【秋葉原17人殺傷 第7回公判】
産経ニュース2010.4.27 11:45
裁判長「それでは、開廷します」
裁判長「次に取り調べる証人については、遮蔽の措置が決定していますので、いまからその措置をとります」
裁判長「証人の方ですね」
証人「はい」
《男性とみられる証人の声が響いた。証人の宣誓が終わり、尋問が開始される。》
検察官「あなたは、平成20年6月8日、殺人事件の起きた現場にいましたね」
証人「はい」
《最初の証人は、事件の目撃者の男性のようだ。事件当日、ゲームソフトやパソコンソフトを購入するため、友人と2人で秋葉原に来ていたという。事件直前は、ラーメン店でラーメンを食べ、その後ゲームソフト店に向かうため、加藤被告がトラックで突っ込んだ交差点近くを、北から南へJR秋葉原駅方向に歩いていたようだ》
検察官「そのとき、何が起きましたか」
証人「後ろから、ガシャーンという音が聞こえました」
検察官「現場の見取り図を証人に示したいのですが」
《村山裁判長の許可を得た検察官が、法廷内の大型モニターに現場の見取り図を映し出した。検察官は、証人に図の位置関係が分かるか確認した後、質問を再開する》
検察官「あなたがガシャーンという音を聞いたときの場所を『あ』と書き込んでもらえますか?」
《証人が見取り図に「あ」と書き込み、丸で囲む》
《音のする方向を見ると、人が倒れていたという証人。近づこうとすると、その周辺から「キャー」という悲鳴が聞こえたという》
検察官「そのとき、何が見えましたか」
証人「犯人が何かを持って走っていました」
検察官「犯人とは?」
証人「この事件の犯人である加藤被告のことを指して言いました」
検察官「今、犯人と言いましたが、その犯人はどのような様子でしたか」
証人「右手に何か持って、『アー』という言葉を叫んで走っていきました」
《検察官は大型モニターに、加藤被告が事件当日に着ていた白のジャケットと白のズボンを映し、証人に確認させた上で、次の質問に移った》
検察官「犯人はどのような姿勢でしたか」
証人「両腕を広げていました。そのとき『ナイフを持っているぞー』という叫び声が聞こえました」
《その後、交差点の中央付近に立っていた警察官に犯人が体ごとぶつかっていった姿を見たという証人》
検察官「その警察官は、どうなりましたか」
証人「その場で前のめりに倒れました」
検察官「その後、犯人はどうしたのでしょうか」
証人「友人と逃げたので、細かいところは分かりません」
《証人はこの後、もう一度犯人を見たという。それは、警察官に追われる加藤被告の姿だった》
証人「犯人に大きな声を出している人は『待てー』と言っていました。(声を出している人は)制服を着た警察の人でした。(警察官は)犯人の(ナイフを持っている)右手をたたくような動きをしていました」
検察官「犯人はその後どのような行動をしましたか」
証人「路地の方へ入っていきました」
検察官「路地の様子は見えましたか」
証人「人が取り囲んでいて見えませんでした」
《見取り図に、さまざまな記号を書いて、状況を説明する。証人はその後、被害者を救護するため、近くで倒れていた男性のそばに近づいたという。証人は、介護福祉士の資格を持っており、そのカリキュラムで救護法を学んでいたという》
証人「駆け寄って『大丈夫ですか』と声をかけましたが、男性は口を開きませんでした。下をみると、胸のあたりから、すごいたくさんの血が出ていました」
《間もなく、医者だと名乗る人が近づいてきて、心臓マッサージを始めた。証人は隣で傷口を圧迫し、止血を試みていたという》
証人「心臓マッサージをすればするほど、出血が激しくなりました」
検察官「あなたは救護した男性がその後、どうなったか知っていますか」
証人「はい。知っています。亡くなってしまいました」
検察官「それは報道か何かで知ったのですか」
証人「はい。そうです」
検察官「どんな気持ちになりましたか」
証人「すごく自分の無力さを感じて…」
検察官「どうして、そういう気持ちになったのですか」
証人「倒れている人を助けられず…。もっと早く(犯人を)止めに入れたんじゃないかと後悔しています」
検察官「犯人に対してはどういう気持ちですか」
