「朝日」完全敗北も…橋下氏なお「戦闘宣言」 再び批判つぶやく

2012-10-21 | メディア/ジャーナリズム/インターネット

「朝日」完全敗北も…橋下氏なお「戦闘宣言」 再び批判つぶやく
zakzak 2012.10.20
 新党「日本維新の会(維新)」代表である大阪市の橋下徹市長(43)の出自に関する「週刊朝日」の連載記事の問題は、連載をたった1回で打ち切るという朝日側の異例の対応で全面敗北に終わった。これで「ノーサイド」とした橋下氏だが、20日朝には再び自身のツイッターで朝日批判を強めており、問題は長く尾を引きそうだ。
 朝日新聞は20日発行の朝刊社会面で、週刊朝日の連載中止を伝える記事を掲載した。「橋下氏巡り不適切記述」との見出しを添え、《ノンフィクション作家・佐野眞一氏らによる橋下徹・大阪市長に関する連載記事「ハシシタ 奴の本性」について、地区などに関する不適切な記述が複数あったことを理由に、第2回以降の中止を決めた》と報じた。
 また、筆者の佐野氏は19日、「記事中で地区を特定したことなど、配慮を欠く部分があったことについては遺憾の意を表します」とコメント。河畠大四・週刊朝日編集長も謝罪した。
 橋下氏は19日夜、ツイッターに「朝日新聞社グループが方針を出した。謝罪と週刊朝日での連載打ち切り。これでノーサイド」と投稿。朝日側の対応を受け、矛を収めるかに見えた。
 ところが20日朝になると再び批判を展開。「大手メディアの表現が人を殺すに匹敵する場合があるとの自覚がない。殺した後に責任をとるとはどういう責任か?」「大きな事故が起きて、情報開示が不徹底なら、朝日新聞は徹底追及するではないか。その姿勢で、週刊朝日に臨むべきだ」などと、滞在先の鹿児島県から投稿を繰り返した。
 連載記事が1回で打ち切られることは、出版界では極めて異例。朝日新聞出版の親会社である朝日新聞にとっても、佐野氏にとっても屈辱的な事態だが、「そもそも、覚悟の上の執筆-という触れ込みでスタートしていた。打ち切るくらいなら初めから連載すべきではなかった」(ライバル週刊誌副編集長)といった声が業界内に渦巻いている。また、皮肉なことに問題の連載が掲載された最新号は、完売状態だ。
 ジャーナリストの大谷昭宏氏は「連載を中止するのであれば、執筆者の佐野眞一さんの意向も責任を持って説明すべきだ。そうでなければ言論の自由を制限したことになる。中止を判断した編集部側の経緯は不透明で、結末には不可解さが残った」と、幕引きを急いだ朝日の姿勢に疑問を呈した。
 また、同和問題に詳しい作家、宮崎学さんは、「『週刊朝日』の記事が、橋下徹大阪市長の出自と政治スタイルを結びつけようとしたのは誤りだ。ただ、血脈だけに絞った市長の反論の仕方も、同和問題を本当に理解しているとは思えない。双方に正しい知識がないまま、議論は終始かみ合わなかった」と指摘している。
-----------------------------------------
丸山和也氏“橋下vs朝日”をバッサリ「維新の勢い挽回が目的では」
zakzak 2012.10.20
 かつて日本テレビ系「行列のできる法律相談所」で橋下氏と激論を交わした自民党の丸山和也参院議員(66)は、両者のバトルを「少し幼稚だ」と評した。
 橋下氏は、週刊朝日の連載が主に、(1)特定地域を被差別と明記している(2)人格を否定するために血脈を持ち出しているのは血脈主義、ナチスの優生思想に通じる-などと批判している。
 これに対し、丸山氏は「橋下氏の人生をほとんど書かず、血縁だけをクローズアップして彼の人格を否定した週刊朝日の構成は間違っている。タイトルも問題だ。ただ、それをもって『血脈主義者』『ナチスと同じ』と批判する橋下氏は飛躍している」と語った。
