「てめえ、早く会社行けよ!」「未来のあなたを見たいです。あきらめないでください」心愛さんは、言葉の力を熟知して使っている。その賢さが…

2020-03-08 | 身体・生命犯 社会

ある日突然“地獄”に…小4女児虐待死事件「加害者家族の後悔」
 2020/3/8(日) 6:31配信 現代ビジネス

事件に奪われた平穏な日々 
 2月21日、千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛さんが死亡した事件で、傷害致死罪などに問われている父親の栗原勇一郎被告の裁判員裁判が始まった。
 第2回公判では、被告の妹と母親が証言に立った。彼らは加害者家族であると同時に被害者遺族でもあり、その立ち位置と心境は複雑である。
  筆者が被告の妹(仮名・伊藤真由さん)から初めて相談を受けたのは昨年2月、事件が発覚して間もない頃だった。
  「これからどうやって生きていけばいいのか…」
  真由さんは、精神的に追い込まれていた。
  詰めかける報道陣から質問攻めにあう一方、勇一郎氏と面会することも許可されず、弁護人と連絡がついたのも数ヵ月後だった。
  事件に関して、家族として知りたいことは多々あるが、説明してくれる人は誰もいなかった。取材したいと言われても何をどう話してよいのかわからず、報道陣と世間の目から身を隠す生活が始まった。
  週刊誌の記者が乗る車に追いかけられ、警察署に逃げ込むこともあった。
  警察からは、重大事件の容疑者の家族は保護できないと言われ、話だけでも聞いてもらえるところはないかとインターネットで情報を探し、加害者家族支援の窓口に辿り着いたのである。
  病院に通うこともできず、食料品を買いに行くことさえできない。一家は、転居を余儀なくされ、平穏な生活は地獄に変わった。
  幸い、真由さんを支えてくれる人は少なくなかったが、事件の影響で周囲を騒がせてしまい、多大な迷惑をかけてしまっていると思うと、どこに行っても肩身が狭く、人前に出ることが辛かった。
  それでも、子どものためにも生活をしていかなければならず、自宅に閉じこもっているわけにはいかなかった。兄の家族にはできる限り協力してきたにもかかわらず、こんな結末を迎えるとは、あまりに理不尽だと感じた。

隠れた被害者
 「ママに抱きしめてもらったことがない……」
  心愛さんは寂しそうな顔でそう話していた。真由さんは、心愛さんをぎゅっと抱きしめると、心愛さんはいつも嬉しそうに微笑んだ。真由さんは、心愛さんにとって安心して甘えることができる存在だった。
  真由さんの子どもたちも、心愛さんと一緒にお風呂に入ったり一緒の布団で眠ったりと、まるで実の兄弟のように仲が良かった。
  「心愛ちゃん次、いつ来るの?」
  幼い息子の言葉に真由さんは胸が痛んだ。
  「心愛ちゃんは、お空に行ってしまって、もう戻って来ないんだよ……」
  子どもたちには、心愛さんが亡くなった事実は伝えている。それでも、子どもたちの間で心愛さんの話題が尽きることはない。
  真由さんの子どもたちは、兄の勇一郎氏にもよく懐いていた。しばらく顔を見せない叔父のことも気にかけている。子どもたちは、心愛さんとの思い出がたくさんある。
  生涯、心愛さんを忘れることはないだろう。事実を知る時が来れば、子どもたちが受けるショックは計り知れない。心理的な問題にとどまらず、結婚や就職にあたって、事件が子どもたちの可能性を奪うことにならないか、不安は募るばかりだ。
  事件後、大人だけではなく一緒にいる子どもたちも緊張を強いられる生活を送ってきた。転居による環境の変化や混乱する大人たちの不安を肌で感じているはずである。
  言語化が難しいため大人はSOSに気が付きにくいが、心理的支援が必要な状況にある。日本においては、これまで後回しにされてきた問題であるが、「加害者家族の子どもたち」は、第二の被害者なのだ。

