F1撤退 トヨタ「苦渋の決断」  トヨタ、中国に研究開発拠点 10年にも

2009-11-05 | 社会

トヨタ、中国に研究開発拠点 10年にも
 【北京=多部田俊輔】トヨタ自動車は2010年にも中国に研究開発拠点を新設する。大規模なテストコースを備え、車両開発を総合的に手掛ける新会社を単独出資で設立する。日本の自動車メーカーが中国に独自の研究開発拠点を設けるのは初めて。中国の自動車市場は09年に米国を抜き世界最大になる見通しだが、トヨタのシェアは08年時点で約6%にとどまっている。新拠点に300億~400億円を投資し、価格や性能、デザインで高い競争力を持つ「中国専用車」の開発を目指す。
 トヨタは同じ車種を世界で広く販売する手法を転換、地域ごとの特性に合わせて車種構成を変える戦略を打ち出している。すでに子会社のダイハツ工業と新興国市場向けの低価格車を共同開発する検討に入っている。最大市場に育った中国ではさらに一歩進め、現地の需要動向を迅速に新型車に反映させる「地域密着型」の商品戦略をとる。(日経新聞2009/11/05)
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中日新聞【社説】
F1撤退 この苦境をチャンスに
2009年11月6日
 トヨタ自動車が自動車レースF1からの撤退を表明した。ホンダに続く撤退で、日本勢が消えるのは残念だが、今後はF1で培った技術を存分に生かし、次世代の車づくりに取り組んでほしい。
 トヨタでモータースポーツを担当している山科忠専務は、記者会見で肩を震わせ、涙をにじませた。その姿は、F1撤退の悔しさを言葉以上に物語っていた。
 トヨタのF1参戦は二〇〇二年。百四十戦で十三回表彰台に上ったが、最高は二位。優勝を果たせず撤退することは、世界のトヨタには無念だろう。F1では日本の先駆者だったホンダも今季からレースに出ていない。モータースポーツファンにとっては、日本勢がいなくなる来季からのレースは寂しい光景だ。しかし、現在の経営環境を踏まえれば、両社のF1撤退は経営判断としては間違ってはいない。
 トヨタは五日、一〇年三月期連結業績予想を上方修正。営業赤字は三千五百億円と、従来予想より赤字が四千億円圧縮される見通しとなった。ホンダは営業利益予想を従来より千二百億円増の千九百億円に、一千億円の赤字を見込んでいた日産自動車は千二百億円の黒字に上方修正している。
 自動車不況は底を脱したかのようにみえる。しかし、本格回復への道はまだ遠い。国内販売はエコカー減税や買い替え促進の補助金制度に後押しされた面が大きい。欧米でも補助金制度が販売を下支えした。
 問題は、国内で補助金制度が終わる来年四月から。需要を先食いした反動で、販売が落ち込むことも予想される。米国では、新車買い替え支援策で八月の新車販売は前年を上回ったが、支援が終わった九月には再び前年割れとなった。同じことが国内でも起こる可能性は大きい。
 自動車メーカーが置かれた環境は依然として厳しい。であれば、年間五百億~六百億円の経費がかかるとされるF1からの撤退はやむを得ない。トヨタ、ホンダという世界的な企業といえども今は選択と集中のときだ。F1参戦で磨いた技術やチャレンジ精神を市販車に注いでほしい。
 モータリゼーションの扉を開いたT型フォードが誕生したのは一九〇八年。つまり車づくりは新しい世紀に入っている。電気自動車や燃料電池車は、車の概念まで変えるかもしれない。苦境のときだからこそ、各社には新世紀にふさわしい車づくりを期待したい。
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【自動車産業ニュース】
F1撤退「苦渋の決断」トヨタ、参戦8年で終止符
2009年11月5日
 トヨタ自動車は4日、自動車レースの最高峰「フォーミュラワン(F1)世界選手権」から今季限りで完全撤退すると正式に発表した。F1参戦の歴史に8年間で終止符を打ち、し烈な競争を繰り広げるエコカー開発などに経営資源を集中する。
 F1撤退は、昨年12月にホンダが決定したのに続き、唯一のタイヤ供給会社のブリヂストンも来年いっぱいでの供給停止を発表。トヨタの撤退で日本メーカーのF1参加がなくなる。
 東京都内で記者会見した豊田章男社長は「ファンのことを考えると身につまされる思い。今の経済状況を考えると、撤退せざるを得ない」と語り、苦渋の決断だったと説明。同席したモータースポーツ担当の山科忠専務は無念さに涙ぐんだ。
 他チームへのエンジン供給も取りやめ、完全にF1から退くことになるが、F1に参戦していたドイツの子会社「トヨタ モータースポーツ有限会社」は規模を縮小した上で存続。全日本GT選手権や南米で開かれるダカール・ラリーなど他レースでの技術供与は継続する。所属している日本人ドライバー2人の移籍先は今後探す。
 トヨタの自動車販売台数はエコカー減税などで回復基調にあるが、買い替え補助制度が終わる来春以降の市場動向は不透明。2010年3月期連結決算は2年連続の営業赤字の見通しで、早期の業績回復に向け、大規模な経費削減に踏み切った。
 参戦での経験は、エコカーやスポーツカーなど「環境車とわくわく感の両方を成り立たせる」(豊田社長)商品づくりに役立たせるとしている。
 トヨタは02年にF1に参戦。ホンダが昨年12月に完全撤退を発表した際も継続を表明し、コスト削減を徹底する努力を続けてきた。8年間で140レースに参加し、8位以内の入賞を87回果たした。

