小沢一郎なき野党の全くの無力

2013-06-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

小沢一郎なき野党の全くの無力
日刊ゲンダイ2013年6月15日 掲載
悪徳政治に搾り取られる国民生活
 6月26日の会期末まで、まだ10日以上残っているというのに、すでに国会は休業状態だ。早くも政界は都議選と参院選に突っ走っている。
  それにしても、これほど野党が無力だった国会は戦後、初めてじゃないか。1月28日に召集された通常国会はアベノミクス一色。野党が何をしたか思い浮かぶ国民は皆無だろう。野党の存在感はゼロ。話題になったのは、橋下徹の「慰安婦発言」くらいのものだ。
 「やり方によっては、国会は野党が主導権を握ってもおかしくありませんでした。何しろ、参院は与野党が逆転した“ねじれ”のままです。首相官邸もビクビクしながら通常国会に臨んでいました。実際、政務三役のスキャンダルが発覚し、閣僚が失言するなど危ない場面もあった。ところが、野党は見せ場もつくれない。“維新の会”を抱き込んだ策士の菅義偉官房長官に野党を分断されたこともありますが、一番の原因は、野党全体に『支持率の高い安倍政権を攻めても仕方がない』という諦めムードが広がったことです。昨年12月の衆院選で政権から転落した民主党が、いまだに立ち直っていないことも大きな理由です」(政界関係者)
  野党が弱いのをいいことに、調子に乗った安倍首相は、二言目には「政治は結果だ」「株価が上がっている」と野党を蹴散らしている。それでも野党は反論ひとつできない。弱体野党はいいようにやられている。
 <小沢一郎が健在だったら野党は結集していた>
  このままでは、14日告示された「都議選」も、7月の「参院選」も、自民党の圧勝は確実だ。
  なんと自民党が行った参院選の調査では、選挙区「全員当選」、比例区も合わせると自民単独70議席という結果だったという。
  小泉旋風が吹き荒れた2001年の64議席を上回る完勝である。
  末期的なのは、週刊誌の選挙予測で「13議席」と報じられた民主党だ。前回「44議席」、前々回「60議席」を確保した民主党にとって壊滅的な敗北なのに、党内は「思ったよりはいい」という受け止め方だった。すっかり自信を失い、戦闘意欲を喪失しているのだ。
  しかし、3週間で株価が3000円も下落したように、アベノミクスのバケの皮がはがれ、これから副作用がどんどん強まってくるのに、自民党を圧勝させていいのか。
  なぜ、野党はここまで弱体化してしまったのか。もし、剛腕の小沢一郎が民主党で実権を握っていたら、こんなブザマなことにはなっていなかったはずだ。
 「野党が国会で存在感を発揮し、参院選で勝利するためには、好き嫌いや政策の違いを乗り越えて野党が協力するしかありません。反自民の“受け皿”をつくる必要がある。バラバラで参院選を戦ったら自民党を圧勝させるだけです。ポイントは、野党第1党の民主党が小さな政党に譲歩できるかどうか。自社さ政権が成功したのも、自民党が社会党に大きく譲ったからです。もし、小沢さんが民主党の党首だったら、党内や世論の批判など気にせず、みずから悪役を買って出て、『民主党の候補者を降ろしてもいい』『政策も譲れるモノは譲る』『野党がまとまれば勝てる』と、膝詰めで他の野党を説得していたはずです。しかし、いま民主党には、小沢さんのように党内を力ずくでまとめ、野党を束ねられる百戦錬磨の政治家がひとりもいない。野党の結集は難しい状況です」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
  民主党にはリーダーシップのかけらもない海江田万里や、能力もないくせに「オレが、オレが」でシャシャリ出てくる前原誠司のような連中しか残っていないのだから話にならない。安倍首相は高笑いしているはずである。

 *上記事の著作権は[日刊ゲンダイ]に帰属します
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〈来栖の独白〉
 久しぶりに日刊ゲンダイの小沢氏関連記事を読んだ。小沢礼讃の独り善がりに絶句。
