高浜原発めぐる「司法の暴走」独断と偏見で素人判断…樋口裁判長は4月1日付で名古屋家裁に異動したが

2015-04-20 | 政治

 産経WEST 2015.4.20 07:00更新
【関西の議論】〝反原発〟山本太郎議員も応援…高浜原発めぐる「司法の暴走」 張本人はすでに異動 飛ぶ鳥跡を〝濁す〟
 原発運転禁止の仮処分決定にわき返る群衆の中に、反原発派〝闘士〟として知られる山本太郎参院議員の姿もあった。14日、福井地裁が原子力規制委員会の審査に「合格」し、再稼働に向けた手続きが進む関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働を認めないとした仮処分決定。東京電力福島第1原発事故の経験を踏まえた新規制基準を「合理性を欠く」と堂々と批判してみせたが、絶対安全とゼロリスクを要求する非科学的な内容だけに、「決定の方が『合理性を欠く』のではないか」との非難も集まる。決定を出した樋口英明裁判長は昨年5月にも大飯原発3、4号機の運転を差し止める判決を言い渡し、反原発派や一部メディアが〝ヒーロー〟のようにもてはやす。関電側は「予想できたこと」と冷静に受け止めたが、決定文に発言を引用された専門家らは「曲解だ」「事実誤認だ」と反発している。
■仮処分は「最大の武器」
 14日午後2時すぎ。仮処分を申し立てた住民側の代理人弁護士は、福井地裁で決定文を受け取ると、ガッツポーズをしながら外に飛び出していった。雨が降りしきる中、正門前では100人を超える支援者が歓喜にわき、「司法はやっぱり生きていた!!」という垂れ幕が掲げられた。
 群衆の中には、反原発派の山本参院議員もいた。山本議員はネットメディアなどの取材に「人々の声を聞かないというスタンスで今の政権は原発政策を進めている。(原発の是非は)司法に判断してもらうしかなかった。福井地裁の良識的な判断は原発の第二幕を開けさせないことを示した」と熱弁をふるった。
 「再稼働を阻止する最大の武器を手にした」
 間もなく福井市内で記者会見した住民側弁護団の河合弘之弁護士は、決定の意義をこう表現した。
 「最大の武器」とは仮処分申請のことだ。訴訟では1、2審で判決が出ても、控訴や上告の申し立てがあれば判決確定まで法的効力は生じない。しかし、仮処分が認められた場合はただちに効力が発生し、異議や執行停止が認められない限り決定に縛られ続ける。
 仮処分でいったん運転が差し止められれば、覆らない以上は再稼働はおろか試運転すらできない。異議申し立て後の判断は別の裁判体が担当するため、「結論が出るまで数カ月から半年程度はかかる」(法曹関係者)。仮処分は確かに、原発を止めるのに最も実効性のある「武器」なのだ。
 河合弁護士は会見で「日本中の原発をすべて止め、廃炉に追い込まなければならない」とも述べ、全国の裁判所に仮処分を申請していく方針を示した。
 だが、福井地裁と同様の決定が出る可能性については懐疑的な見方もある。
 地裁前で報道陣の取材に応じた関電側の代理人も、決定には冷静だった。
 「(決定が)想定内かどうかですか。判決が前に出ていますので、そういう意味ではある程度は(想定内)というところですね」
■「万が一」を連呼
 福井地裁が原発再稼働を差し止めたからといって、司法が総じて原発に否定的だと解釈することはできない。
 平成23年3月の福島原発事故後、原発差し止めに関する判決・決定が10件出ているが、差し止めを認めた判決・決定は樋口裁判長が判断した2件しかないからだ。
 昨年12月に今回の仮処分が申請される8日前、大津地裁は高浜3、4号機と大飯3、4号機(福井県おおい町)について、住民側の同様の仮処分申請を却下した。福井地裁には民事部門が一つしかない。原発に反対する住民側は、〝実績〟のある樋口裁判長に狙いを絞り、高浜3、4号機と大飯3、4号機の再稼働阻止に向けて福井地裁に仮処分を申請したという「憶測」もある。