証人「すごく憤りを感じています。ほかにも倒れている人がたくさんいて…。自分自身もすごく精神的に辛くて、犯人に対しては、すべて明らかにしてもらって、極刑を望みます」
検察官「甲135号証添付の写真の写しを示します。地面に倒れている男性に見覚えはありますか」
証人「あります。私が救護活動した男性です」
検察官「最後に甲132号証添付の写真の写しを示します。こちらの写真には傷口が写っていますが、見覚えがありますか」
証人「あります」
検察官「検察官からの質問は以上です」
《村山浩昭裁判長が「弁護人の方どうぞ」と告げ、弁護人質問に移った。》
弁護人「食事をした後、(事件直前に)友人と北の方から(現場の交差点を)渡っていたということですね」
証人「そうです」
弁護人「北からどう渡ったんですか」
証人「歩行者天国になっていたので、中央を2人で渡っていました」
弁護人「信号は青だったんですか」
証人「そうです。最後に青と確認してから渡りました」
弁護人「交差点で気付いたことはありますか」
証人「マル2の地点に車がありました」
《証人は法廷の両サイドに設置された大型モニターに映し出された現場の見取り図を、ボールペンで指し示しながら証言する》
弁護人「どういった車ですか」
証人「ワゴン車みたいな車です」
弁護人「交差点を渡り終えたところで、衝突する音を聞いたということですね?」
証人「はい。そうです」
弁護人「(衝突する音が聞こえた後)交差点に近づいて、2人が倒れているのを見たということですね?」
証人「はい」
弁護人「その後、犯人が走ってくるのを見たということですが、横断歩道がある手前から見たのですか、それとも途中から?」
証人「途中だったと思います」
弁護人「犯人は声を上げていたということですが、どう思いましたか」
証人「最初はすごいヤケになっているのかと思いましたが、聞いているうちに殺気を帯びているように感じました」
弁護人「犯人の表情を見ましたか」
証人「見ました。目が血走っているように見えました」
弁護人「警察官の方にぶつかるまでのことですが、別の方にぶつかったりしたのを見たことはないですか」
証人「はい」
弁護人「見ていたのは(見取り図に記された)『い』の地点ですか」
証人「このときは少し後ろに下がっていました。『い』より少し後ろ…」
弁護人「周りの様子はどうでしたか」
証人「クモの子を散らすように逃げていきました」
弁護人「ご自身以外に見ていた人はいますか」
証人「はい」
弁護人「どのくらいの人が見ていましたか」
証人「そこまでは分かりません」
弁護人「先頭で見ていたのですか。前にいたと?」
証人「自分は先頭の方にいました」
弁護人「前に人はいましたか」
証人「ほとんどいなかったと思います」
《目撃者男性が退廷。2人目の目撃者は遮蔽が必要ないということで、衝立が取り払われた後、新しい若い男性が入廷する。》
村山浩昭裁判長「ウソの証言をすると、虚偽罪に問われることがあります。証言は簡潔に述べてください」
証人「分かりました」
検察官「平成20年6月8日の事件当日、なぜ秋葉原にいましたか」
証人「買い物に秋葉原に行きました」
検察官「当時、どこに向かっていましたか」
証人「上野方面から歩いて(大型パソコン店)ソフマップの角を曲がったところでした」
検察官「どの位置にいたか、地図に記してください」
《大型スクリーンに秋葉原の交差点を拡大した地図が映し出された。証人は検察官の指示に従って手元の地図に「ア」と記し、丸で囲った。》
検察官「どんなことを見聞きしましたか」
証人「音楽プレーヤーをヘッドホンで聞いていたのですが、それでもドンドンという大きな音が聞こえ、振り向くと、横をトラックが通りました。何人かが倒れていて、さっきの音は人がはねられた音だったと思いました」
検察官「トラックの位置を書いてもらえますか」
検察官「トラックの前の方は見ましたか」
証人「フロントガラスがクモの巣を張ったように筋状に割れていました。バンパーがへこんでいました」
検察官「乗車していた人を見ましたか」
証人「眼鏡をかけた男性が運転しているのをはっきり見ました」
検察官「トラックはその後どうなりましたか」
証人「しばらく進んで交番あたりで止まりました」
検察官「倒れていた人の位置を書いてもらえますか」