 その理由として、丸山氏は「政治は政策に加え、実行する人物が信頼できるかどうかが重要。今後、トップになるかもしれない人物について血縁も含めて掘り下げるのは、世界中どこでもやる」と前置きし、「特に、橋下氏は『経験がすべて』と座右の銘のようにいい、言動、政策は経験や体験が土台になっている。その彼の人生や血縁に関する記事は、政治心理学的に興味深い」と話した。
 確かに、このあたりは橋下氏も記者会見で一部認めている。
 一方で橋下氏は当初、週刊朝日を発行する朝日新聞出版が、朝日新聞の完全子会社であることを理由に、「朝日新聞の質問は受けない」との姿勢を取った。
 丸山氏は「彼はケンカをして騒ぎ立て、その中でうまく立ち回り、勝ち上がってきた。今回は、週刊朝日の明らかな失敗だから自信があるのだろう。法廷で名誉毀損を争うより、朝日新聞を巻き込んで騒ぎを燃やしたほうが政治的効果も大きい。『朝日新聞をやり込めれば、維新の勢いも挽回できる』と考えたのではないか」と分析した。
 こうした手法について、丸山氏は「政治ではなく、見ていておもしろいだけの“橋下維新興業”にならないか心配だ」と不安視している。
-----------------------------------------
花田紀凱氏「いつもの佐野さんらしくないと思っていた」打ち切りの橋下連載に
zakzak 2012.10.20
 連載記事を書いた佐野氏と交流のある月刊『WiLL』編集長の花田紀凱氏は、週刊朝日の連載打ち切りについて「編集長の交代は免れない」との見解を示した。
 「編集部、編集長は記事の内容をチェックするのが仕事で、明らかにそれを怠っていた。前例がないこと。編集長の交代は免れない」
 佐野氏とは「長い付き合い」という花田氏。「よく彼の性格も知っている。が、今度の件に関してはいつもの佐野さんらしくないと思っていた」と、疑問を抱いていたという。
 「人の出自はどうしようもないことで、タイトルからしてバイアスがかかり、記事を読んで嫌な感じがした。冷静さを欠いていた。編集長はどこまでチェックをしたのか。橋下さんの憤慨はもっともだと思っていた」
 朝日ブランドが受けるダメージも深刻だ。「当然、痛手は大きい。人権などのテーマを最も商売に使ってきたのが朝日。週刊朝日は子会社が出しているとはいえ、グループであることに間違いない」と、チェックの甘さが信用を傷つけたとみる。
 週刊朝日は1回での連載打ち切り、次号でのおわびの掲載により、事態の幕引きを図る。これで収束へと向かうのか。
 花田氏は「連載の打ち切りは週刊誌にとって非常に重い決断」としたが、廃刊の可能性については、「ないと思う。橋下さんの対応次第ではあるが、橋下さんは大きな選挙を控えた身でもある。この問題だけに関わっていくとは思えず、ほどほどのところで落としどころを見つけるのではないか」とみている。
--------------------------
〈来栖の独白 2012/10/21 Sun.〉
 弊ブログでは、水掛け論的なものや極めて個人的なものはこれまでエントリしなかった。今回の週刊朝日の記事に関しては、橋下氏個人のスキャンダル・ゴシップではなく、差別という人権に関わる問題また公器(メディア)のあり方に関わる問題だと判断してエントリした。
 が、たった1日2日で、騒動は橋下氏個人の動きになってしまったようだ。また、上記に見られるように著名人のコメントのたぐいも、「個人」に限定されてきた。
 本件について、週刊朝日の対応は見事だ。差別という沈痛な問題に抵触したことを自覚したが故に、潔く早々に身を処した。
 橋下氏は、執拗なつぶやきはやめるべきだ。これ以上やれば、「差別」を私物化、利用したことになる。
 著名人も、問題の本質からコメントを呈さねばならない。
==========================================
橋下徹市長記事「ハシシタ 奴の本性」連載中止/石原知事、記事「卑劣」と批判/黒いシール事件 新井将敬 2012-10-19 | メディア/ジャーナリズム 
 週刊朝日:橋下市長記事の連載中止
 毎日新聞 2012年10月19日 20時49分
