ALS発症の女性医師「絶望の先に力強い人生」 京都「安楽死」事件への思いとは 2020/7/29

2020-07-30 | Life 死と隣合わせ

ALS発症の女性医師「絶望の先に力強い人生」 京都「安楽死」事件への思いとは
  2020/7/29(水) 17:10配信 京都新聞
 全身が動かせなくなっていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の女性=当時(51)=の依頼を受け、医師2人が薬物を投与し殺害した疑いで京都府警に逮捕された嘱託殺人事件。「死にたい」との患者の言葉を社会はどう受け止めればいいのか。医師であり、ALS患者である竹田主子(きみこ)さん(50)=東京都=は「死にたいと絶望していても、その先に、力強い人生が待っていることもあります」と呼び掛ける。

■今はパソコンがあれば何でもできる。支援があれば、人間は適応できる
 竹田医師は、東京大付属病院などで20年内科医として勤務していたが、2012年にALSを発症。18年に人工呼吸器を装着。声を発する力は失ったが視線入力装置でパソコンを操作し、メールやネットを駆使する。
 「事件の被害者は、私とほぼ同じ歳で同じ頃に発症された方なので、とても残念です。昔はALSと言うと絶望的な病気だったかもしれませんが、今はパソコンがあれば何でもできる。どんな過酷な病でも、適切な支援があれば、人間は置かれた環境に適応できる驚異的な力を持っています」
 医師として、重度障害者として。今は重度訪問介護のヘルパーの介助を受けて在宅で暮らし、東京メディカルラボ代表として講演活動などに取り組んでいる竹田医師にも、病を絶望した時期があった。視線入力装置を使って、ALSの女性に対する嘱託殺人事件へのメッセージを寄せてくれた。

■ずっと泣き続け、4年かけて自分の障害を受け入れた
 今の時代、ALS患者は無限に活動的になれるのです。飛行機で海外を飛び回って活躍している人、会社を立ち上げた人もたくさんいます。障害福祉制度、医療費助成などが利用できます。適切な支援があれば、死にたいと絶望していても、その先に力強い人生が待っていることもあります。
 亡くなった京都のALS女性は、年老いた親御さんに介護してもらっていたわけでもないようですから、逮捕された医師たちと出会わなければ、悩み、葛藤しながらも、自分を受け入れ、絶望の沼から抜け出して、生き甲斐(がい)を持って輝けていたかも知れない。
 私は今、仕事もして、プライベートも充実し何事もなかったかのように生活していますが、最初は人工呼吸器を着けてまで生きたくないと思っていました。でも家族と別れるのは悲しかったし、そうは言っても私のせいで家族が今まで通り生活できないのも申し訳なくて、生きていること自体が罪な気がして、とにかくずっと泣き続けていました。
  人生の途中で突然、病気や事故で身体障害者になった中途障害者は、初め大変ショックを受けます。自分が無力で価値のないものに思えます。どんどん身体が動かなくなるのは恐怖ですし、治らないとなると、人生に絶望し死にたくなります。ただそのうち、体は不自由になったけれど、自分全体の価値が下がったわけではないと悟り、障害者である自分を受け入れられるようになります。私は自分を受容するまでに4年かかりました。

■患者さんに「死なせて」と言われた時には
 「死なせて」という言葉を、ケアする側は、真に受けない事が大事です。人間は強い時もあれば、弱い時もある。弱い方に大きくぶれないようにすることがケアの役目です。基本的に傾聴がいい。「どうしてそう思うのか」「何が一番つらいのか」。思う存分、考えを聞いて下さい。打ち明けない場合は別の機会を見つけて。
 思い切り泣けば、案外人って、前に進むものです。気休めのアドバイスは、かえって傷つけ、壁を作ることになる。解決する手だてがあるなら、全力でサポートしてあげてください。
 もし医師が「あなたは治りません。どんどん進行します」と絶望的なことだけ告知し、冷たく突き放せば、患者さんは真っ暗な底なし沼に突き落とされてしまう。でも残念ながら、そんな医師がいることも確かです。医療だけで手に負えないことも、さまざまな職種の協力を得て、社会資源を使って支援ができることを知ってほしい。
 私たちにとって人工呼吸器や胃ろうなどのいわゆる「延命治療」は、眼鏡と同じで、機能を失った運動神経を補う道具でしかありません。人工呼吸器を着けて生きてほしいと思いますし、そのような患者を許容し、支援できる社会であってほしい。
 京都府警に嘱託殺人容疑で逮捕された医師2人は、報道や2人の電子書籍共著を見る限りでは、高齢者蔑視の発言をし、医学的知識を悪用し完全犯罪を目論(もくろ)んで殺害方法を書いたり、その目的を達成するため患者の意向をでっち上げることをほのめかしたりと、もはや医師とは思えないような内容が並んでいます。他の患者さんにどんな医療処置をしていたのか気がかりです。明らかに倫理観が欠如している医師を生み出さないシステムを考えないといけないと思います。
 最終更新:京都新聞

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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