郵政法案、衆院委で可決 与党が「強行採決」
日経新聞2010/5/28 19:24
衆院総務委員会は28日、郵政民営化路線を見直す郵政改革法案を与党の賛成多数で可決した。与党は31日にも衆院を通過させ、参院に送付する方針だ。野党は「強行採決」と強く反発し、与党が衆院通過を強行すれば亀井静香郵政・金融担当相や原口一博総務相の不信任決議案の提出も視野に入れて抵抗する。終盤国会の与野党攻防が一気に緊迫する可能性が出てきた。
郵政改革法案が可決され、もみあう与野党議員(28日午後、衆院総務委)
28日の衆院総務委は自民党の後藤田正純氏の質疑中に民主党議員の動議を受けて近藤昭一委員長が採決に踏み切った。野党は後藤田氏が「選挙対策法案を強行するのか」と怒声を上げ、各議員が委員長席に詰め寄って抗議したが阻止できなかった。
与党は31日の衆院本会議で可決し、来週中に参院でも審議入りして今国会中に成立させる段取りを描いている。民主党の小沢一郎幹事長が夏の参院選での郵政票を意識して成立に強い意欲を示しており、与党は強硬姿勢を全く崩していない。
同法案の衆院での委員会審議は28日の6時間半だけ。2005年に成立した郵政民営化法では110時間を超えており、野党は「わずか数時間の議論で公聴会も参考人質疑もやらずに採決というのは言語道断だ」(山口那津男公明党代表)と猛反発している。
自民党の川崎二郎国会対策委員長は衆院総務委での採決後に記者会見し、亀井、原口両氏の不信任決議案の提出を検討する考えを示した。31日の衆院本会議での法案採決前に提出して時間を引き延ばし、同日中の郵政法案の採決を阻止する狙いだ。6月16日の会期末をにらみ与野党対立が激しくなっている。
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郵政改革法案:強行突破へ 民主・小沢氏「全力で成立を期す」
民主党の小沢一郎幹事長は24日の記者会見で、郵政改革法案について「全力で今国会中に成立を期す」と改めて明言した。6月16日の通常国会会期末まで3週間あまりで、与党は厳しい日程の中、郵政法案の審議を強行することになる。参院選を前に、鳩山内閣の支持率低下で、国民新党が持つ郵政票の重みが増しており、国民新党との合併話もくすぶっている。
小沢氏は「現時点でも郵政改革法案をやるなら、一緒になってやったほうがいいと言った」と述べ、国民新党に合併を提案したことも明らかにした。国民新党の亀井静香代表は10日の小沢氏との会談で断ったが、小沢氏は未練をみせた。
小沢氏が今国会での成立にこだわるのは、参院選前の合併の可能性を残したい思惑があるため。党幹部は「法案が成立すれば合併に反対しにくくなる。小沢氏は早く合流したいと思っている」と説明する。全国郵便局長会(全特)の支援候補は、比例代表で01年の高祖憲治氏が約48万票、04年の長谷川憲正氏が約28万票を獲得。民主党にとって固い組織票は魅力だ。
ただ、会期内成立は容易ではない。与党は当初、20日に衆院総務委員会で審議入りし、19時間程度の審議時間を確保する予定だった。しかし、まだ審議入りできていない。6月1日の衆院通過を目指すが、野党が抵抗するのは必至だ。与党は「強行しても支持率はこれ以上下がらない」(国対幹部)と、強行採決も辞さない構えだが、国会空転の可能性もある。【大場伸也】毎日新聞 2010年5月25日 東京朝刊