 「週刊朝日」が日本維新の会代表の橋下徹大阪市長の出自を題材にした連載記事を掲載し、橋下氏が朝日新聞の取材を拒否している問題で、出版元の朝日新聞出版は19日、連載を中止すると発表した。
 週刊朝日の河畠大四編集長は「地区などに関する不適切な記述が複数あり、このまま連載の継続はできないとの最終判断に至った」との談話を発表した。
 週刊朝日では、10月26日号からノンフィクション作家の佐野眞一氏と取材班による緊急連載として「ハシシタ 奴の本性」がスタート。橋下氏の抗議を受け、18日に「不適切な記述が複数あった」とする河畠編集長の謝罪コメントを出していた。(共同)
-------------------------------
朝日新聞も謝罪「深刻に受け止めている」
産経ニュース2012.10.19 20:57
 日本維新の会代表の橋下徹大阪市長の出自に関する「週刊朝日」の連載記事打ち切りについて、朝日新聞は19日、謝罪コメントを発表した。
 朝日新聞社広報部は「当社から平成20年に分社化した朝日新聞出版が編集・発行する『週刊朝日』が今回、連載記事の地区などに関する不適切な記述で橋下市長をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしたことは誠に残念で、深刻に受け止めている」としている。
-------------------------------
橋下氏VS朝日 佐野眞一氏「『週刊朝日』に取材には応じないよういわれている」
zakzak 2012.10.19
 新党「日本維新の会(維新)」代表である大阪市の橋下徹市長の出自を題材にした連載記事を、朝日新聞社系「週刊朝日」が掲載し、橋下氏が朝日新聞の取材を拒否している問題で、出版元の朝日新聞出版は18日夜、謝罪コメントを発表した。ただ、橋下氏は公開論争を求めており、バトルはまだ続くもよう。連載が打ち切りとなるか否かが注目されそうだ。
 「地区を特定するような表現など、不適切な記述が複数ありました。橋下市長をはじめ、多くのみなさまにご不快な思いをさせ、ご迷惑をおかけしたことを深くおわびします」
 週刊朝日の河畠大四編集長のコメントにはこう書かれていた。「私どもは差別を是認したり、助長したりする意図は毛頭ありません」ともあったが、連載継続について朝日新聞出版は「コメントできない」としている。
 これを受け、橋下氏はツイッターで「週刊朝日の編集長から直接会って説明をしたいと申し入れがあった」と明かし、「これはオープンの場でやらなければならない」との考えを示した。
 さらに、問題の連載「ハシシタ 奴の本性」を執筆したノンフィクション作家、佐野眞一氏について、橋下氏は「(佐野氏は)そもそもが僕は『敵対する相手を絶対に許さない人格』だと断定し、僕が政治家であることが危険だという考えで連載開始。その人格を暴くために、僕のDNAを暴くと。政治的に決戦を挑んできた相手、侮辱してきた相手には負けるわけにはいかない」ともツイートしている。
 今回の論戦は、あくまで連載内容に関するものだが、在阪ジャーナリストは「橋下氏が朝日新聞を攻撃することで、結果的に、竹島発言などで離れた保守層の支持を取り戻すことになるのではないか」と分析する。
 維新の支持率低下は、合流する国会議員を選別する公開討論会がお粗末すぎたことが原因といわれている。さらに、日本固有の領土である竹島について、橋下氏が「韓国と共同管理すべき」と語ったため、保守層の空気が変わったとされる。
 こうしたなか、リベラル色が強い朝日新聞とのバトルは、橋下氏や維新が保守層に再評価されるという指摘だ。
 今後の注目は、橋下氏と朝日による公開論戦と、問題の連載が継続されるかどうか。騒動の効果もあり、週刊朝日10月26日号は、関西をはじめ各地の書店で次々と売り切れになっているが、関係者の間では「タイトルを『はしもと』ではなく『ハシシタ』としている時点で(連載継続は)厳しい」との声もある。