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高市発言「死者はゼロ」で始まった《情報戦》真の争点は原発の再稼働 池田 信夫 2013-06-20 | 原発/政治 
 「日本経済の幻想と真実」  福島第一原発事故の放射能による死者はゼロ  高市発言で始まった原発再稼働をめぐる情報戦
 JBpress 2013.06.20(木) 池田 信夫
 自民党の高市早苗政調会長の「福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」という発言に、マスコミや野党が一斉に反発し、高市氏は発言を撤回して謝罪した。
 これは「原発事故による死亡者」の定義の問題であり、それほど重大な失言とは思われない。それも神戸市で行なわれた講演を朝日新聞が「スクープ」する形で大騒ぎになったのは、原発の再稼働申請を阻止しようとする朝日をはじめとする反原発派との情報戦の始まりだろう。
*放射線の被曝による健康被害はゼロ
 もちろん避難による2次災害を含めれば、高市氏の発言は誤りである。震災関連死と認定された死者は今年3月現在で2688名、その半分の1388名が福島県で出ていることから考えると、間接的に原発事故が原因になった病気・事故などの死者は700人程度と見られる。
 しかし「事故で環境中に放出された放射性物質の被曝による死者」という意味では、彼女の発言は正しい。WHO(世界保健機関)の報告書でも、「日本内外の一般住民への予測されるリスクは低く、識別できる自然発症率以上の発がん率の増加は予想されない」と結論した。
  国連科学委員会も「福島第一原発事故の放射線被曝は、即座の健康被害を引き起こさなかった。そして将来にわたって一般市民、原発事故作業員の大半の健康に影響をおよぼす可能性はほとんどないだろう」という結論を出している。
 この他にも多くの研究者が福島事故の健康被害を現地調査したが、現在の最も厳格な放射線基準を適用しても、福島で癌による死者が増えることはあり得ない、というのが山下俊一氏(長崎大)、中川恵一氏(東大)、高田純氏(札幌医科大)など放射線医学の専門家の一致した意見である。
*放射能より恐い2次災害
 福島よりはるかに深刻な事故であるチェルノブイリ原発事故についても、国連科学委員会は、放射線被曝による死者は消火作業にあたった作業員など60名しか確認されていないと報告している。福島の被曝量は、チェルノブイリの1000分の1以下であり、生命の危険はない。
 ところがチェルノブイリ事故後、ロシアの平均寿命は7歳も下がったが、死亡率の上昇率は現地のウクライナより遠いロシアの方が大きかった。また放射線の影響は癌以外には出ないが、事故後に増えたのは心疾患などのストレス性の病気だった。こうした結果をロシア政府は次のように分析している。

 事故に続く25年の状況分析によって、放射能という要因と比較した場合、精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限、事故に関連した物質的損失といったチェルノブイリ事故による社会的・経済的影響の方がはるかに大きな被害をもたらすことが明らかになった。

 ロシア政府は「チェルノブイリ事故の主な教訓の1つは、社会的・精神的要因の重要性が十分に評価されなかったことである」と指摘し、「この教訓は福島第一発電所の事故にとっても今日的なものだ」と述べている。
 当コラムでも指摘したように、いま福島県で行われている「追加線量が1ミリシーベルト/年に下がるまで除染する」という方針には科学的根拠がなく、コストも何兆円かかるか分からない。それが終わるまで帰宅させないと、16万人の避難民のほとんどは家を失い、2次災害の被害はもっと増える。
 国の基準でも「20ミリシーベルト以下の地域は避難指示を解除する」という方針なので、現実的な「出口戦略」を立てて帰宅を進めるべきだ。すでに福島県の大部分の地域の実効線量は20ミリを下回っており、帰宅を阻止しているのは科学的根拠もなく恐怖をあおるマスコミである。
真の争点は原発の再稼働
