京都「安楽死」事件 主治医が初の報道対応 「NHK番組観て」死への思い傾斜

2020-07-30 | Life 死と隣合わせ

京都「安楽死」事件、主治医が初の報道対応「NHK番組観て」死への思い傾斜
 2020/7/30(木) 7:10配信 京都新聞
 神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性に対する嘱託殺人容疑で医師2人が逮捕された事件で、亡くなった京都市中京区の林優里さん=当時(51)=の男性主治医が29日までに、京都新聞社の取材に応じた。栄養摂取の中止による安楽死を求めることがあったと明かす一方、「彼女は少しでも長く良い状態で生きたいと、最後まで治療法の情報を集めていた」と、生と死を見つめ続けた姿を語った。

 主治医はヘルパーやケアマネジャー、薬剤師、理学療法士ら約30人と支援チームを結成、約7年間の在宅療養を支えた。チームは林さんと話し合いを重ね、最適なケアの在り方について模索。ベッドのそばでクラシック音楽を生演奏したり、動物好きの林さんのために猫や犬を連れてきたりしたといい、「彼女が生きるためにできることは何か、歯車を合わせる作業をずっと繰り返してきた」と振り返る。
 海外生活も長く、活発な性格だったという林さんの心境を「ほとんど弱みは見せなかったけど、以前のように行動したい、どうしてできないのかという複雑な思いがあった」と察する。それでも林さん自身、治療に前向きな姿勢を見せていた。インターネットを使って最新の薬などを調べ、主治医に相談を持ち掛けることもあったといい、「生きるために色んな努力をしていた」と強調する。
 「テニスも大好きだった。錦織圭のファンで、ウィンブルドンを夜中に見て。洋服も好きで、きれいなパジャマを着ていたし。笑顔がすごくチャーミングで、ヘルパーさんたちも癒やされました」

NHKスペシャル「安楽死」機に
 一方で、「病状が進めば進むほど、死を思う時間は増えていったのだろう」と打ち明ける。胃ろうからの栄養摂取をやめて安楽死したいと訴えられたことがあったが、日本では安楽死が法的に認められないことなどを伝え、思いとどまるよう説得したという。
 中でも、スイスでの安楽死をテーマにした昨年6月放送のNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」を観て、死の選択への思いを強めていったという。「NHK報道、国によってはそれができるということ、日本人として参加できるかもしれないという思いは強くお持ちでした。難病、とりわけALS患者は生と死を思うのが日常だと思う。彼女は死についても、自分で決めたいという意思が強い人だった」と話す。

主治医が漏らす、苦渋の思いとは
 林さんが会員制交流サイト(SNS)で安楽死について情報交換していることは、知人を介して耳にしていたが、主治医は、それが嘱託殺人事件に至るとは想像もしていなかったという。
「いまだに信じられない。24時間ヘルパーがいる中でこんなことをするなんて。言葉も出ない」と述べ、苦渋の表情を浮かべた。社会には支援を受けて暮らすALS患者が多くいるにもかかわらず、事件によって患者への偏見が広がることを、主治医は強く危惧する。
 「この状態で生きていても仕方がないと社会から思われると、その人は生きる意欲をなくしてしまう。行政を含めて支援体制は十分に組むことができる。病状も知らない、実際の介助をしたこともない人が、イメージだけで語ることを、どうすれば止められるのか。どんな状況でも、『生きる選択』ができる社会にしなければいけない」
京都新聞社
最終更新:7/30(木) 8:59 京都新聞
 
 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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京都ネット安楽死事件、4要件を逸脱 ALS女性は死期迫らず、違法判断
 2020年7月24日 9:25

  
 終末期医療で医師が送検された事件

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性に対する嘱託殺人容疑で医師2人が23日、京都府警に逮捕された。投薬などによって死期を早める「積極的安楽死」は国内では認められていないが、「耐えがたい苦痛」「死期が迫っている」など四つの要件を満たせば違法性は免れるとの判例がある。しかし、会員制交流サイト(SNS)への投稿や関係者への取材によると、今回の事件はその要件を逸脱している。
 1991年、東海大病院で、こん睡状態の末期がん患者に対し、家族の要請を受けて医師が塩化カリウムを投与して死亡させる事件が起きた。この事件で横浜地裁は積極的安楽死が許される基準として、(1)患者に耐えがたい肉体的苦痛がある(2)死が避けられない末期状態(3)苦痛の除去、緩和の方法を尽くし他に代替手段がない(4)患者本人の意思表示がある―の4要件を示した。
 東海大病院事件では、この要件を満たさないとして殺人罪を認定した。ただし、この事件を除けば司法の場で4要件に照らして医師らの刑事責任が判断された事件はなく、4要件を満たしたと認められた事例もない。
 今回の事件では、殺害されたALS患者の林優里さん=当時(51)=はSNSで、何度も安楽死の願望を投稿したり、容疑者とみられる人物とやりとりしたりしていた。しかし、4要件の「本人の意思表示」はチームによる医療と丁寧な説明を前提としており、面識がなかった容疑者らへの意思表示は要件を満たさない可能性がある。
 ほかの3要件についても疑問が浮かぶ。ALSは全身が徐々に動かなくなる神経難病だが、一般的に末期がんとは病状が異なる。林さんのSNSの投稿でも、激しい体の痛みに苦しむような記述は見られない。病気による精神的苦痛は計り知れないが、4要件で問われるのはあくまで肉体的苦痛の有無だ。
 ALS患者であっても人工呼吸器を装着すれば死は避けられる。関係者への取材からは、林さんは人工呼吸器を必要とするほど病状が進んでいたとの証言も出てこない。
 京都府警はこうした林さんの状態を4要件に照らした上で、今回の事件が違法性が阻却される積極的安楽死ではなく、嘱託殺人に該当すると判断したとみられる。

 ◎上記事は[京都新聞]からの転載・引用です


彼女は安楽死を選んだ
 初回放送 総合 2019年6月2日(日)  午後9時00分~9時49分  

  

 

 安楽死が容認され海外からも希望者を受け入れている団体があるスイスで、一人の日本人女性が安楽死を行った。3年前に、体の機能が失われる神経難病と診断されたAさん。歩行や会話が困難となり、医師からは「やがて胃瘻と人工呼吸器が必要になる」と宣告される。その後、「人生の終わりは、意思を伝えられるうちに、自らの意思で決めたい」と、スイスの安楽死団体に登録した。
 安楽死に至るまでの日々、葛藤し続けたのが家族だ。自殺未遂を繰り返す本人から、「安楽死が唯一の希望の光」だと聞かされた家族は、「このままでは最も不幸な最期になる」と考え、自問自答しながら選択に寄り添わざるを得なくなった。そして、生と死を巡る対話を続け、スイスでの最期の瞬間に立ち会った。
延命治療の技術が進歩し、納得のいく最期をどう迎えるかが本人と家族に突きつけられる時代。海外での日本人の安楽死は何を問いかけるのかを見つめる。

 ◎上記事は[NHKスペシャル]からの転載・引用です


「ALS患者嘱託殺人」…過去の有罪事件と異質 東海大病院・国保京北病院・川崎協同病院・関西電力病院・射水市民病院 

  


ALS患者嘱託殺人 大久保愉一容疑者 死の対話 「訴追されないなら、手伝いたい」 ブログ「一服盛るなり(して)、楽になってもらったらいい」
異質な安楽死 ALS患者嘱託殺人…致死量の鎮静薬を投与したとして…2020/7/24 中日新聞「核心」


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