 夕刊フジでは、佐野氏に直接取材を申し込んだが、佐野氏は「週刊朝日に『取材には応じないように』といわれている」と返答した。
-------------------------------------
石原知事、出自の記事「卑劣」と批判
産経ニュース2012.10.19 18:27
 東京都の石原慎太郎知事は19日の定例会見で、橋下徹・大阪市長の出自をめぐる週刊朝日の連載記事について、「出自や親族の職業をあげつらい、それがDNAとして受け継がれて危険だというのは、中傷誹謗(ひぼう)の域を出ない卑劣な作業だ」と厳しく批判した。
 石原知事は会見冒頭、「友人だから腹に据えかねて申し上げる」と前置きして批判を展開。「橋下さんにも子供がおり、その子供にまで影響する。文筆を借りて、他人の家族までおとしめるという物書きは許せない」と語った。
 記事を執筆したノンフィクション作家の佐野眞一氏については「や被差別の問題について強い偏見を持っている」と指摘。「私も被害者の一人。父親の本籍地に出かけ、石原一族は、ではないか、と誘導尋問をしていたと報告があり、あきれた」と語った。
 また、佐野氏の作品には作家の深田祐介氏や山根一眞氏らの作品からの盗用があるとして事例を列挙。「卑しい。卑劣だ」と述べた。
 朝日側が朝日新聞と週刊朝日は別会社で編集権も別、と説明している点については、「ただのエクスキューズ(言い訳)だ」と述べた。
----------------
〈来栖の独白2012/01/19Fri.〉
 佐野眞一氏については、『東電OL殺人事件』という著作があるという程度しか私は知識を持ち合わせていない。
 橋下徹大阪市長にまつわる今回の事件は、赦し難い。一方的、全面的に、佐野眞一氏と週刊朝日側が悪い。
 週刊朝日が異例の早期対応をしたのには、本件がゴシップやスキャンダルの範疇ではなく、「」「」といった、我々日本人に極めて重いテーマ、差別という、人権の最も深いところに抵触しているからだ。
 私はカトリックの問題委員会に属して、ご自身がの出身であるシスターから差別について多く教わった(彼女は勝田死刑囚と私を支えてもくださった)。
 差別は「」だけではなく、人間の深いところ、様々なところを住処としている。
 いかに文化が発達したかに見えても、人間の卑しい意識は文化によっては超克できないのではないか。とりわけ「出自」に関する差別は、執拗だ。100年経っても200年経っても、消えないのではないか。今回の佐野眞一氏の記事は、そんな私の「差別はなくならないのでは・・・」という暗い予感を確信、増幅させた。
 「ハシシタ 奴の本性」は、酷い。心無い記事であるが、これはひとり佐野眞一氏だけの問題ではない。私たち一人ひとり裡に巣食っている問題である。人間は、卑しい興味の方へではなく、やはり「尊厳」の方へ向けて1ミリでも歩んでいきたい。
 ところで、ちょっと他の独白になるが、日高義樹著『帝国の終焉』によれば、オバマ大統領はハワイアンヒッピーの母親をもち、父親はケニア人のイスラム教徒で、オバマ大統領がまだ幼いころに彼とその母親を捨てた。やがて母親はインドネシアのイスラム教徒の男性と再婚するが、再び捨てられたそうである。オバマ大統領の、貧しい人々を背景にアメリカの社会体制を変えようとする社会主義的な政治は、そういった氏の出自、養育環境も遠因しているとか。
 私たちは生きていくうえで、偏見でなく、人を真っ直ぐに見たい。できるならば、温かい優しい目で見たい。どんな人にも「こころ」があり、冒してはならない「尊厳」がある。
=========================================
石原都知事(差別発言・黒いシール事件)と、命を絶った(殺された?)新井将敬 2010-04-24 | 社会
 差別のつもりないと都知事 「帰化」発言で釈明