【自動車産業ニュース】
トヨタ、今季限りでF1撤退 本業不振、コスト重荷に
2009年11月4日
 トヨタ自動車は4日、自動車レースの最高峰、「F1」から今季限りで撤退する方針を決めた。同日午後に発表する。トヨタは2010年3月期連結決算で2年連続の営業赤字を見込んでおり、早期の業績回復のためには、多額の費用を要するF1参戦を断念せざるを得ないと判断した。
 昨シーズン限りで退いたホンダに続くトヨタの撤退で、日本メーカーのF1参戦はゼロになる。トヨタは今年7月に傘下の富士スピードウェイ(静岡県小山町)でのF1日本グランプリの開催を、来年以降は中止することも表明している。
 トヨタは02年、技術力と企業イメージを高める狙いで、F1に参戦。今年8月に主催者の国際自動車連盟(FIA)と協定を結び、12年までは参戦を続ける意向を示していた。しかし、豊田章男社長は9月、「トヨタのモータースポーツの立ち位置をどうしていくか、今悩んでいる」と述べ、方針の見直しを進めていた。今後、チームの売却先を探すとみられる。
 トヨタはF1参戦に要するコストを明らかにしていないが、年間数百億円を投じているとみられている。
 今季はコストを圧縮してレースに臨んだものの、世界的な販売不振が業績を押し下げる中、継続は困難との声が社内から上がっていた。

【自動車産業ニュース】
トヨタ、黒字化へ聖域なき削減 F1撤退で経営資源の集中図る
2009年11月4日
 トヨタ自動車がF1からの撤退方針を決めたのは、自動車市場の本格回復が不透明な中で早期の黒字化を果たすには、一層の経費削減が不可欠と判断したからだ。
 トヨタの世界販売台数は、各国の新車買い替え補助制度などに支えられ、回復基調に乗っている。5日に発表する2009年9月中間連結決算では、10年3月期の営業損益予想で赤字幅を縮小する見通しだ。
 しかし、国内の補助制度が終わる来年3月末以降は反動減が予想され、経営陣に先行きの楽観ムードはない。残業抑制や事務用品の節約など徹底したコスト低減を進める中で、9月には米国でフロアマット問題が浮上した。当局との協議次第では、新たな費用負担が生じかねない状況だ。
 F1参戦に要する費用は年間数百億円とみられている。自動車市場はエコカー開発競争がし烈化し、経営資源を本業の自動車製造部門に集中させる必要性にも迫られている。
 これらの厳しい環境下で、F1継続が「重荷になっていた」(トヨタ幹部)のも事実。撤退をきっかけに聖域なき経費削減がさらに進む可能性が高い。
 (経済部・細井卓也)


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