家族には見えなかったこと
 「私たちにも、まだよくわからないんです……」
  逮捕直後、自宅を報道陣に取り囲まれ、繰り返し鳴るチャイムに怯えながら答えると、
  「一緒に住んでたんでしょ? わからないっていうことはないだろう!」
  記者から厳しい言葉が飛んできた。側にいたにもかかわらず、助けることができなかった……。
  加害者家族を最も苦しめている自責の念である。確かに、「虐待」に関する認識は甘かった。
  しかし、逮捕された勇一郎氏は、「兄」や「息子」として家族が見てきた彼とは別の顔をしていた。
  本件のような親密圏で起きている事件の加害者が、家庭ではいい子、職場ではいい人と評価されているケースは決して珍しいことではない。
  裁判では、家族が知らなかった心愛さんの一面も明らかになった。
  「てめえ、早く会社行けよ! てめえ、早く会社行けよ!」
  「家族に入れろよ!」
  法廷では、命令口調で父親に反抗する心愛さんの音声も流れ、家族は衝撃を受けた。
  心愛さんはおっとりした子どもで、真由さんや祖父母に対して暴言を吐くようなことはなかった。心愛さんと勇一郎氏が暮らしていたアパートは、よほど殺伐とした環境だったに違いない。
  公判では、知りたくはなかった事実が明らかとなり、家族にとって自責の念は深まるばかりだ。真由さんは、兄の為ではなく心愛さんのために、事件と向き合っていくと話している。

心愛さんのためにすべきこと
 筆者は裁判傍聴を通して強く感じることは、心愛さんがとても賢い子どもで必死に生き延びようとしていたことである。
  第5回公判では、心愛さんが通っていた小学校の担任が証言をした。遮蔽措置により傍聴席から証人の姿は見えないが、比較的若い女性のようだった。
  心愛さんが、父親から暴力を受けている事実について、担任に相談するのではなくアンケートに書いたのは、校長や教頭など力のある存在に気がついて欲しかったからではないだろうか。
  支配的な父親の下で無力な母親を見てきた心愛さんは、過酷な状況を生き抜くために権力構造を見抜くセンスを身に付けていたように感じる。
  母親に助けを求めたことが発覚すると父親の暴力が増すように、間違った相手にSOSを出せば、事態はさらに悪化することを何より怖れていたはずだ。
  勇一郎氏の両親は心愛さんを可愛がっていたが、勇一郎氏との関係も悪いわけではなかった。心愛さんもそれを理解しており、勇一郎氏との間で起きたこと全てを話すことは遠慮せざるを得なかったであろう。
  心愛さんを担当した児童福祉士と児童心理士も証言をしたが、ふたりとも比較的若い女性のようで、証言内容からも非常に頼りない印象を受けた。
  無力な母親の下で育った心愛さんにとって、過酷な状況を変えてくれるような頼りになる大人はいなかったのだ。
  心愛さんが亡くなる3ヵ月前に小学校で書いた「自分への手紙」。
  「栗原心愛さんへ 三月の終業式の日。あなたは漢字もできて、理科や社会も完璧だと思います。五年生になってもそのままのあなたでいてください。未来のあなたを見たいです。あきらめないでください。」
  「未来のあなたを見たい」「あきらめないで」と、自分を励ますような言葉から汲み取るべきは、幼い少女か抱えた孤独と大人への絶望ではないだろうか。
  被害者への同情と加害者の糾弾で事件を終わらせてはならない。これ以上、子どもが身勝手な大人の犠牲にならないようすべきことは何か、引き続き検証を続けていく。
  被告人質問で勇一郎被告は何を語るのか、加害者家族の緊張は続く――。
阿部 恭子(NPO法人World Open Heart理事長)
  最終更新:3/8(日) 6:31 現代ビジネス
 
 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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〈来栖の独白2020.3.8 Sun〉
>「てめえ、早く会社行けよ! てめえ、早く会社行けよ!」
 父親に吐いた言葉。そして、
>「栗原心愛さんへ 三月の終業式の日。あなたは漢字もできて、理科や社会も完璧だと思います。五年生になってもそのままのあなたでいてください。未来のあなたを見たいです。あきらめないでください。」
 心愛さんは、言葉が人に与える力を熟知して使っている。その賢さが勇一朗被告に虐待への力を与えたか。
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野田小4虐待死1年 心愛さん、届かなかった「自分への手紙」 2020.2.24

 
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