 石原慎太郎東京都知事が、17日の永住外国人への地方選挙権付与に反対する集会で「与党幹部には帰化した子孫が多い」などと発言した問題で、知事は23日の定例会見で「私はその人たちを差別するつもりはない」と釈明した。
 知事は、選挙権付与に前向きな民主党を批判して、自らは反対の立場であることを強調。しかし、発言の根拠について「情報を明かせと言われたら、多すぎていつ誰が言ったか、さっぱり分かりませんな」と語った。
 発言については、社民党の福島瑞穂党首が「人種差別ではないか」と批判している。2010/04/23 17:48【共同通信】
-----------------
特集 地軸2010年04月21日(水)付 愛媛新聞
先祖は同じ
 いつもの放言癖では済まされない。石原慎太郎東京都知事が、永住外国人への地方選挙権付与などに反対する集会で放った「与党の幹部に帰化した(人の)子孫が多い」という趣旨の発言だ▲石原知事といえば、かつて「三国人」発言で物議を醸した。ちょうど10年前だ。なぜ、いつも不用意に人を傷つけるのか。日本の首都を預かるトップとしては、人権感覚が欠如しているというしかない▲「帰化」は中華思想的発想の言葉、というのを何かで読んだ記憶がある。つまり帰化は支配下に入ることをも意味する。知事は差別的発言を繰り返してきた。思うに知事の中では、日本や日本人中心の独自の世界観が形成されているのだろう▲が、日本や日本人の成り立ちは単純ではない。古来から現在の中国や朝鮮半島から多くの影響を受けている。人の移動も含めてだ。集団での渡来もあった。政治や産業に深く関与した人も多い。東アジアは長らく一体だったのだ▲それが崩れる契機の一つは、明治維新だろう。日本は「脱亜入欧」をスローガンに文明化をめざした。が、一方で中国や朝鮮半島の人々を蔑視(べっし)し、虐げてきた。この意味でも、知事発言は許されない▲東アジア共同体といわれる。知事の言葉を逆手にとれば、域内の先祖は同じであろう。国や国籍を超えて、手を携える方策を考えることこそが政治家の務めだ。
-----------------
【コラム】 筆洗
東京新聞2010年4月20日
 若手の論客として知られた新井将敬という政治家がいた。東大卒、旧大蔵省のキャリア官僚出身のエリートだったが、株取引での利益供与を要求した証券取引法違反容疑が浮上し、衆院が逮捕許諾の議決をする直前に自らの命を絶った▼在日韓国人として生まれ、十六歳の時に日本国籍を取得した新井氏は一九八三年に旧衆院東京2区から初出馬、落選した際に悪質な選挙妨害を受けた。選挙ポスターに「元北朝鮮人」などと書いた黒いシールを大量に張られたのだ▼それを思い出したのは、永住外国人への地方参政権付与に反対する集会で、石原慎太郎東京都知事が「(帰化した人や子孫が)国会はずいぶん多い」などと発言したからだ▼選挙区内の新井氏のポスターにせっせとシールを張って歩いたのは、同じ選挙区の現職だった石原知事の公設第一秘書らだった。「それ(帰化)で決して差別はしませんよ」と集会で知事は語ったが、彼の取り巻きが過去にしでかしたことを思い起こせば、そんな発言を誰が信じよう▼与党幹部には帰化した子孫が多いという発言の根拠はインターネットだという。そりゃあ、石原さん、いくらなんでもちょっと無責任すぎるよと言いたくなる▼あからさまな差別的発言を大きく報道したメディアは本紙だけだった。「またいつもの放言だ」と取材側がまひしているならかなり深刻だ。
-------------------
『差別と日本人』(野中広務・辛淑玉)角川oneテーマ21

     

p127~
●新井将敬の死は何をいみするのか?
 1998(平成10)年2月に、新井将敬が亡くなりました。私は彼と仕事先で何回か顔を合わせています。あの時の、新井将敬を取り巻く自民党の中の状況はどうだったのかを教えてほしいんです。
野中 僕は新井将敬に関わったほうなんですが、いまだに彼は自殺じゃないと思ってるんだ。
 それは、彼は死ぬような人ではなかったと?
