南田洋子さん死去 増加する認知症高齢者 老老介護の対応急務
産経ニュース2009.11.3 07:57
■負担大きい同居介護…「終日」も
10月21日に76歳で死去した女優、南田洋子さんには以前から認知症の症状が見られた。介護をしていたのは夫で俳優の長門裕之さん(75)。いわゆる老老介護だ。厚生労働省によると、要介護認定において日常生活に支障をきたす認知症とみられる高齢者は平成22年には208万人に達するとみられ、老老介護への早急な対応が必要だ。(竹中文)
◆お互いの信頼感
南田さんが亡くなった夜、長門さんは記者会見で、「(南田さんの介護は)ぼくの人生をもう一度よみがえらせてくれ、人生観を変えてくれた」と、涙をこらえながら語った。
長門さんが南田さんの認知症の症状に気付いたのは6年ほど前。15年撮影の映画「理由」(大林宣彦監督、16年公開)に出演していた南田さんは台本のセリフが覚えられなった。認知症の症状だ。症状は治らず、南田さんは18年に引退を決意。長門さんの介護が始まった。
今では介護体験記を出版した長門さんだが、当時はすぐに適応できたわけではない。昨年、長門さんはインタビューの中で「(自分が)疲れているときは怒鳴ってしまった」と打ち明けた。しかし、「最近、罵倒(ばとう)することは一切なくて、すごく優しくなっている自分がいるんだよ」と語っていた。
南田さんも以前、長門さんの父、故沢村国太郎さんを介護した経験があった。長門さんは当時を「親父(おやじ)は『おしっこにいきまちゅよ』というような赤ちゃん言葉を使われるのは嫌いだった。洋子が親父の介護ができたのは親父と目線を合わせ、男として認めていたから。親父は信用したんだろう」と振り返り、介護におけるお互いの信頼関係を強調していた。
◆配偶者介護が最多
配偶者が在宅で介護をするのは容易なことではない。長門さんは住み込みのお手伝いさんの支援を受けながら、介護と仕事を両立していた。家にいるときは南田さんの入浴や洗顔を手伝い、夜は1時間半おきに、南田さんの部屋をのぞくようにしていた。
厚生労働省によると、要介護認定において日常生活に支障をきたす認知症とみられる高齢者は27年に250万人、32年には289万人に増加するとみられる=グラフ。
また、同省の19年国民生活基礎調査によると、要介護者、要支援者と同居している主な介護者は60%。配偶者が25%で最も多く、次いで子供(18%)、子供の配偶者(14%)の順。
同居の介護者を年齢別にみると、70代の要介護者、要支援者を介護しているのは70代が44%で最多。60代の要介護者、要支援者の介護者も60代が50%で最も多くなっている。介護時間も、要介護3以上は「ほとんど終日」が最多になっており、とくに要介護5では53%を占める。
国際高齢者医療研究所(兵庫県芦屋市)の所長で、認知症の専門医の岡本祐三さんは「一緒に暮らしてきた配偶者が認知症を受け入れ、理性的に介護するのは非常に難しい。長門さんのように第三者(お手伝いさん)の力を借りられれば、認知症の患者を尊重する心のゆとりが生まれるのかもしれない。国は介護制度を充実させ、すべての介護者が人間的な生活を送れるような仕組みを整えるべきだ」と話している。
産経ニュース2009.11.3 07:57
■負担大きい同居介護…「終日」も
10月21日に76歳で死去した女優、南田洋子さんには以前から認知症の症状が見られた。介護をしていたのは夫で俳優の長門裕之さん(75)。いわゆる老老介護だ。厚生労働省によると、要介護認定において日常生活に支障をきたす認知症とみられる高齢者は平成22年には208万人に達するとみられ、老老介護への早急な対応が必要だ。(竹中文)
◆お互いの信頼感
南田さんが亡くなった夜、長門さんは記者会見で、「(南田さんの介護は)ぼくの人生をもう一度よみがえらせてくれ、人生観を変えてくれた」と、涙をこらえながら語った。
長門さんが南田さんの認知症の症状に気付いたのは6年ほど前。15年撮影の映画「理由」(大林宣彦監督、16年公開)に出演していた南田さんは台本のセリフが覚えられなった。認知症の症状だ。症状は治らず、南田さんは18年に引退を決意。長門さんの介護が始まった。
今では介護体験記を出版した長門さんだが、当時はすぐに適応できたわけではない。昨年、長門さんはインタビューの中で「(自分が)疲れているときは怒鳴ってしまった」と打ち明けた。しかし、「最近、罵倒(ばとう)することは一切なくて、すごく優しくなっている自分がいるんだよ」と語っていた。
南田さんも以前、長門さんの父、故沢村国太郎さんを介護した経験があった。長門さんは当時を「親父(おやじ)は『おしっこにいきまちゅよ』というような赤ちゃん言葉を使われるのは嫌いだった。洋子が親父の介護ができたのは親父と目線を合わせ、男として認めていたから。親父は信用したんだろう」と振り返り、介護におけるお互いの信頼関係を強調していた。
◆配偶者介護が最多
配偶者が在宅で介護をするのは容易なことではない。長門さんは住み込みのお手伝いさんの支援を受けながら、介護と仕事を両立していた。家にいるときは南田さんの入浴や洗顔を手伝い、夜は1時間半おきに、南田さんの部屋をのぞくようにしていた。
厚生労働省によると、要介護認定において日常生活に支障をきたす認知症とみられる高齢者は27年に250万人、32年には289万人に増加するとみられる=グラフ。
また、同省の19年国民生活基礎調査によると、要介護者、要支援者と同居している主な介護者は60%。配偶者が25%で最も多く、次いで子供(18%)、子供の配偶者(14%)の順。
同居の介護者を年齢別にみると、70代の要介護者、要支援者を介護しているのは70代が44%で最多。60代の要介護者、要支援者の介護者も60代が50%で最も多くなっている。介護時間も、要介護3以上は「ほとんど終日」が最多になっており、とくに要介護5では53%を占める。
国際高齢者医療研究所(兵庫県芦屋市)の所長で、認知症の専門医の岡本祐三さんは「一緒に暮らしてきた配偶者が認知症を受け入れ、理性的に介護するのは非常に難しい。長門さんのように第三者(お手伝いさん)の力を借りられれば、認知症の患者を尊重する心のゆとりが生まれるのかもしれない。国は介護制度を充実させ、すべての介護者が人間的な生活を送れるような仕組みを整えるべきだ」と話している。