 高市氏の失言がこれほど大きく取り上げられる背景には、電力4社が6原発12基で再稼働申請を準備しているという背景がある。高市氏は同じ講演で「原発は廃炉まで考えると莫大なお金がかかるが、稼働している間はコストが比較的安い」と述べ、再稼働に前向きな姿勢を示したからだ。
 原子力規制委員会は新しい規制基準を正式に決め、閣議決定を経て7月8日から再稼働の申請を受け付ける。電力各社は新たに義務づけられた安全対策工事をすでに前倒しで進めているが、審査には少なくとも半年かかると見られる。
 今後は再稼働の時期が焦点となるが、自民党内でも慎重論が強い。参議院選挙で野党が再稼働を争点にしてくることを恐れているからだ。安倍首相も「規制委の結論を尊重する」という発言にとどめ、政府としての判断を先送りしているところへ、高市発言が出てきたので、マスコミの標的になったわけだ。
 「コストが安い」という発言まで攻撃を受けているが、政府の試算でも、既存の原発を運転するコストは約1円/キロワット時、再処理などのコストを乗せても2円ぐらいと、火力に比べて圧倒的に安い。
 何より化石燃料に全面的に依存している現状は、ペルシャ湾で紛争が起こってホルムズ海峡が封鎖されると石油の8割が止まり、燃料価格が暴騰するリスクを抱えている。原発を止めていることによる燃料輸入コストの増加は年間3.8兆円と推定され、GDPを0.7%ほど下押ししている。
 この日本経済の最大の重しになっているエネルギー制約を取り除かない限り、「成長戦略」なんて絵に描いた餅である。安倍政権は、まだ支持率の高いうちに再稼働を促進する方針を決め、日本経済を建て直す計画を打ち出すべきだ。
 *上記事の著作権は[JBpress]に帰属します *強調(太字・着色)は来栖
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「河野洋平と朝日新聞を国会に喚問しろ」山際澄夫 【総力大特集 がんばれ、安倍総理!】 WiLL 2013年7月号 2013-05-30 | 読書
 「河野洋平と朝日新聞を国会に喚問しろ!」山際澄夫 WiLL 2013年7月号
p198~
お詫びと反省繰り返す
 安倍晋三首相の支持者を自任する人ほど、後味の悪い顛末だったのではないか。
 閣僚の國参拝に端を発した歴史認識問題で、安倍政権が事実上、「河野談話」「村山談話」の継承を打ち出してしまったからである。
 しかも、閣僚の國参拝について「やめればおしまい」、また、村山談話について「(侵略という言葉は)しっくりきていない」とテレビ出演で敢然と発言した高市早苗氏(自民党政調会長)を、首相官邸と自民党幹部があわてて抑え込む醜態まで演じた。石破幹事長にいたっては、「思いつきで物を言うべきではない。国益を損なう」と言い放った。
 だが、第1次安倍政権の閣僚でたった一人、8月15日に國参拝を実行した政治家がこれだけ重大な問題を思いつきで発言することなどあり得ない。
 先の大戦は、日本にとっては「自存自衛の戦い」である。そのことは、東京裁判で日本を裁いて帰国したマッカーサーの米議会での証言にもある。侵略戦争にしても定義は諸説ある。それを中国や韓国がいまだに「侵略」と言い続けるのは日本の国論が分裂しているからで、国益を損なっているのは中国や韓国の手先となって日本を攻撃する朝日新聞を筆頭とする日本の大手メディアや、かつて中国メディアに國参拝をしないことを自慢げに明かした石破氏ら、自虐史観を無邪気に信奉する政治家のほうだろう。
p199~
 安倍首相は昨年5月に行われた産経新聞のインタビューで、〈かつて自民党は歴代政府の政府答弁や法解釈などをずっと引きずってきた。政権復帰したら、そんなしがらみを捨てて再スタートできる。もう村山談話や河野談話に縛られることはない〉と述べている。
 本来なら、高市氏の発言は安倍首相への強力な援護射撃になるところだった。だが、すでに火消を図ることで首相も一致していたということなのか、誰も高市氏に続く者はなく、高市氏だけが浮き上がってしまったのである。
 首相はなお、終戦70年となる平成27年に、新しい歴史談話となる「安倍談話」を出すという。首相の決意は疑わないが、こんなことで本当に両談話の撤回などできるのだろうかという疑問が湧いてくる。
“豹変”した首相