野中 うん、客観的な状況の中で。ただ、彼は間違っていた。また自分がやってきたことは間違ってないんだ、という思いが強すぎた。僕は彼に直接話したんだから。彼は「議会運営委員会に出て、自分がどんなに正しかったかということを発言します」と言うから、僕はいさめた。
 「やめとけ。おまえの周囲の壕は全部埋められているんだ。もう議会運営委員会で何を証言しようが、おまえが逮捕されることは目に見えてる。だから、いまさらこうだああだと言い訳するな。そんなことよりも、自分がこれからどうして生きるかということを考えろ。もうおまえの政治家としての生命は既に絶たれようとしている。おまえはお母さんとお父さんが苦労して大阪から出してくれて、能力があったから東大を出て大蔵省に入れた。このキャリアに恥ずかしくない生き方とはどういうものかを考えてみろ」
 それが亡くなる2日前かな。
 彼は何て言いましたか。
野中 「いや、私は正しいんだ。私は正しいことを正しく国会の議運で証言するんだ。そうしたら私の潔白はわかってもらえる」と。「そんな甘っちょろいところじゃないんだ。おまえは純粋過ぎる。いまさら、そんな恥ずかしいことするな」と僕は言ったんだけどね。
 で、その2日後かな、僕が本会議場で座っておったら、亀井静香が「おい、えらいこっちゃ」って言いに来た。「何だ?」と尋ねたら、「新井将敬が行方不明だ」と。亀井がホテルに飛んでいったら、部屋で新井が死んだ状態だった。しかしまだ高輪の警察も知らなかったと。昨夜から一緒にいたという第一発見者の奥さんがおらなかった。亀井が僕に言うには、「発見から警察がくるまでに2時間ぐらい間がある。その間に何があったのか、その謎が全然僕には掴めない。この事件はおかしい」と。
 殺されたと?
野中 うん。だから新井は口封じをされたんだと。
 新井さんが国会で、「自分は朝鮮人だから、在日だから差別されてる」ってことをおっしゃっていたので、私は祖の次の日、ちょうど彼がホテルに入っている時だと思いますが、ラジオでインタビューを受けたんですよ。「新井さんがそういうふうに言ってるけど、辛さん、どう思いますか」って。
 私、新井さんの発言に正直申しあげてむかついたんです。だから私、かなり激しい口調で、「洋服を着たサルだ」って言ったんですね。彼は、政治家になっても、在日の問題は何一つやってこなかった。朝鮮人BC級戦犯のことも、在日の今のことも、戦後補償問題のことも・・・。なのに、自分が叩かれた時になって初めて在日ってことを持ち出すのはとんでもないって言ったんです。彼が経済人だったら許すけれども、政治家っていうのは弱者救済の役目を担っているわけですからね。
 そのラジオをとても多くの在日の先輩たちが聴いていて、「新井将敬を殺したのはお前だ」っていう言い方をされたんです。だけど、私は新井将敬を精神的に殺したのは石原慎太郎だと思っているんですね。最初の選挙の時に・・・。
野中 ああ、ビラを貼ってということか?
 そうそう、新井将敬のポスター三千枚に、真っ黒いシールで「北朝鮮から帰化」と書かれたものを貼った。同じ選挙区だったので驚異に感じたのでしょう。すさまじいまでの差別事件でした。確か、彼の秘書が捕まったけど、その後も石原さんは、日本人の血ではないものが国政に関わっていいのか、と執拗に言い続けていた。そんなこともあって、おそらく、新井将敬は「日本人に愛される政治家」になりたかったんだと思うんですね。よく、右翼の友だちが言うんですよ。「自民党の政治家は俺たちを裏で使っても表には出さないけど、新井将敬はいつも俺たちを表に出す」「いつでも右翼の俺たちを後援会の最初に紹介する」って。だから彼は、日本人に愛される日本人になろうと頑張ったんだろうなと、私は思ったんです。でもその彼が最後に在日だからって言った時に、私はどうしても美化できなかった。弱いものを裏切った男を、許せなかったのですよね。
 それと、野中さんと新井さんが会った前後だと思いますが、新井さんが在日の先輩のところに会いに行った話を聞いたんですよ。私が、「その時新井将敬はどうだったんですか」って聞いたら、先輩は新井議員に、「あんたはここ(在日の社会)を捨てて出てった人だろ。だから、今ここを凌げばまた次があるから、その世界で頑張れ」って。その後彼が自殺したっていう話があって、私はそれはどういうふうに自分の中で整理しようかと思ったんです。私は、はっきり言えば特権的なマイノリティなんですよね。こうやって人としゃべることもできるし、字も学ぶことができたし、それから発言するチャンスもある。そうしたらどこかで踏ん張らなきゃいけないってことが自分の中にもあるわけですね。そういう姿勢は野中さんの中にも見るんですね。
