「義足の少女」感動広がる…内閣府募集作文で総理大臣賞
(2009年12月10日 読売新聞)
読売新聞・編集手帳でも紹介
生まれつき左足がなく、義足をつけて生活している熊本県南阿蘇村立久木野小4年、藤崎未夏さん(10)の作文が、障害者週間(3~9日)にちなんで内閣府が募集した「心の輪を広げる体験作文」の小学生部門で、総理大臣賞に選ばれた。
6日の読売新聞・編集手帳であらすじを紹介したところ、「感動した」「全文を読むにはどうしたらいいか」といった声が久木野小や読売新聞社に続々と届くなど、反響が広がっている。
作文の題は「気持ちを伝えたい」。義足を初めて見た1年生から「にせ物の足だ」と言われて傷ついたものの、担任の先生に勧められてありのままをみんなの前で話し、ショックを乗り越えた体験をつづった。
「同じように悩んでいる人が読んでくれて、『思い切って伝えてみよう』という気持ちになってもらえたら、うれしいです」。総理大臣賞に選ばれた感想を未夏さんはそう話し、「来年また、成長した姿を作文に書きたい」と笑顔を見せる。
夢は作家になること。サリドマイドによる薬害の被害者で、その半生が「典子は、今」という映画にもなった白井のり子さん(47)(熊本市)が3年前、同小に講演で訪れ、著書をプレゼントしてくれたことがきっかけだった。両腕に障害があっても一人で身の回りのことをする白井さんの生き方に感動し、「体が不自由な人が読んで元気になるような本を私も書きたい」と、日々の出来事を作文にしているという。
読売新聞・編集手帳で作品が紹介された後、同小には「涙が止まりませんでした」「勇気づけられました」といった声が電話や手紙で十数件寄せられ、読売新聞社にも同様の感想が相次いでいる。「伸び伸び育って、夢をかなえてほしい」と母親の京子さん(34)。白井さんも「やりたいと思ったことに挑戦し、いろんな経験をしてもらいたい」とエールを送る。
藤崎さんの作文「気持ちを伝えたい」(全文)
私は、生まれつき左足がなくて、義足をつけています。学校生活の中で、足がいたい時やプールの時など義足をはずす時があります。
四月になり、一年生が入って来ました。一年生は、まだ入って来たばかりで、私の事を知りませんでした。
五月に運動会の練習が始まりました。体育館での練習の時、半そで半ズボンにはだしでダンスの練習をしていました。半ズボンだったので、義足をはめた足が目立っていました。その時、一年生が何人か集まって、
「にせ物の足だ」
と言いました。私は、すごくいやでした。今までも、同じような事を言われてきたからです。だから、いつも足が見えないように、長ズボンばかり着ていました。そして、いろいろ言われるのがこわくて、にげるように義足をかくしていました。本当は、何を言われても気にせずに、どうどうとしていたいと思っていたけど、その勇気がありませんでした。だから「にせ物の足」と言われた時も、がまんしていました。
授業が終わり、担任の先生に相談しました。先生は、
「一年生に足の事を話してみようか」
と言いました。私は、みんなの前で話せるか、自信がなくてまよっていると、先生が、
「話してみようよ」
とはげましてくれました。
その夜、私は一年生に話す文を考えました。内容は、「どうして足がないのか」とか、「みんなと同じことが出来る事」とか、「義足をはめた時は、どんな感じなのか」など、一年生にも分かるように書きました。
一年生教室に話しに行きました。三人の友達が、一しょに来てくれました。一年生は、私の話しを、
「すごい。」
と言って聞いていました。その後、みんなの前で義足をはずした姿を見せました。一年生は、びっくりした様子で私を見ていました。その時私は、「やっぱりここでやめようかな」と思いました。でも私は、勇気を出して見せたり、質問をうけたりしました。その質問は、
1「走っている時義足は、はずれないの」と
2「手じゅつをする時は、いたくないの」
などの質問です。その時私は、こう答えました。1つ目は、
「ゴムみたいな所がすべり止めになるから、はずれません」
と答え2つ目は、
「ねむっているから、いたくないです」
と答えました。
一年生に、義足の事を分かってもらうために、話をして、いやだった事とか、分かってほしいこととか、自分の気持を伝えられたし、一年生の気持ちもよく分かったのでよかったです。これからは、「にせ物の足」と言われないと思うと「ホッ」としました。
勇気を出して話をしたことで、少しずつ自分の気持ちが変わりました。いやだった半ズボンやスカートがいやじゃなくなり、どうどうとできるようになりました。
今では、一年生とも仲良く遊んだりしています。だれも「にせ物の足」と言わなくなりました。
先生や友達から、勇気をもらって、自分の気持ちを一年生に伝えられました。ありがとうございました。これから、新一年生や新しい友達と出会った時は、勇気を出してどうどうと、自分の気持ちを伝えたいです。
[編集手帳]12月6日
小学4年のその女の子は生まれつき左足がない。幼い新入生たちが義足を見て、「偽物の足だ」と心ないことを言う。彼女は当然、傷つき、担任の先生に相談した◆そこからの先生の対応と、少女の勇気が素晴らしい。先生は「1年生に足のことを話してみようか」と提案する。少女はそれを受け入れて1年生の教室を訪ね、目の前で義足をはずして、足がない理由や自分の気持ちを自然体で説いた◆障害者週間(3~9日)に合わせて内閣府が募集した「心の輪を広げる体験作文」の小学生部門で、総理大臣賞を受けた作品のあらすじだ。自らの体験をつづったのは熊本県の南阿蘇村立久木野小学校4年、藤崎未夏さん◆紙幅の都合で一部しか紹介できないが、首相官邸のホームページで鳩山内閣のメールマガジン第9号を開くと、未夏さんのメッセージとともに全文へのリンクがある◆審査員の一人として作品を読ませてもらった。自我が育つ時期に、良き先生に出会えた未夏さんと1年生たちの何と幸せなことか――そんな思いを抱きつつ最優秀作に推した。全員一致である。多くの人に読んでいただきたい。
新S くらべる一面「編集局から」2009/12/10
朝日新聞
COP15の難しい交渉をめぐる原稿が相次いで飛び込んできます。夕刊の「コペンハーゲン合意」案に続いて朝刊では日本政府の方針も特報しました。新興国の独自案も明らかになっています。「新興国」がキーワードのもう一つのニュースが、スズキとフォルクスワーゲンの資本提携です。中国に強いVW、インドで圧倒的なシェアを誇るスズキ。勝ち組による新興国戦略の補完という側面に環境技術の要素も加えた大型記事は、2面に掲載しました。(陽)
日本経済新聞
「今は年齢は7掛け。私は56歳ということになる」。独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携を発表した記者会見で、スズキの鈴木修会長兼社長が「若さ」をアピールしていました。販売台数では3倍近い差があるVWを相手に「対等の関係」を強調するなど、したたかさを見せつけています。新興国を意識した組み合わせとしては強力な連合が生まれます。米国勢の存在感が急速に薄れる中、新たな再編を呼び起こす提携になりそうです。(K)
読売新聞
「私は、生まれつき左足がなくて、義足をつけています」。こんな書き出しの小学4年生の少女の作文が、反響を広げています。内閣府の「心の輪を広げる体験作文」で、総理大臣賞に選ばれました。「にせ物の足だ」と言う1年生たちの教室に、少女は勇気を出して説明に出向きます。「どうどうと、自分の気持ちを伝えたい」と結ばれた作文は、読む側にも勇気を与えてくれます。第3社会面に載った全文を、ぜひお読みください。(中)