検察官「2人の様子はどうでしたか」
証人「1人は服がめくれ上がって本当にひどい状態で、動きは全くありませんでした。若い人だったと思います」
検察官「もう1人は?」
証人「少し離れていたのではっきりは見ませんでしたが、もう動かない状態でした」
検察官「何が起きたと思いましたか」
証人「ひどい事故が起きたと思いました」
検察官「そのとき何をしましたか」
証人「ただ、茫然(ぼうぜん)と見ていました」
検察官「その後どんなことが起きましたか」
証人「倒れた方の介護や蘇生(そせい)処置をしている方がいましたが、僕の横を白い服の男性が走り抜けていきました」
検察官「どんな男でしたか」
証人「眼鏡をかけ、白っぽい服を着ていました。トラックの運転手がひいた人の介護のために来たと思いました」
検察官「その後、男はどうしましたか」
証人「倒れた人を救護していた方にぶつかっていったように見えました」
検察官「何をしていると思いましたか」
証人「最初はよく分かりませんでした。何だろうと思いました」
《証人は、検察官にうながされて男がぶつかっていった人々の位置を地図上に記す。全部で3人だ》
検察官「それぞれどんな人でしたか」
証人「1人は警察官で、事故後の交通整理をしているようでした。1人はタクシーから降りてきた運転手でした」
検察官「ぶつかった男は何をしましたか」
証人「警察官にぶつかって何か刺している感じで、すぐに警察官が倒れました」
検察官「ぶつかるとき、男はどんな様子でしたか」
証人「走りながら手を突き出す感じ」
検察官「倒れた方はどうなりましたか」
証人「警察官はちょっと移動して倒れました。崩れるというか、しゃがんだ感じでした」
検察官「そのとき、2の場所にいた人物は何をしたと思いましたか」
証人「数秒のことでしたが、人を刺したんだと思いました」
検察官「あなたのいた位置からは、男の手元はやや見にくいですね?」
証人「はい」
検察官「男は手に何を持っていましたか」
証人「それは見てないですね。はい」
《証人は当時、交差点にある大型電器店前の歩道を歩いていたという》
検察官「そのとき、周囲はどんな様子でしたか」
証人「もう、クモの子を散らすように、みんな逃げていきました」
検察官「あなたはどんな気持ちでしたか」
証人「体が震えるというか…。もうガタガタして。呆然(ぼうぜん)としました」
検察官「何が起きてると思いましたか」
証人「最初は(交通)事故だと思ったんですが…。通り魔殺人事件が起こったんだと思いました」
《証人は恐怖をかみしめるように、「犯人がすぐ横を通っていったので、僕も刺されてもおかしくなかった」と言葉を続けた》
検察官「その後、あなたは移動しましたね?」
証人「(当時立っていた場所からは)犯人は見えませんでしたが、どこにいるか分からないので移動しました」
検察官「そこにも倒れている人がいたのですね?」
証人「はい」
検察官「何人いましたか」
証人「3人です」
検察官「倒れていたのは車道ですか」
証人「はい」
検察官「ここに倒れていたという男性の様子はどうでしたか」
証人「もう、血まみれで倒れていました。ぐったりした様子でした」
検察官「女性の様子は?」
証人「顔が蒼白(そうはく)で、ぐったりしていました」
検察官「(別の)男性は?」
証人「一緒にいた女性の方が、声をかけていました」
検察官「それを見てどう思いましたか」
証人「もう大変なことが起きたと思ったし、自分も危なかった」
《検察官が「この人たちは誰にやられたと思いましたか」と尋ねると、証人は右側に座った加藤被告に一瞬視線を移した後、「眼鏡をかけた、横を通り過ぎていった男だと思いました」と答えた》
検察官「あなたは歩道にいたから助かったのですね」
証人「はい」
検察官「事件後、あなた自身への影響はありましたか」
証人「しばらく寝ているときに目が覚めたりしました。あと、音楽プレーヤーを聴いているときにこの事件にあったため、しばらく音楽プレーヤーが聞けなくなりました」
検察官「それはなぜですか」
証人「(音楽を聴いていて)外の音が聞けないのが、すごく不安になるからです」
検察官「最後に言いたいことはありますか」
証人「はい。被告に対しては厳しい裁判結果を出していただきたいと思います」
