動くか中東和平 新提案公表へ 米「2国家共存」容認か イスラエル総選挙 2019/4/9 投票

2019-04-08 | 国際

特集・連載 核心

動くか中東和平 新提案公表へ 米「2国家共存」容認か  核 心  

2019/4/7 中日新聞 朝刊

   停滞するイスラエルとパレスチナの中東和平交渉を巡り、トランプ米大統領が「究極のディール(取引)」と呼ぶ新たな和平案が、9日のイスラエル総選挙後に公表される。エルサレムの首都認定など親イスラエルの姿勢が顕著な米政権だが、断片的に報じられる内容では「二国家共存」を認めるとされる。2014年以来中断している和平交渉は動きだすのか-。(カイロ・奥田哲平)

  

■ 波 紋

 イスラエルのテレビ局「チャンネル13」は1月、米側関係者の話として和平案の一端を伝えた。イスラエルが占領しているヨルダン川西岸のうち、パレスチナ国家とするのは85~90%にとどめるなど、波紋を広げる内容。その首都は東エルサレムに置くとしながら、ユダヤ教とイスラム教、キリスト教の聖地がある旧市街はイスラエル主権を認め、パレスチナとヨルダンの共同管理とする。すでにユダヤ人が大規模に入植している土地はイスラエルが併合する。

 米紙ニューヨーク・タイムズは、親米の湾岸アラブ産油国がパレスチナ側に240億㌦(2兆6千億円)を支援し、周辺国エジプトとヨルダン、レバノンにも計400億㌦を与えて交渉に引き入れ、進展させる狙いと報じている。

 一部アラブ紙は「和平案にパレスチナ国家樹立は含まれず、自治区にとどまる」と伝えており、詳細は公表を待つほかない。ただ、イスラエルは東西エルサレムを「不可分の首都」と主張。アッバス議長率いるパレスチナ自治政府側は、東エルサレムやユダヤ人入植地を含むヨルダン川西岸全土を統治する考えで、双方がすんなり受け入れるのは難しい。

■ 加 担

 そもそもトランプ氏は就任以来、イスラエル寄りの路線を貫く。エルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館を移転。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金援助を停止し、3月にはイスラエルが占領するゴラン高原の主権を承認した。

 いずれもイスラエルのネタニヤフ首相率いる右派の長年の要望に沿った政策。国際法違反であるユダヤ人入植地の拡大にも無批判な態度をとってきた。ただ、和平案はイスラエルにも譲歩を迫る内容で、同国の政治評論家ハビブ・ゴール氏は「もっとイスラエル寄りになると考えていた。ヨルダン川西岸85~90%を与えるのは大きすぎる」と話す。

 一方、国連決議で認められている5百人のパレスチナ難民の帰還権について、メディアが報じる和平案では触れられていない。パレスチナ自治政府主流派ファタハの幹部ファイサル・シャハラ氏は「歴史的な権利が守られない限り、どんな提案も受け入れない」とかたくなだ。

■ 伯 仲

 和平案の行方は、イスラエル総選挙の結果に左右されそうだ。    続投を目指すネタニヤフ氏は米政権との親密さをアピールするが、政権維持には極右勢力を含む連立が必要となる。極右の主張では、パレスチナ国家樹立やヨルダン川西岸を明け渡すのは言語道断だ。

 選挙は接戦で、政権交代が可能な対抗勢力として浮上した中道政党連合「青と白」のガンツ元軍参謀総長は「外交的解決を進展するために誰とでも対話する」と和平促進の考えを強調する。ゴール氏は「ガンツ氏の方が、より柔軟に対応できるだろう」と指摘する。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


ネタニヤフ氏続投か、10年ぶり政権交代か イスラエル総選挙、9日投票

2019.4.8 09:15

   【エルサレム=佐藤貴生】イスラエルで9日、国会(一院制、定数120)の総選挙が行われる。与党リクードなど右派・宗教勢力が過半数を制してネタニヤフ首相(69)が続投するか、中道・左派の野党勢力が10年ぶりの政権交代を実現するかが焦点だ。選挙戦当初は野党側が有利との見方もあったが、終盤になって与党側が優位に立ったとも伝えられる。

 「われわれは次の段階に進む」。ネタニヤフ氏は6日にこう述べ、パレスチナ人が多く住むヨルダン川西岸に点在するユダヤ人入植地の併合を推進する方針を示した。投票を間近に控え、パレスチナ和平に消極的な右派の支持拡大を狙った発言との見方が多い。

 同氏の3月下旬の訪米時には、トランプ米政権がイスラエルの占領地ゴラン高原への同国の主権を認定。2017年1月にトランプ米政権が発足して以来続く米国との蜜月ぶりを見せつけ、外交・安全保障で着々と得点を重ねた格好となった。2月末には検察当局が汚職罪などでネタニヤフ氏を起訴する方針を示したが、「魔女狩りだ」と一貫して否定した。

 一方、中道政党連合「青と白」を率いるガンツ元軍参謀総長(59)は政治経験ゼロという新鮮さを売りに、「(ネタニヤフ氏は)汚職まみれだ」などと批判してきた。街中では、「1人で10年も首相を務めれば腐敗も進む。変化の時だ」(エルサレムの56歳会社員)との声も聞いた。

 ただ、地元メディアの終盤の世論調査では野党勢力の支持に陰りが見え、リクードなど与党勢力が63前後と過半数の議席を獲得し、連立政権を維持するとの見通しが相次いだ。野党勢力を牽引(けんいん)する「青と白」は高い支持率を維持していることからみて、労働党など旧来の中道・左派勢力が総体として支持を失っていることの表れといえそうだ。

 イスラエルではネタニヤフ政権が続いたこの10年で、国内世論の右傾化が強まった。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスがイスラエル領にしばしばロケット弾を飛ばし、宿敵イランは隣国シリアの軍事拠点化を進めているとされる。ネタニヤフ氏がこうした状況を「国家の危機」などと声高にあおってきたことも世論が変化した一因だ。

 「青と白」もイランに対しては強硬姿勢で臨み、パレスチナとの間では「分離」政策を進める-といった与党側と大差のない政策を打ち出している。政権を取ったとしても、パレスチナ問題での大幅な進展は望めないとの見方が大勢だ。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です

――――――――――――――――――――――――

在イスラエル米大使館、5月にエルサレム移転へ=米国務省発表2018/2/23

エルサレム首都認定--背景にキリスト教福音派 エルサレム問題--地位変更は無効--国連総会で決議を採択 2017/12/22

  -------------

エルサレム首都認定、トランプ政権の決断とその波紋 どうして米国はイスラエルを重要視するのか(5)最後に

エルサレム首都認定、トランプ政権の決断とその波紋 どうして米国はイスラエルを重要視するのか(4)

エルサレム首都認定、トランプ政権の決断とその波紋 どうして米国はイスラエルを重要視するのか(3)

エルサレム首都認定、トランプ政権の決断とその波紋 どうして米国はイスラエルを重要視するのか(2) 

エルサレム首都認定、トランプ政権の決断とその波紋 どうして米国はイスラエルを重要視するのか(1) 

 ------------------

遠い共存 パレスチナ占領 半世紀 ③聖都の行方 退去強制し「ユダヤ化」

◇ 遠い共存 パレスチナ占領 半世紀 ②入植地の源流 抑圧 暴力の連鎖招く 2017/9/20 

遠い共存 パレスチナ占領 半世紀 ①トランプ氏の影 イスラエル 入植に拍車 2017/9/19

 -------------------------

『ユダヤとアメリカ 揺れ動くイスラエル・ロビー』立山良司著 中公新書

 ...........


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。