診療報酬改定の答申がまとまった。4月から実施される

2010-02-13 | 政治
朝日新聞 社説2010年2月13日(土)付
診療報酬改定―医療再生へさらに大股で
 医療崩壊を食い止めることを公約にうたった鳩山政権のもと、初の診療報酬改定の答申がまとまった。4月から実施される。
 長妻昭厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が答申した改定の柱は、医師不足が深刻な救急、小児、産科に診療報酬を重点配分するというものだ。勤務医の負担軽減のため、人の配置を増やしたり、チームでの取り組みを後押ししたりする施策も拡充する。
 最大の焦点は、病院よりも高い開業医の再診料をどうするかだった。690円にそろえることになった。切り込み不足の感は否めないが、報酬全体を増やす中で開業医の再診料を引き下げたことは評価できる。
 休日・夜間などの診療時間外に「電話対応」する開業医の再診料には、新たに「地域医療貢献加算」を30円上乗せすることも盛り込まれた。
 開業医が夜間や休日も患者に対応すれば、病院の救急窓口への集中が緩和されるかも知れない。だが申告だけで加算されるようなことになれば、再診料の穴埋めに終わりかねない。実施状況の検証は欠かせない。
 医療費の明細書を無料で、原則としてすべての患者に発行するということも、前進だ。患者などが求めていたが、これまでは医師会の抵抗が強くて実現できなかった。
 明細書があれば、実際には行われていない診療や検査がないかを患者がチェックしたり、過大な請求やミスを防いだりする効果が期待できる。医療費を節約し、財源を医療再生策に振り向ける余地も生まれるはずだ。
 医療現場では今後、明細書をみた患者からの質問が増えるに違いない。医療機関はていねいに答えなくてはならない。診療と報酬について納得してもらうことは医療の基本だ。
 診療報酬の体系も、患者にわかりやすいような仕組みに一層簡素化されるよう望みたい。
 鳩山政権は中医協から日本医師会の代表を排除し、政治主導の姿勢を示していただけに、思い切った見直しが注目されていた。
 むろん、今回の診療報酬改定だけで医療崩壊と呼ばれる深刻な状況に歯止めがかかるわけではない。医師を育成する仕組みを抜本的に強化したり、地域や診療科ごとに偏っている医師の配置を是正したりするための政策努力が問われ続ける。
 病院と開業医、病院間の役割分担と連携を見直すことも、引き続き考えていかなければならない。
 医療の再生とそれに必要な費用と負担はどうあるべきか。財源を含む広い視野からの検討と対策が大切だ。
 この一歩から、さらに大股で進むことを「長妻厚労省」に期待したい。

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