《さらに、証人は少しためらいがちに「え…あの…」と言いながらも、加藤被告をじっと見つめ、ゆっくりと続けた》
証人「どんな裁判結果が出ても、あなたが戻ってこられる世界はありませんので。そのことを理解してください」
《女性弁護人が質問に立った》
弁護人「トラックがあなたの横を通り過ぎていったということですが、運転していた男の様子は見えましたか」
証人「見えました」
弁護人「男の表情は見えましたか」
証人「見えませんでした」
弁護人「(運転席に)眼鏡をかけた男がいたということですね」
証人「はい」
弁護人「男があなたの横を通り過ぎたということですが、あなたとの距離はどのくらいでしたか」
証人「(加藤被告がいた)車道と(自分が立っていた)歩道の間にさくがあったが、だいたい1、2メートルぐらいでしょうか」
弁護人「男の表情は見えましたか」
証人「表情は見えませんでしたが、白っぽい服装でめがねをかけていました」
弁護人「男は手元に何か持っていましたか」
証人「分かりません」
弁護人「周りはどのような様子でしたか」
証人「人だかりで。たくさん人がいました」
弁護人「男は人だかりに向かって走っていったということですか」
証人「はい」
弁護人「男は移動する間、ずっと走っていたのですか」
証人「自分の意識としてはそういうことです」
《代わって男性弁護人が質問に立った》
弁護人「あなたの検察調書によると、100人ぐらいの人だかりができていたということですが」
証人「はい」
弁護人「人だかりができていたのは、だいたいどのあたりだったか地図に書いてください」
《公判は昼休みを挟み、午後1時半から再開する》
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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◆ 秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第7回公判2010.4.27〈目撃者〉証人尋問-下-
産経ニュース2010.4.27 11:45
裁判長「それでは、開廷します」
裁判長「次に取り調べる証人については、遮蔽の措置が決定していますので、いまからその措置をとります」
裁判長「証人の方ですね」
証人「はい」
《男性とみられる証人の声が響いた。証人の宣誓が終わり、尋問が開始される。》
検察官「あなたは、平成20年6月8日、殺人事件の起きた現場にいましたね」
証人「はい」
《最初の証人は、事件の目撃者の男性のようだ。事件当日、ゲームソフトやパソコンソフトを購入するため、友人と2人で秋葉原に来ていたという。事件直前は、ラーメン店でラーメンを食べ、その後ゲームソフト店に向かうため、加藤被告がトラックで突っ込んだ交差点近くを、北から南へJR秋葉原駅方向に歩いていたようだ》
検察官「そのとき、何が起きましたか」
証人「後ろから、ガシャーンという音が聞こえました」
検察官「現場の見取り図を証人に示したいのですが」
《村山裁判長の許可を得た検察官が、法廷内の大型モニターに現場の見取り図を映し出した。検察官は、証人に図の位置関係が分かるか確認した後、質問を再開する》
検察官「あなたがガシャーンという音を聞いたときの場所を『あ』と書き込んでもらえますか?」
《証人が見取り図に「あ」と書き込み、丸で囲む》
《音のする方向を見ると、人が倒れていたという証人。近づこうとすると、その周辺から「キャー」という悲鳴が聞こえたという》
検察官「そのとき、何が見えましたか」
証人「犯人が何かを持って走っていました」
検察官「犯人とは?」
証人「この事件の犯人である加藤被告のことを指して言いました」
検察官「今、犯人と言いましたが、その犯人はどのような様子でしたか」
証人「右手に何か持って、『アー』という言葉を叫んで走っていきました」
《検察官は大型モニターに、加藤被告が事件当日に着ていた白のジャケットと白のズボンを映し、証人に確認させた上で、次の質問に移った》
検察官「犯人はどのような姿勢でしたか」
証人「両腕を広げていました。そのとき『ナイフを持っているぞー』という叫び声が聞こえました」