 麻生太郎副総理ら4閣僚が靖国神社の春の例大祭に参拝し、中国、韓国が日本非難の声をあげたとき、首相の国会での発言は自民党総裁選、総選挙で「日本を取り戻す」と訴えた真骨頂を見る思いだった。
 参院予算委員会で質問されて、こう語ったのだ。
「国のため、尊い命を落とした英霊に尊崇の念を示すのはあたりまえだ。わが閣僚はどんな脅しにも屈しない。その自由は確保している」
「英霊の冥福を祈ることへの批判に痛痒を感じず、批判されて『それはおかしい』と思わないほうがおかしい」
「韓国では盧武鉉政権時代に(國参拝批判が)顕著になった。なぜ急に態度が変わったか。中国もA級戦犯が合祀されたときに、時の首相の参拝に抗議していなかった。ある日突然、抗議したわけだ」
p200~
「私たちの歴史や伝統のうえに立って、私たちの誇りを守っていくことも私の仕事だ」(4月24日)
 日本の国を守るために亡くなった兵士の慰霊で、中国や韓国の内政干渉は認めないという断固たる意思表示である。
「植民地支配と侵略」を認め、「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明した村山談話についてもこう述べている。
「安倍内閣として(村山談話を)そのまま継承しているわけではない」(4月22日)
「侵略の定義は定まっていない。国と国との関係で、どちらから見るかで違う」(4月23日)
 だが、すぐに矛を収めた。(略)
 そして、5月15日の参院予算委員会で首相は「(先の大戦で)日本が侵略しなかったと言ったことは1度もない」と述べるとともに、中国や韓国に対して「大きな被害、苦しみを与えたことに痛惜の念を持っている」などとして、村山談話を「過去の政権の姿勢を全体として受け継いでいく」と述べた。
 この「全体として」に、村山談話がいう「植民地支配と侵略」の文言が入っているのかは言及していないが、ここまで述べれば入っていないとは言いづらいだろう。
 首相は豹変したのである。
 この“豹変”について首相は、「ここで議論すれば外交、政治問題に発展する。行政府の長として歴史認識に踏み込むことは抑制すべきと考える。歴史家に任せるべきだ」と述べているが、外交問題、政治問題にする覚悟も持たずに、はたして日本の名誉が回復できるのだろうかという声が出てきても不思議ではあるまい。
米国の安倍叩き
「慰安婦」が軍によって強制されたことを認めて「反省とお詫び」を表明した河野談話についても、菅官房長官が「河野談話は、その見直しを含めて検討という考えを述べたことはない」(5月7日)と述べている。米国のシーファー前駐日大使が、「河野官房長官談話を見直せば、日本のアジアでの国益を大きく損なう」と述べたことにコメントしたものだ。
p201~
 それにしても首相が恐れる外交、政治問題とは何なのであろうか。なぜ首相は反撃の狼煙をあげながらすぐに矛を収めたのだろうか。
 それを理解するカギは、米国による安倍叩きだろう。
 4月に入って、米紙が國参拝などについて〈日本の不必要なナショナリズム〉(ニューヨークタイムズ)、〈歴史を直視できない安倍首相〉(ワシントンポスト)、〈安倍氏の恥ずべき発言によって日本は友人を持てなくなる〉(ウォールストリートジャーナル)、などと批判を重ねた。それに加えて、米議会調査局のレポート(5月1日)でも、安倍首相を「強固なナショナリストとして知られている」と名指しし、首相の歴史認識やそれに関連する発言は「東アジアの国際関係を混乱させ、米国の国益を損なう可能性があるとの懸念を生じさせてきた」とする報告書をまとめた。
 こんなレポートが米議会から発せられるとは暗澹たる思いだが、日米同盟を外交、防衛の基軸と位置付ける安倍政権にとって、これほど不気味なことはあるまい。それでなくても中国、北朝鮮が牙を剥くなかで、日米韓の連携がいまほど重要な時はないからである。
 ことに日本国内で反米感情が高まるのだけは、避けなくてはならない。
 これこそ、首相が歴史認識問題で歴代内閣と同じ位置、つまり引き続き歴史で中国や韓国に反省とお詫びを続ける情けない立ち位置まで戻った理由だろう。
日米関係悪化を喜ぶ中韓
 実は安倍首相は、第1次安倍政権でも日米関係を理由に、「慰安婦」問題で後退を余儀なくされている。
