
2009年1月8日
パンの製造・販売を手がける社会福祉法人「豊生ら・ばるか」。休業中の障害者受け入れ事業を始める=愛知県豊橋市で
急激な景気悪化が障害者の雇用にも大きな影響を与える中、パンの製造などを手掛ける愛知県豊橋市の社会福祉法人「豊生ら・ばるか」が、休業を余儀なくされている中小企業で働く障害者を教育訓練の名目で、一時的に受け入れる事業を始める。国の中小企業緊急雇用安定助成金制度の活用を促すことで企業に解雇を思いとどまらせ、障害者の働く場所確保を手助けする考えだ。
同助成金制度は昨年12月からスタート。中小企業が収益悪化で事業を縮小せざるを得なくなった場合、従業員を休業させたり、外部委託などで教育訓練をしたり、出向させた企業に休業手当や訓練費を国が支給し、安易な解雇を踏みとどまらせる狙い。
障害者の雇用は、健常者と同様に昨年秋ごろから悪化。「ら・ばるか」にも11月から地元の障害者の親らでつくる会や、福祉団体から「障害者が真っ先に切られている」「休業手当ももらえず、自宅待機となっている人が多い」といった相談が相次いでいた。
さらに助成金制度があっても、障害者を受け入れる企業・団体は少なく、障害のある従業員を約40人抱える「ら・ばるか」が障害者を一時的に“避難”させるため受け入れ事業に乗り出すことに。国から企業に支給される訓練費を受け取り、パン製造・販売や名刺の印刷、清掃などを任せるという。期間は最大100日間で10-15人を受け入れる。
夏目浩次常務理事(31)は「解雇を思いとどまってもらい、自分たちの力で少しでも多くの障害者の生活を守りたい」と話し、中小企業からの相談を呼び掛けている。問い合わせは、ら・ばるか=電0532(31)3120=へ。
◆緊急措置認めつつ「好ましくはない」 労働局関係者
中小企業緊急雇用安定助成金の申請に必要な実施計画は、これまでに愛知労働局に約150件提出されている。
長野は昨年12月末までに125件。岐阜、三重ではそれぞれ50件と18件、福井と滋賀では数件提出されている。
実施計画を提出してから助成金を受け取るまでには2、3カ月が必要となる。
計画の提出は、大半は製造業の中小企業からで休業手当の助成を求めるケースがほとんど。職員の教育訓練や出向への負担助成は珍しい。
障害のある労働者を教育訓練名目で引き受けることには「緊急避難措置で仕方ない面もあるが、本来は障害者を業者間で“やり取り”することは好ましくない」(労働局関係者)との見方もある。