《その後、交差点の中央付近に立っていた警察官に犯人が体ごとぶつかっていった姿を見たという証人》
検察官「その警察官は、どうなりましたか」
証人「その場で前のめりに倒れました」
検察官「その後、犯人はどうしたのでしょうか」
証人「友人と逃げたので、細かいところは分かりません」
《証人はこの後、もう一度犯人を見たという。それは、警察官に追われる加藤被告の姿だった》
証人「犯人に大きな声を出している人は『待てー』と言っていました。(声を出している人は)制服を着た警察の人でした。(警察官は)犯人の(ナイフを持っている)右手をたたくような動きをしていました」
検察官「犯人はその後どのような行動をしましたか」
証人「路地の方へ入っていきました」
検察官「路地の様子は見えましたか」
証人「人が取り囲んでいて見えませんでした」
《見取り図に、さまざまな記号を書いて、状況を説明する。証人はその後、被害者を救護するため、近くで倒れていた男性のそばに近づいたという。証人は、介護福祉士の資格を持っており、そのカリキュラムで救護法を学んでいたという》
証人「駆け寄って『大丈夫ですか』と声をかけましたが、男性は口を開きませんでした。下をみると、胸のあたりから、すごいたくさんの血が出ていました」
《間もなく、医者だと名乗る人が近づいてきて、心臓マッサージを始めた。証人は隣で傷口を圧迫し、止血を試みていたという》
証人「心臓マッサージをすればするほど、出血が激しくなりました」
検察官「あなたは救護した男性がその後、どうなったか知っていますか」
証人「はい。知っています。亡くなってしまいました」
検察官「それは報道か何かで知ったのですか」
証人「はい。そうです」
検察官「どんな気持ちになりましたか」
証人「すごく自分の無力さを感じて…」
検察官「どうして、そういう気持ちになったのですか」
証人「倒れている人を助けられず…。もっと早く(犯人を)止めに入れたんじゃないかと後悔しています」
検察官「犯人に対してはどういう気持ちですか」
証人「すごく憤りを感じています。ほかにも倒れている人がたくさんいて…。自分自身もすごく精神的に辛くて、犯人に対しては、すべて明らかにしてもらって、極刑を望みます」
検察官「甲135号証添付の写真の写しを示します。地面に倒れている男性に見覚えはありますか」
証人「あります。私が救護活動した男性です」
検察官「最後に甲132号証添付の写真の写しを示します。こちらの写真には傷口が写っていますが、見覚えがありますか」
証人「あります」
検察官「検察官からの質問は以上です」
《村山浩昭裁判長が「弁護人の方どうぞ」と告げ、弁護人質問に移った。》
弁護人「食事をした後、(事件直前に)友人と北の方から(現場の交差点を)渡っていたということですね」
証人「そうです」
弁護人「北からどう渡ったんですか」
証人「歩行者天国になっていたので、中央を2人で渡っていました」
弁護人「信号は青だったんですか」
証人「そうです。最後に青と確認してから渡りました」
弁護人「交差点で気付いたことはありますか」
証人「マル2の地点に車がありました」
《証人は法廷の両サイドに設置された大型モニターに映し出された現場の見取り図を、ボールペンで指し示しながら証言する》
弁護人「どういった車ですか」
証人「ワゴン車みたいな車です」
弁護人「交差点を渡り終えたところで、衝突する音を聞いたということですね?」
証人「はい。そうです」
弁護人「(衝突する音が聞こえた後)交差点に近づいて、2人が倒れているのを見たということですね?」
証人「はい」
弁護人「その後、犯人が走ってくるのを見たということですが、横断歩道がある手前から見たのですか、それとも途中から?」
証人「途中だったと思います」
弁護人「犯人は声を上げていたということですが、どう思いましたか」
証人「最初はすごいヤケになっているのかと思いましたが、聞いているうちに殺気を帯びているように感じました」
弁護人「犯人の表情を見ましたか」
証人「見ました。目が血走っているように見えました」
弁護人「警察官の方にぶつかるまでのことですが、別の方にぶつかったりしたのを見たことはないですか」
証人「はい」
