しました。被告人の親にも自首を促すように手紙を送りました。しかし、彼は逃亡を続けた」
   「逮捕されて以降、彼(市橋被告)から連絡は一切ありませんでした。その後、謝罪文を送りたいという意向を弁護人を通じて知らされました。ですが、彼が娘 の死に対して本当に申し訳ないと思っているとは思えない。裁判対策だと思う。いかなるコミュニケーションも取りたくない」
 《ジュリアさんの口から繰り返される厳しい言葉に、市橋被告は肩を大きく振るわせている》
 《検察側は、市橋被告が出版した手記について話題が変わった。手記には、市橋被告の逃亡生活などが記されている》
 検察官「本の出版の内容について知っていますか」
  証人「私自身読んでいません。読みたくもない。ただ、ネット上では本についてのいろいろな記事があり、多少は何が書かれているか知っています」
  検察官「逃亡中の様子を出版したことについてどう思いますか」
   証人「まず、そんな本を書くこと自体、奇妙な話。私どもとしては(市橋被告が)失礼なことをしていると思う。こちらの気持ちを無視したこと。逃亡中の出来 事をぬけぬけと書くことは、普通の人ではできないと思います。捜査当局に対する狡猾(こうかつ)なジェスチャーだと思います」
 《市橋被告は、この手記の印税を被害者弁済にあてるとしている。この点についても検察側から質問が出た》
 検察官「印税を出すと言っているがどう思いますか」
  証人「あまりにもひどい話。侮辱の極みです。彼が本によって何らかのお金を得るとしても、私の娘を殺して、殺人の成果物として得たものです。1ペニーたりとも受け取れ
 検察官「あなた自身はどのような刑を求めますか」
  証人「最高刑を求めます。どの刑を求めるかというのはずっと考えていました。2人の娘とも話し合って理由を考えた。理由は、この男が私の娘に対して一切の慈悲もなく、あのようなことをしていたからです。そして、殺したまま捕まることなく暮らしていた。最高刑を求めます」
 《質問の最後に、検察側から他に述べたいことがあれば話すように促されると、ジュリアさんは堰(せき)を切ったように自分の思いを話し始めた》
 証人「私は良き妻であり、良き母親であることに徹してきた。美しい娘たちに恵まれ、支え合って生きてきた。娘たちは『私の世界』でした。その男が私の娘を奪ったのです。その理由がどうしても分からない」
  「娘と22年暮らせて幸せだった。裁判官、裁判員のみなさんが素晴らしい娘に恵まれている親ならば、今の私の気持ちが分かるはずです」
 《続いて、弁護側からの質問が始まった。男性弁護人がゆっくりとした口調で質問していく》
  弁護人「この裁判に遺族として参加した理由はなんでしょうか」
  証人「卑劣さを理解していただくためです」
  弁護人「リンゼイさんが殺害されたと考える根拠は何なのでしょうか」
  証人「私には娘が自分で首を絞めたとか、窒息させたとは考えられないからです。それは他者によって行われたと思うからです」
  弁護人「被告人質問は聞きましたか」
  証人「はい」
  弁護人「裁判前に思っていたことと、被告人が法廷で述べたことと違っていましたか
 証人「分かりません。そのような点を判断するのは裁判官の役目だと思います」
  弁護人「最後の質問になります。リンゼイさんがどうして亡くなったのかという被告人の説明を聞きましたか」
  証人「いいえ」
 《ここで、女性通訳から弁護側に先ほどの質問の意味が「事実を聞いたのか」か、「納得した」かどちらの意味かと尋ねた。弁護側は事実を聞いたのかという意味であることを伝え、再度、訳し直して同じ質問が行われた》
 《だが、ここで、検察側から誤導だと指摘があり、堀田真哉裁判長は質問を聞き直すように弁護側に伝えた》
 弁護人「リンゼイさんが亡くなった際の状況は聞きましたか」
  証人「はい」
 《弁護側の質問が終わり、検察側も最終尋問がないと答えた》
 裁判長「裁判所から質問があれば休廷後に質問します。それまで約20分間休廷し、午前11時55分からの再開とします」
  《休廷が告げられ、ジュリアさんは証言台からリンゼイさんの父、ウィリアムさんの隣の席に戻った。ウィリアムさんとジュリアさんは少し言葉を交わして退 廷。市橋被告は、自力で立ち上がることができず、4人の刑務官に抱えられるようにして立ち上がった。退廷するまで、市橋被告の手の震えは止まることはな かった》

【英国女性殺害 市橋被告5日目(5)】「婚約者3カ月後に来日予定だった」リンゼイさん母、涙
 裁判員「もしこの場に被告の両親がいたら、何か言いたいこと、聞いてみたいことはありますか」
 証人「質問に答えるのが難しいです。実は、考えたことがありませんでした。私は親の立場で話しています。親の立場からすれば、イチハシの両親の気持ちが推し量られます」
  《ジュリアさんは複雑な胸中を明かした上で、大学卒業後も仕送りで息子を生活させていた両親に対する厳しい心情ものぞかせた》
 証人「付け加えて言うと、事件当時イチハシは28歳で、仕事に就いていませんでした。リンゼイは22歳でしたが、(イギリスから)地球を半周もした場所で仕事を持ち、親から自立していました。私たちはリンゼイを自立した大人として扱っていました」
 裁判官「リンゼイさんには婚約者がいました。2人にどんな家庭を築いてほしかったですか」
  証人「リンゼイと(婚約者の)□□(法廷では実名)は、大学に入学して1週間で出会い、その後恋愛関係になり、深く思い合うようになりました。リンゼイが日本に留学することになり、□□は本当に悲しがりました」
  「この年(平成19年)の1月にも1度来日し、(事件の3カ月後の)2007年6月からは日本で(英語を)教える計画を立てていました。教鞭(きょうべん)をとった後に2人は日本を旅行し、帰国する予定だったんです。2人は子供を4人ほしいと、いつも言っていました」
  《ここで証人尋問は終了。証拠調べについての確認を終えた後、堀田真哉裁判長は休廷を告げた。午後の審理は1時15分から再開される》

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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