石川県出身の遠藤「戻りたい、帰りたい気持ちはずっとありました」6日に避難所訪問へ
千葉・成田山新勝寺節分会で恒例の豆まきをする、左から高安、遠藤、御嶽海(撮影・中島郁夫)(Nikkan Sports News.)
大相撲で石川県穴水町出身の前頭遠藤(33=追手風)が、元日の能登半島地震で被災した故郷を、6日に訪れることを明かした。
3日、千葉・成田山新勝寺で行われた節分会に参加。被災地の復興を願うアナウンスが流れた後「福は内!」の掛け声に合わせ、参拝客らに向かって元気に豆をまいた。相撲界では、特に口数が少ないことで知られるが、その後の報道陣への対応では約12分、故郷への思いを熱く語った。その中で6日に日帰りで金沢市の石川県庁から始まり、最後は地元の穴水町まで、多くの施設、避難所を巡ることを明かした。
遠藤 「向こうの環境が整えば、戻りたい、帰りたい気持ちはずっとありました。(地震で整備などが追いつかず)道が道だと思うので、移動時間の方が長くなると思う。限られた時間の中ですけど、少しでも多くのところに行けたらいいかなと思います。行くことで、触れ合うことで伝わってくれれば。伝えたいことは山ほどあります。それを言葉にするのは難しいものがありますし(触れ合うことで)伝わってくるものがあったら、それが1番うれしいですね」。
寡黙な男だが、胸に秘めた故郷への思いは大きい。穴水町周辺は能登半島地震の被災地の中でも、特に被害の大きかった地域。電気や水が止まり、今も避難所で生活する人は少なくない。今回の里帰りも、前後で実家に宿泊しようにも、受け入れ態勢を整えることができず、迷惑をかけないために日帰りとなる。
幼少期から慣れ親しんだ景色が、変わり果てていることは写真や動画などで確認しているという。それでも「ある程度、覚悟はしていますけど、やっぱり、被災地に行くと現実がね…。受け入れるしかないですけど。思うところはあると思いますね」と、大きなショックを受けると想定している。だからこそ、今回の里帰りに持参していくものを問われると「現実を受け止める心構えと気持ち」と答えた。
1月の初場所は、西前頭13枚目で5勝10敗に終わった。ただ、精神的な部分を含め、今回の地震が影響したか問われると「それはないですね」と即答した。続けて「空回りしたこともない。変に硬くなったりとか、そういうのもなかった」と、言い訳せずに話した。それよりも場内アナウンスで「石川県穴水町出身」とアナウンスされると、大きな拍手や歓声が起きたことに感謝した。
遠藤 「地震、震災があって、いつもよりも余計に声援があったと思うんですよ。間違いなく。でもそれで、硬くなることもなく、意識することもなかった。それに僕自身も支えられていたと思います。うん、支えられていたな」。
土俵入りの際は、連日のように異なる化粧まわしを着けた。しかも故郷の後援会から贈呈されたものや、故郷から応援され、自身も故郷を応援するようなデザインの化粧まわしを多く着用。「そういったことしかできないですから」。遠藤は謙遜するが、多くの石川県民が、遠藤の姿に元気や勇気をもらったのは間違いない。
遠藤 「(石川県を)盛り上げるというか、復興を願うばかりです。まだ避難所とか、被災している方もいるから、復興は間違いなく大事。でも(盛り上げるなど)そういったところに先走っちゃうのもどうかなと思います。まだ震災関連で(被害を受ける人が)出てくると思うけど、そういう方が1人も出ないように願っています」。 石川県を代表する力士は、故郷に思いをはせながら思いの丈を語った。【高田文太】