野中 いやあ、そんなもんじゃないけど。
 だから私にとって新井将敬っていう存在は、在日として超えなきゃいけない壁だと思っているんですが、彼は自民党の中では仲間がいなかったんでしょうか。
野中 そんなこともないと思いますけどね。僕らとも気安く話したし、僕は飲まんほうですから飲み食いしたりなんかするのはなかったけども、亀井静香らとも仲良かったし、ただ、彼はやっぱり「俺は東大を出て花の大蔵省に入ったんだ」という、そういうプライドが強くありすぎたんじゃないのかなあと。それが彼の甘えになってしまったんじゃないかなあと、そんな気がします。
 彼には、仮に捕まったとしても、法廷闘争をやって堂々と出てくる---そういう勇気をもってほしかった。選挙の時自分の名前を書いてもらって、成長する機会を与えてくれた人々に対して責任を持つべきだったなあと思いますけどね。
 私は、彼が朝鮮人であるということを一貫して否定し続けてきたところに人間の弱さがあるような気がしてならないんですね。
野中 そうかなあ。否定したかどうかは、僕は知らんね。
 最初は自分の存在を国際化の象徴というようなかたちで、表現していたんですけども、叩かれてからは確かにかわりましたね。私は、バランスを取るために東大とか大蔵官僚っていうものが彼にとっては必要だったんじゃないかなっていう気がします。
野中 ああ、そりゃあそうかもしれません。ああいう道を進んだのは彼の間違いだったと思うんだ。理論派で、堂々として論陣を張っておった。論客でしたよ。彼の中にも、日本社会の中で俺は人を見返してやるんだというものがあったと思うんですよ。
 私はあの時のお父さんとお母さんの激しい憤りの表情とか、すごく覚えていて。
野中 ああ、なんかね、僕も見ておれなかったですよ。(~p133)
p113~
●オウム真理教事件と破防法
 両親が犯罪を犯したからと、子どもも犯罪者のように扱われ、小学校にも行けないというのは異常でした。住むことも、食べることも、働くことも、公衆浴場に行くことも、電気ガス水道の使用も拒否されるなんていうのは、すさまじい大衆の暴力です。
 朝鮮人が叩かれてる時もそうだけど、政治家は、それはいけないことだと言ってほしい。アメリカのあのブッシュでさえ、「9、11」の後、アメリカにいるイスラム教徒は別なんだっていう話をしたにもかかわらず、日本の場合は、たとえば北朝鮮関連で何らかの問題が起きたのをきっかけに在日がボコボコやられていても、決してそれに対してコメントを出さない。それと同じように、松本智津夫氏の子どもは犯罪者の子どもだということでボコボコにやられていても誰も助けない。つまり、叩いてもいい相手を決めて、集団でストレスの発散をする。
野中 困った民族だ。
p114~
 オウム真理教関係者によるさまざまな犯罪が明るみに出ると同時に、インターネットでは、教祖である麻原彰晃は「民だ」「朝鮮人だ」という言説がまことしやかに流れた。これは、何もオウム関連の事件に限ったことではない。凶悪犯罪が起きる度に、都市伝説のように流される。これは、マスコミが「犯人は外国人風」と報道するのと同じである。外国人とは一体何をさすのか。国籍なのか、肌の色なのか、言語なのか。私は“外国人風”に見えるだろうか。つまり、「日本人」以外の者がやったと言いたいのだ。日本人はいつも善良で、被害者だと思いたいのだ。そして、彼らが言う「日本人」には、民も、日本国籍を取得した人も、アイヌも、ウチナンチュも、ハンディのある人も、セクシャル・マイノリティも入っていない。
 どこまでも徹底して自分たちと他者とを分け、そして、あらゆる問題について、自分たちの社会の問題だということから逃げようとする。そのいけにえとしての民であり、朝鮮人なのだ。

外国人への参政権付与. 日韓併合. 石原都知事の発言「人種差別」
『差別と日本人』善良で被害者の自分たちと他者とを峻別。その生贄としての民・朝鮮人
------------------------------------------


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。