能「道成寺」大きな鐘 能面をつけ、殆ど視界のない演者が、落下する瞬間に鐘に飛び入る。

2018-12-12 | 本/演劇…など

【伝統芸能】
<お道具箱 万華鏡>能「道成寺」の鐘 竹製 布を縫い留め
 2018年11月23日日

   
   能「道成寺」の鐘。目を凝らすと鐘の骨組みが見てとれる(国立能楽堂提供)
 能「道成寺」の舞台には、人の背丈ほどもある大きな鐘が登場する。人力で運び出し、舞台の天井にヨイショと吊(つ)り上げ、なんと観客の目の前で、ズドーンと落下させる。
 ただ落とすのではない。能面をつけ、ほとんど視界のない演者が、落下する瞬間に鐘に飛び入るのだ。タネも仕掛けもないので危険この上なく、怪我(けが)の話もちらほら聞く。能はよく「動かない」と揶揄(やゆ)されるが、とんでもない冒険もするのだ。
 「道成寺」は、紀州の道成寺に伝わる「安珍・清姫伝説」を下敷きにした作品。鐘は恨みの象徴として舞台に出され、先述の「鐘入り」という大きな見せ場もある。この舞台装置の鐘。どう作られているのか、国立能楽堂の舞台裏で実物を見てきた。
 能の舞台装置は総じて簡素。ふだんはパーツにばらしておき、演能前にさっと組み上げることが多い。だが道成寺の鐘は別格。能の道具としては手の込んだ構造なので、組み上げた状態のまま保管されている。材料は竹。大きな鳥かごのような作りで、下縁には重りの鉛が仕込まれていた。
 出番が決まると、この骨組みに布をつける。布は真四角で、広げてみると意外に大きく十畳以上もあった。これを針と糸で、縫い留めていくのだが、能楽師数人で丸一日かかる。骨の折れる仕事なので、主役(シテ)がみんなにご馳走(ちそう)するという話もきいたことがある。終演後は糸を解き、布を四角に戻す。布の扱いも、儀式のようだ。
 国立能楽堂では開場三十五周年の特別企画として「道成寺」を二カ月連続で上演する。十二月二十二日は宝生流、一月二十五日は観世流。「道成寺」は人気演目で、チケット争奪戦になることも。売り出し日に行動すべし。(伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

 
  鐘に付ける緞子(どんす)の布。色は紺や緑系など流派によって異なる
 
 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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〈来栖の独白〉
ただ落とすのではない。能面をつけ、ほとんど視界のない演者が、落下する瞬間に鐘に飛び入るのだ。タネも仕掛けもないので危険この上なく、
 私が能に興味を持った初期。「道成寺」のこの「鐘」に強く惹かれたことを、いま、懐かしく思い出した。実に「能」という芸能に、私は幾度、熱い思いを抱いたことだろう。
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