弁護人「見ていたのは(見取り図に記された)『い』の地点ですか」
証人「このときは少し後ろに下がっていました。『い』より少し後ろ…」
弁護人「周りの様子はどうでしたか」
証人「クモの子を散らすように逃げていきました」
弁護人「ご自身以外に見ていた人はいますか」
証人「はい」
弁護人「どのくらいの人が見ていましたか」
証人「そこまでは分かりません」
弁護人「先頭で見ていたのですか。前にいたと?」
証人「自分は先頭の方にいました」
弁護人「前に人はいましたか」
証人「ほとんどいなかったと思います」
《目撃者男性が退廷。2人目の目撃者は遮蔽が必要ないということで、衝立が取り払われた後、新しい若い男性が入廷する。》
村山浩昭裁判長「ウソの証言をすると、虚偽罪に問われることがあります。証言は簡潔に述べてください」
証人「分かりました」
検察官「平成20年6月8日の事件当日、なぜ秋葉原にいましたか」
証人「買い物に秋葉原に行きました」
検察官「当時、どこに向かっていましたか」
証人「上野方面から歩いて(大型パソコン店)ソフマップの角を曲がったところでした」
検察官「どの位置にいたか、地図に記してください」
《大型スクリーンに秋葉原の交差点を拡大した地図が映し出された。証人は検察官の指示に従って手元の地図に「ア」と記し、丸で囲った。》
検察官「どんなことを見聞きしましたか」
証人「音楽プレーヤーをヘッドホンで聞いていたのですが、それでもドンドンという大きな音が聞こえ、振り向くと、横をトラックが通りました。何人かが倒れていて、さっきの音は人がはねられた音だったと思いました」
検察官「トラックの位置を書いてもらえますか」
検察官「トラックの前の方は見ましたか」
証人「フロントガラスがクモの巣を張ったように筋状に割れていました。バンパーがへこんでいました」
検察官「乗車していた人を見ましたか」
証人「眼鏡をかけた男性が運転しているのをはっきり見ました」
検察官「トラックはその後どうなりましたか」
証人「しばらく進んで交番あたりで止まりました」
検察官「倒れていた人の位置を書いてもらえますか」
検察官「2人の様子はどうでしたか」
証人「1人は服がめくれ上がって本当にひどい状態で、動きは全くありませんでした。若い人だったと思います」
検察官「もう1人は?」
証人「少し離れていたのではっきりは見ませんでしたが、もう動かない状態でした」
検察官「何が起きたと思いましたか」
証人「ひどい事故が起きたと思いました」
検察官「そのとき何をしましたか」
証人「ただ、茫然(ぼうぜん)と見ていました」
検察官「その後どんなことが起きましたか」
証人「倒れた方の介護や蘇生(そせい)処置をしている方がいましたが、僕の横を白い服の男性が走り抜けていきました」
検察官「どんな男でしたか」
証人「眼鏡をかけ、白っぽい服を着ていました。トラックの運転手がひいた人の介護のために来たと思いました」
検察官「その後、男はどうしましたか」
証人「倒れた人を救護していた方にぶつかっていったように見えました」
検察官「何をしていると思いましたか」
証人「最初はよく分かりませんでした。何だろうと思いました」
《証人は、検察官にうながされて男がぶつかっていった人々の位置を地図上に記す。全部で3人だ》
検察官「それぞれどんな人でしたか」
証人「1人は警察官で、事故後の交通整理をしているようでした。1人はタクシーから降りてきた運転手でした」
検察官「ぶつかった男は何をしましたか」
証人「警察官にぶつかって何か刺している感じで、すぐに警察官が倒れました」
検察官「ぶつかるとき、男はどんな様子でしたか」
証人「走りながら手を突き出す感じ」
検察官「倒れた方はどうなりましたか」
証人「警察官はちょっと移動して倒れました。崩れるというか、しゃがんだ感じでした」
検察官「そのとき、2の場所にいた人物は何をしたと思いましたか」
証人「数秒のことでしたが、人を刺したんだと思いました」
検察官「あなたのいた位置からは、男の手元はやや見にくいですね?」
証人「はい」
検察官「男は手に何を持っていましたか」
証人「それは見てないですね。はい」
《証人は当時、交差点にある大型電器店前の歩道を歩いていたという》