p202~
 安倍氏ほど「慰安婦」問題に熱心に取り組んだ首相はいない。「慰安婦」問題は、首相にとっては原点ともいうべき問題だからだ。総ての教科書に「従軍慰安婦」が掲載されるのに危機感を覚えて、中川昭一氏らと「日本の前途と歴史教育を考える会」をつくって河野談話否定に取り組んできたのである。
 第1次安倍政権では、「いわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書も閣議決定した。
 そんな首相にとって最大の誤算が、当時のブッシュ米大統領との日米首脳会談で「慰安婦」問題で謝罪をする羽目に追い込まれたことだった。
 安倍氏は、日米首脳会議では実際には「慰安婦」問題は論議されず、その後の共同記者会見でブッシュ大統領に「安倍首相の謝罪を受け入れる」と一方的に語られたものだと証言しているが、共同会見を見ると首相は「慰安婦の方々が非常に困難な状況で辛酸をなめられたことに対し、人間として首相として心から同情し、申し訳ない思いだ。20世紀は人権侵害の時代だった。21世紀を人権侵害のない素晴らしい世紀にするため、日本が貢献したいと大統領に話した」と述べている。
 首相としては一般的な人権問題を語ったつもりかもしれないが、否定しなかった以上、第3者からみれば謝罪したも同然だろう。これが結果的に、その後の「慰安婦」を「20世紀最大の人身売買」とする米議会でのマイク・ホンダ決議を許すことに繋がったといえなくもない。
 この決議によって米国では、「20万人もの女性が強制連行されて性奴隷にされた」というのが「慰安婦」に対する米メディアでの一般的な認識になってしまったのだから、悔やんでも悔やみきれない。
 いま、韓国系米国人によって米国内に「慰安婦」碑が相次いで建設されていることも、この決議と無縁ではない。決議には、日本が「慰安婦」問題で公式謝罪することが盛り込まれているが、「慰安婦」碑の建立は日本が謝罪していないことを理由にしているのである。(略)
 今回、中国、韓国は戦線をどんどん拡大させた。特に韓国は朴槿恵統領が米国でのオバマ大統領との首脳会談で「日本は正しい歴史認識を持たなければならない」と日本非難に踏み切った。
p203~
 中国は首脳会談を拒否している。それだけならまだよかったのだが、米国で再び日本叩きの動きが広がりつつある。日米関係がおかしくなって喜ぶのは中国、北朝鮮、韓国であろう。それだけは避けたいというのが首相の本音だろう。
朝日新聞の「戦後精神」
 米メディアは第2次安倍政権誕生前から、日本の政治動向を「右傾化」、安倍氏を「偏狭なナショナリスト」などと報じてきた。それに加えて歴史問題で中国、韓国の側に立つかのように安倍氏を罵ったのである。
 一体全体、なぜ米メディアはこぞってステレオタイプな安倍政権批判をするのか。理由は簡単である。内政干渉を手招きして恥じぬ日本のメディア、とりわけ朝日新聞を読んでいるからである。
 朝日新聞は、独立国としての日本の誇りを奪った「戦後精神」を代表している。東京裁判史観にどっぷりつかり、憲法9条に象徴される無責任な平和主義を唱え続けている。
 今回も主役は朝日新聞だった。
 閣僚の國参拝で韓国外相が来日を中止すると、それみたことかとばかりに〈安倍政権はいったい何をしているのか。両国の反発は当然予想された。これによって関係改善が遠のけば国益を損なうだけだ〉〈首相は閣僚の参拝について、それぞれの判断に任せたという。自身が参拝しなければ乗り切れると思っていたとすれば、甘過ぎると言わざるをえない〉(4月23日)と居丈高に批判した。
 さらに国会議員168人が集団参拝すると、〈日本はいったい、何を考えているのか。この国の為政者全体の国際感覚が疑われても仕方がない〉(4月24日)という。
 4月28日の「主権回復の日」に際しても、〈忘れてならない視点がある。日本が侵略戦争や植民地支配の過ちを犯したという歴史である〉(4月29日)。
 何があっても日本は侵略国家、國はその象徴というのが、朝日新聞の変わらぬ姿勢だ。
