介護殺人、心中400件 制度10年、やまぬ悲劇
2009年11月20日 09時14分
介護保険制度が始まった2000年から09年10月までに、全国で高齢者介護をめぐる家族や親族間での殺人、心中など被介護者が死に至る事件が少なくとも400件に上ることが、中日新聞の調べで明らかになった。加害者の4分の3が男性で、夫や息子が1人で介護を背負い込み行き詰まるケースが多い。件数は増加傾向にあり、06年からは年間50件以上のペースで発生している。
過去10年の新聞報道をもとに調査。被害者が介護保険の利用対象となる65歳以上の殺人、傷害致死、保護責任者遺棄致死、心中など「致死」事件を拾い上げた。判明した400件のうち、殺人59%(うち承諾6%、嘱託3%)、傷害致死11%、保護責任者遺棄致死4%、心中は24%だった。
加害者の続柄は、夫と息子がいずれも33%。婿や孫などを合わせ、男性が4分の3を占めた。一方、被害者は妻が34%、母が33%。祖母などを合わせると、女性が7割以上を占めた。
加害者の年代は50代が25%と最多。60代22%、70代23%、80代13%となっており、60代以上の老老介護が6割を占める。
加害者の職業は、無職の割合が息子で62%。20代から50代に絞っても、61%とほぼ同じで、働き盛りの男性が介護のため職に就けず、経済的にも追い詰められていく構図が浮き彫りになった。
被告となった加害者の58%が実刑判決、41%が執行猶予判決を受けている。
調査は中日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)、共同通信と、北海道新聞、河北新報、西日本新聞など友好紙の過去記事をデータベースで検索。介護をめぐる事件を調べている湯原悦子日本福祉大准教授の資料も参考にした。
◆埋もれている事例も
介護をめぐる事件は自治体報告をまとめた厚生労働省のデータも警察発表された事例が漏れており、信頼できる公式統計がない。
警察発表も、心中の場合は「死亡が1人なら発表しないこともある」(警視庁、愛知県警)。「10年で400件」は文字通り、氷山の一角といえる。また、殺人未遂や傷害、暴行事件は警察発表がないか、あっても新聞掲載が見送られることも珍しくないため、今回は調査対象としなかった。
事件が家族間で起きていることも、表面化を難しくする。日本高齢者虐待防止センター(東京都)は「命にかかわるような虐待があっても埋もれているケースは確かにある」と話す。介護を受ける高齢者が「家庭の恥をさらしたくない」との気持ちから口をつぐむ場合や、近所の人が兆候をつかんでも通報に踏み切れない場合が多い。同センターには「警察や行政が動いてくれない」との相談もある。(中日新聞)
■次男が絞殺--「母親は認知症で、自分の言うことも理解してくれない。介護に疲れてやった」
「介護疲れた」母の首絞める 容疑の次男を逮捕
asahi.com2009年9月27日11時38分
26日午後7時25分ごろ、岡山県倉敷市水江のアパートから「介護に疲れ、母親の首を絞めた」と110番通報があった。倉敷署員が駆けつけると、アパートの一室で男が真田ナツ子さん(88)の首を絞めているのを発見。男を引き離し、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。真田さんは搬送先の病院で死亡が確認された。同署は容疑を殺人に切り替えて調べている。
発表によると、男はナツ子さんの次男で無職の勝重容疑者(59)。アパートで2人で暮らしていたという。勝重容疑者は、ベッドで寝ているナツ子さんに馬乗りになって両手で首を絞めていたという。「母親は認知症で、自分の言うことも理解してくれない。介護に疲れてやった」と供述しているという。