検察官「そのとき、周囲はどんな様子でしたか」
証人「もう、クモの子を散らすように、みんな逃げていきました」
検察官「あなたはどんな気持ちでしたか」
証人「体が震えるというか…。もうガタガタして。呆然(ぼうぜん)としました」
検察官「何が起きてると思いましたか」
証人「最初は(交通)事故だと思ったんですが…。通り魔殺人事件が起こったんだと思いました」
《証人は恐怖をかみしめるように、「犯人がすぐ横を通っていったので、僕も刺されてもおかしくなかった」と言葉を続けた》
検察官「その後、あなたは移動しましたね?」
証人「(当時立っていた場所からは)犯人は見えませんでしたが、どこにいるか分からないので移動しました」
検察官「そこにも倒れている人がいたのですね?」
証人「はい」
検察官「何人いましたか」
証人「3人です」
検察官「倒れていたのは車道ですか」
証人「はい」
検察官「ここに倒れていたという男性の様子はどうでしたか」
証人「もう、血まみれで倒れていました。ぐったりした様子でした」
検察官「女性の様子は?」
証人「顔が蒼白(そうはく)で、ぐったりしていました」
検察官「(別の)男性は?」
証人「一緒にいた女性の方が、声をかけていました」
検察官「それを見てどう思いましたか」
証人「もう大変なことが起きたと思ったし、自分も危なかった」
《検察官が「この人たちは誰にやられたと思いましたか」と尋ねると、証人は右側に座った加藤被告に一瞬視線を移した後、「眼鏡をかけた、横を通り過ぎていった男だと思いました」と答えた》
検察官「あなたは歩道にいたから助かったのですね」
証人「はい」
検察官「事件後、あなた自身への影響はありましたか」
証人「しばらく寝ているときに目が覚めたりしました。あと、音楽プレーヤーを聴いているときにこの事件にあったため、しばらく音楽プレーヤーが聞けなくなりました」
検察官「それはなぜですか」
証人「(音楽を聴いていて)外の音が聞けないのが、すごく不安になるからです」
検察官「最後に言いたいことはありますか」
証人「はい。被告に対しては厳しい裁判結果を出していただきたいと思います」
《さらに、証人は少しためらいがちに「え…あの…」と言いながらも、加藤被告をじっと見つめ、ゆっくりと続けた》
証人「どんな裁判結果が出ても、あなたが戻ってこられる世界はありませんので。そのことを理解してください」
《女性弁護人が質問に立った》
弁護人「トラックがあなたの横を通り過ぎていったということですが、運転していた男の様子は見えましたか」
証人「見えました」
弁護人「男の表情は見えましたか」
証人「見えませんでした」
弁護人「(運転席に)眼鏡をかけた男がいたということですね」
証人「はい」
弁護人「男があなたの横を通り過ぎたということですが、あなたとの距離はどのくらいでしたか」
証人「(加藤被告がいた)車道と(自分が立っていた)歩道の間にさくがあったが、だいたい1、2メートルぐらいでしょうか」
弁護人「男の表情は見えましたか」
証人「表情は見えませんでしたが、白っぽい服装でめがねをかけていました」
弁護人「男は手元に何か持っていましたか」
証人「分かりません」
弁護人「周りはどのような様子でしたか」
証人「人だかりで。たくさん人がいました」
弁護人「男は人だかりに向かって走っていったということですか」
証人「はい」
弁護人「男は移動する間、ずっと走っていたのですか」
証人「自分の意識としてはそういうことです」
《代わって男性弁護人が質問に立った》
弁護人「あなたの検察調書によると、100人ぐらいの人だかりができていたということですが」
証人「はい」
弁護人「人だかりができていたのは、だいたいどのあたりだったか地図に書いてください」
《公判は昼休みを挟み、午後1時半から再開する》
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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◆ 秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第7回公判2010.4.27〈目撃者〉証人尋問-下-