プーチン時代の終わりの始まり/投票の不正操作とあらゆる有力候補の出馬禁止という強力な合わせ技

2012-03-05 | 国際

ロシア大統領:プーチン時代の終わりの始まり
JBpress 2012.03.05(月) The Economist(英エコノミスト誌 2012年3月3日号)
 ウラジーミル・プーチン氏は、再びロシアの大統領になる。それでも、プーチン氏の時代は終わりつつある。
 選挙の肝は、結果が不確かであるべしという点だ。だがロシアでは、3月4日の大統領選で勝つのは現首相のウラジーミル・プーチン氏だということを誰もが知っている。
  プーチン氏に圧倒的な人気があるからではない。投票の不正操作とあらゆる有力候補の出馬禁止という強力な合わせ技により、プーチン氏への支持が水増しされるからだ。
  不確かな状況は、選挙前ではなく選挙後に訪れる。過去数カ月のロシアの政情は、プーチン氏がこの国を永久に支配できるわけではないことを示している。プーチン時代の終わりの始まりが始まったのだ。それが良い終わりになるか悪い終わりになるかは、プーチン氏にかかっている。
■プーチンの選択
  プーチン氏が権力の座に就いた12年前は、同氏の大統領就任とともにもたらされた安定と繁栄に多くのロシア国民が感謝した。ソビエト連邦崩壊後の政治的混乱と所得の減少で、ロシア国民は民主的政治に対する信頼を失い、ひたすら自分の金儲けに走った。
  世論調査でのプーチン氏の支持率は高かった。世界の目には、ロシアは国民が個人の富と国力だけに興味を抱く冷笑的な社会に映っていた。
  だが、ロシアは変わりつつある。より大きな富と発言力を持つ中流層が生まれた。この層は、ロシアを誤った政治が支配する泥棒国家と見なす。
  それが明白になったのは2011年9月のことだ。プーチン氏はこの時、ドミトリー・メドベージェフ大統領と役職を入れ替え、自ら大統領職に返り咲く計画を発表した。最終的な支配権をプーチン氏に握られているとはいえ、メドベージェフ氏は正式な大統領だ。
  不満の声が轟き始めた。12月初めの下院選では不正操作が疑われ、モスクワをはじめとする各地の街頭で抗議運動が巻き起こった。2012年2月4日にモスクワで行われた抗議集会では、零下22度の寒空の下に10万人が集まった。以来、抗議運動は続いている。抗議者たちはプーチン氏の大統領当選後も、投票翌日から活動を続ける決意を固めている。
 政権に対する不満が最も顕著に表れているのが中流層だが、高齢者層やあまり裕福ではない層、それほど国際的ではない層でもプーチン離れが進んでいる。
  有権者は腐敗にうんざりし、約束した改革がたびたび失敗に終わることに幻滅し、「プーチン氏を批判する者はすべて西側のスパイかその協力者だ」という主張に対する疑いを強めている。
  次に何が起きるかは、主にプーチン氏の選択にかかっている。同氏は変化を求める圧力に対して、抑圧を図ることもできるし、同調することもできる。KGB出身という経歴、独裁者としての実績、トーンを強めている反欧米的な発言は、どれもプーチン氏が前者の選択に傾くであろうことを示唆している。
  あれほど多くの抗議者を激怒させている腐敗も同様だ。ロシアの支配者にとって、腐敗は権力に伴うおいしい副産物ではなく、システムの中核にあるものだ。過去10年の間に、法が全く適用されない一握りの人は、かつてのロシア皇帝の最も大胆な野望をも上回るほど豊かになった。
  プーチン氏の大統領復帰は、そうした不正な利得を守ることになるだろう。一方、改革はその利得を危険にさらすことになる。
■ロシアを苦しめる幾多の問題
  だが、ロシアを静穏な状態に保つことは難しいかもしれない。プーチン氏が10年以上にわたってそれに成功してきたのは、1つには高騰する原油価格に支えられた急速な経済成長のおかげだった。原油と天然ガスは、今でもロシアの輸出の3分の2を占めている。だが、成長は著しく鈍化している。
  ロシア以外でのシェールガス資源の発見が天然ガス価格を引き下げているし、原油価格が今後もこれまでと同様のペースで上昇する可能性は低い。ロシアの最大の市場である欧州の経済は弱っている。ロシアは資本逃避からも頭脳流出からも痛手を受けている。生産年齢人口も減少している。
  一連の問題に追い打ちをかけるのが、垂れ流しの度を強めている財政だ。GDP(国内総生産)の40%という公共支出は、既に中所得国としては高い数字だ。プーチン氏は選挙前の公約で大盤振る舞いをし、最大1600億ドルもの支出を予算に加えた。その結果、GDP比の支出はさらに高まる。
 プーチン氏の掲げる公約には、軍人や教師、医師の賃金と年金の大幅な引き上げがある。2012年だけを見ても、プーチン氏は防衛や治安維持、警察に関連する支出の33%の増額を断行している。連邦予算は、2007年には1バレル=30ドル未満の原油価格でも均衡を保てていたが、近いうちに、均衡予算を組むためには1バレル=130ドル近い価格が必要になる。
  抗議運動の封じ込めも、かつてのように簡単にはいかない。抗議運動を積極的に支持するメディアに対する圧力を強めることはできるだろう。リベラルなラジオ局「モスクワのこだま」やノーバヤ・ガゼータ紙に対しては、既に圧力をかけ始めている。
  だが、プーチン氏でさえ、インターネットの検閲は難しいことを認めている。ロシアのインターネット普及率は50%に上る(モスクワでは70%を超える)。同様に、プーチン氏は、復活した中流層全体に圧力をかけて服従させるのもやはり困難であることに気づくだろう。