    樋口英明氏

 一方の樋口裁判長は今年4月1日付で名古屋家裁に異動したが、異動前の3月、「機は熟した」として高浜3、4号機のみ審理を打ち切り、近日中に決定を出すことを明言。異動後も職務代行として仮処分を言い渡し、住民側の思いに応えてみせた。
 樋口裁判長の判断が一貫しているのは、「万に一つの危険」も受け入れない姿勢だ。昨年5月の判決では「原発事故の危険性が万が一にもあれば差し止めが認められるのは当然だ」と判示。今回の決定でも新規制基準について「深刻な災害を起こす恐れが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えているべきだ」と批判した。
 こうした100%の安全性、ゼロリスクへの固執は、福島原発事故の教訓を踏まえた「世界一厳しい」とされる新規制基準をも「緩やかにすぎ、合理性を欠く」と批判することにつながった。
 司法が原発そのものの安全性にとどまらず、国の規制の枠組みにも疑義を唱えるのは、規制庁の判断を尊重してきた従来の原発訴訟の判例を大きく逸脱した「異常事態」だった。
■決定文に「曲解引用」
 ところが、新規制基準を否定する決定には、専門家から「事実誤認」を指摘する声が相次いで上がっている。
 中でも、決定文に基準地震動(想定される最大の揺れ)に関する新聞記事の発言を断りもなく引用された京都大の入倉孝次郎名誉教授(強震動地震学)は「決定は発言の一部しか引用しておらず、内容が曲解されている」と反発する。
 入倉名誉教授は、国内で起きた地震の平均像をもとにした地震動の計算方法を考案し、国の耐震指針作りにかかわったほどの人物。決定文では、記事中の「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われるが、そうではない」「平均からずれた地震はいくらでもある」との発言を取り上げた。
 樋口裁判長はこれらの発言を根拠に、「基準地震動を平均像をもとに策定することに合理性は見いだせない。基準地震動は実績のみならず理論面でも信頼性を失っている」と指摘。基準地震動を超える地震が到来した際には炉心が損傷する危険性があるとした。
 だが、仮処分をめぐって入倉名誉教授が法廷で証言したことはなく、意見書も提出していない。発言は住民側が証拠提出した記事をもとに引用されたものだ。
 入倉名誉教授は「基準地震動は平均像だけで計算しているわけではなく、原発が立地する地盤特有の影響や断層の動きの不確実性も考慮して策定される」と反論。「決定は明らかな事実誤認。発言を正確に理解してもらえなかったことが残念だ」と話した。
■「S」を「B」に…事実誤認
 決定文ではほかにも、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、九州電力川内原発に関し「基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない」とした発言も引用。決定は「発言は文字通り基準に適合しても安全性が確保されているわけではないと認めたにほかならないと解される」とし、新規制基準を不合理であると結論づけた。
 これに対し、田中委員長は決定翌日の15日の定例会見で「どの程度理解しているのか。真意を測りかねる」と批判。「原発が絶対安全ではないと言ってきたのは、(規制委が)安全神話に陥らないよう常に安全を追求する姿勢を貫くという趣旨だったが、理解してもらえず残念だ」と述べた。決定は、重大事故対策として重要性の高いSクラスの非常用発電機を、重要性が低い「Bクラス」と記述するなど、事実誤認が多くあるとした。
 樋口裁判長は、訴訟と仮処分のいずれの審理でも原発の専門家を一度も法廷に呼んだことはない。通常は5年以上はかかるとされる訴訟の判決を約1年3カ月で言い渡し、仮処分も約4カ月で決定。原発関連の司法手続きではあり得ないスピードで結論を下す樋口裁判長の訴訟指揮について、ある原子力専門家はこう苦言を呈する。
 「独断と偏見で素人判断を続ければ、司法の権威は失墜する。専門家の発言に耳を傾けない姿勢は、まさに司法の暴走だ」
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へんな判決 脱原発の政治的信条に基づいた「確信犯」的な判断 樋口英明裁判長
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