ドストの、とりわけ「カラマーゾフの兄弟」は、モーツアルトの「レクイエム」、バッハの「マタイ受難曲」、アルビノーニの「アダージォ」、福永武彦の「草の花」、漱石の「こころ」等と並んで、今も私の魂を揺さぶり続ける。学生の頃、ドストの作品を私は米川正夫訳で読んだが(寝食を忘れて読んだ)、いま亀山郁夫氏のカラマーゾフ訳がベストセラーだという。昨日近くの書店へ行ったところ、なるほど、店頭に近いところに文庫本を積んでいた。亀山郁夫さんについては、私は、トルストイ文学の北御門二郎氏との対談で、好印象を得ている。
死刑判決、シベリア流刑の経験も持つドストは、人間の罪・欲望・嫉妬・愛・神の聖性などを苦悩の中に描き出す。聖書に次ぐ人類最高の文学である、と思う。当分の間、NHKで、「ドスト+亀山郁夫」の番組が放映される。嬉しい。