10月31日2時7分配信 産経新聞
奈良県田原本町の医師(48)宅放火殺人の供述調書などが漏洩(ろうえい)した事件で、奈良地検は、中等少年院送致となった長男(17)の調書などを著書で引用したジャーナリストの草薙厚子さん(43)について、立件を見送る方針を固めたもようだ。鑑定医の崎浜盛三容疑者(49)=秘密漏示容疑で逮捕=から鑑定資料を見せてもらい、出版した行為を、一連の犯罪として立件するのは困難と判断したとみられる。地検は今週末にも崎浜容疑者を起訴し、捜査を終結する見通し。
調べでは、崎浜容疑者は昨年10月、自宅などで草薙さんと面会し、調書や少年審判記録などの鑑定資料や精神鑑定結果などを見せ、業務上知り得た秘密を不当に漏らした疑い。草薙さんは今年5月、調書や審判記録などからの引用が内容の大半を占める著書「僕はパパを殺すことに決めた」を講談社から出版した。
地検はこれまで、草薙さんが崎浜容疑者に再三閲覧を要請していたことや、鑑定資料から草薙さんの指紋が多数検出されていることから、閲覧から著書出版までを一連の行為ととらえると、秘密漏示罪の対象となる役職になくても、犯行に加担していれば適用される「身分なき共犯」に当たる可能性があるなどとみて慎重に検討してきた。
しかし、崎浜容疑者が調べに対し「ああいう形で出版されるとは思わなかった」「(引用が大半を占める内容は)意外だった」などと繰り返し供述していることから、地検は、閲覧させた崎浜容疑者と出版した草薙さんの意思に、相当な乖離(かいり)があったと判断。上級庁とも協議した結果、一連の秘密漏示行為とみるのは難しく、草薙さんの立件は困難と判断したもようだ。
また、草薙さんと崎浜容疑者を仲介した京大教授や、草薙さんの閲覧時に同席したとされる講談社の関係者についても、秘密漏示罪には問えないとして、立件は見送られるとみられる。