 日本を断罪する一方で朴 槿惠大統領が米韓首脳会談で日本批判をすると、〈本来、隣国同士で話し合うべき問題がこうした形でとりあげられるのは残念だが、それほど日本への不信感が強いということだろう〉と理解を示し、〈安倍政権の歴史認識を疑問視する声が米国内で急速に広がっている。このままでは、日本の国際的な孤立さえ招きかねない〉(5月10日)と嬉しそうに書いていた。
p204~
 中国、韓国と反日で唱和するのがお家芸の朝日新聞だが、第1次安倍政権以来、新しい地平を拓いたのが米メディアとの連携である。第2次世界大戦は日本とドイツの侵略戦争に対抗したものと無反省に信じ込んでいる米国のメディアなどは、歴史問題では安易に朝日新聞に騙されてしまう。安倍首相は天敵ともいえるこんな新聞に、再び足をすくわれたのである。
残された “反撃の道”
 ひとまず、歴史問題で軌道修正を余儀なくされた安倍首相だが、反撃する道は残されている。ひとつは政治決戦といわれる参院選で、河野談話と「慰安婦」問題に関する調査委員会を国会に立ち上げることを自民党の公約として戦うことだ。
 調査委員会には、「(従軍慰安婦は)朝鮮人女性を女子挺身隊名で強制連行した」と報じた朝日新聞の記者、編集責任者、証拠もないのに河野談話を発出した河野洋平氏、さらには慰安婦裁判に携わった福島瑞穂氏らを参考人として招致して、徹底的に真偽を究明するのである。米国や韓国などに調査チームを派遣し、世界の軍隊と性の歴史を調べ上げればよい。
 憲法改正も大事だが、「日本を取り戻す」というなら歴史問題は1丁目1番地ではないか。憲法改正は、独立国としての誇りを取り戻すために行うものであって、いまのような自虐史観のままでは改正しても、仏作って魂入れず、といった事態になりかねない。
 昨年、米国で韓国系や中国系米国人に取材したとき、「慰安婦の強制連行は日本政府も河野談話などで認めているではないか」と言われたことが忘れられない。国論が分裂している状態では、他国に乗じられてしまう。歴史問題は日本が国内で決着をつけない限り、解決しないことなのである。
p205~
橋下「慰安婦」発言の波紋
 政治家やメディアが、どこまで日本の汚名を晴らすことを真剣に考えているのか疑問を感じさせたのが、日本維新の会の橋下徹代表の「慰安婦」発言に対するメディアや政党の態度である。
 橋下代表の主張はざっくりいうと、「世界各国の軍にも慰安婦制度があった。それなのに日本だけが非難されているのはおかしい。そうなっているのは女性が強制連行されたと誤解されているからである」--というものだろう。
 橋下氏はかつて、河村たかし名古屋市長の「南京大虐殺」はなかったとの発言を批判するなど、お世辞にもしっかりした歴史観をお持ちだとは思えないが、今回の「慰安婦」発言に関する限り、非難されるべきことはない。
 むしろすべてのメディア、すべての政党が「女性の人権への侵害」という観点から批判する姿こそ、異常である。福島瑞穂、辻元清美、蓮舫らの各女性議員が記者会見を開いて、「戦争のために女性を利用することを肯定」「なぜ女性が性の道具にならなくてはいけないのか」と金切声をあげたのも笑止である。
 彼女らは、この「女性の人権」という一般論こそ、アメリカや韓国が、戦後の日本やベトナムで自分たちのやったことを無視して日本を非難する論拠にしていることをよく知っているのだ。特に、慰安婦問題を焚きつけてきた福島、辻元両氏は、日本人総がかりで吊し上げたいほどだ。
 恥を知らなくてはならないのは商行為だった「慰安婦」を強制連行、性奴隷とウソをついて日本を叩く勢力である。
 「従軍慰安婦」は強制連行されたと報じ、強制連行がないことがはっきりすると、〈強制があったかないかは問題ではない。女性の人権の問題だ〉などと開き直るいい加減な新聞が喜ぶような日本にするわけにはいかない。
 安倍首相は、「日本を取り戻す」との国民との約束を果たすべきである。
<筆者プロフィール>
 やまぎわ すみお
 1950年山口県下関市生まれ。産経新聞で首相官邸キャップ、外務省キャップ、ニューヨーク支局長などを経て退社。著書に『これでも朝日新聞を読みますか?』『それでも中国と付きあいますか?』(ワック出版)などがある。
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