 ■別の道がある
  プーチン氏が抑圧の道を取らずに改革の道を選ぶのなら、まず2018年の大統領選にはもう出馬しないと約束し、新たな議会選挙の実施を提案することから始めるといい。選挙公約とも受け取れる最近の一連の新聞寄稿の中で自身が約束しているように、法の支配を確立し、経済を改革することもできる。
  地方分権化を進める第一歩として、完全に自由な地方選挙を復活させてもいい。石油会社ユコスの元社長で、現在は獄中にいるミハイル・ホドルコフスキー氏を釈放することもできる。そして、手駒であるメドベージェフ氏ではなく、抗議運動との仲裁役を買って出た前財務相のアレクセイ・クドリン氏のような、比較的リベラルな人物を首相に選ぶこともできる。
  いずれにせよ、そうした改革はプーチン氏の権力の縮小につながるだろう。だが違う角度から見れば、抑圧政策もまたプーチン氏の力を削ぐ。
  プーチン氏が政府や経済の改革を実行できなければ、そして変化を求める中流層の要求を抑え込むことができなければ、あるいは抗議運動を圧殺すべき脅威以上のものと捉えることができなければ、次の大統領任期の見通しは間違いなく険しいものになる。
  ロシアは抗議と幻滅と抑圧と景気低迷に苦しむ。ロシアの地位は低下し、その指導者の権威も落ちるだろう。
  自身の運命を見極められる賢者なら、この段階で、自らが後世に遺すものと後継者について慎重に考えを巡らせているはずだ。プーチン氏は、権力の座に就いて以来それほどの叡智を見せてはいないが、決して愚かな人物ではない。
  プーチン氏が直面している選択は重大だ。選択を誤れば、歴史がプーチン氏に微笑むことはない。
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ロシア大統領選、プーチン氏が勝利宣言 野党側は不正投票あったと指摘
AFPBB News 2012年03月05日 07:02 発信地:モスクワ/ロシア
3月5日 AFP】(一部更新、写真追加)ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相は4日夜(日本時間5日未明)、4日投開票が行われた大統領選の勝利宣言を行った。
  ドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領と共に、クレムリンのすくそばのマネージ広場(Manezh Square)でステージに上がったプーチン氏は、涙を浮かべて「われわれは開かれた、公正な戦いに勝利した」と集まった10万人以上の支援者らに述べた。「私はあなたたちに、われわれは勝つと約束した。そしてわれわれは勝った。ロシアに栄光あれ!」
  集まったプーチン氏を支持する人々は公園に入りきらず近くの道路に溢れ、ロシアの国旗を振り、「プーチン、プーチン」と声を上げていた。プーチン氏はその後、自身の選挙運動本部に移動した。
  開票途中の結果でプーチン氏の得票率は60%を超え、2位の共産党のゲンナジー・ジュガーノフ(Gennady Zyuganov)氏に大差を付けているため、プーチン氏は5月に正式に大統領に就任する公算が高まった。
  半数以上の投票所で開票が終わった時点の得票率はプーチン氏が64.39%、ジュガーノフ氏が17.13%。以下大富豪のミハイル・プロホロフ(Mikhail Prokhorov)氏が6.97%、ウラジーミル・ジリノフスキー(Vladimir Zhirinovsky)氏が6.7%、セルゲイ・ミロノフ(Sergei Mironov)元ロシア上院議長が3.7%だった。中央選挙管理委員会によると、投票率は約64%だった。
  プーチン氏は2000~2008年に大統領を2期務めた後、メドベージェフ大統領の下で4年間首相を務めた。この間の憲法改正で大統領の任期が延長されたため、今回の選挙でプーチン氏が大統領に就任すれば、さらに6年間大統領を務めることになる。
 ■不正投票あったとの指摘も
  プーチン首相は投票の透明性を確保するためにウェブカメラを設置するよう命じていたが、野党陣営は、1人の人物が不在者投票用の文書を使って複数の投票所で複数回投票するいわゆる「回転木馬投票」などの不正投票があったことをうかがわせる事例があったと主張している。
  AFPの特派員は、郊外の労働者を乗せた約100台のバスがモスクワ(Moscow)市内を走っているのを目撃した。モスクワ市内で投票させるため与党を支持する青年運動組織「ナーシ(Nashi)」が手配したものだが、野党は複数回投票させることが目的だったとしている。
  5日夜にはモスクワのプーシキン広場(Pushkin Square)で、「プーチンがいないロシア」を求める野党側が抗議行動を計画しており、少なくとも3万人の参加が見込まれている。この抗議行動は当局の許可を受けているが、警察は許可を受けた以外の集会が行われた場合には解散させると警告している。警察はロシア全土から約6300人の警察官を派遣してモスクワの警備を強化している。
  ロシア南部のコーカサス地方では、大統領選の投票後に投票所が襲撃され警察官3人が死亡し、ロシア南部の不安定な状況は依然として続いていることをあらためて示した。(c)AFP/Stuart Williams and Dmitry Zaks


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