高速道路無料化 不公平ではないか。国民が思うのはごく自然である。

2009-09-24 | 政治
中日新聞【社説】高速道路無料化 素朴な疑問に答えよ
2009年9月23日
 民主党が政権公約で掲げた高速道路通行料金の原則無料化が、世論調査などで疑問視されている。無料にした場合の経済効果や環境への影響も実はよく分かっていない。疑問にぜひ答えてほしい。
 鳩山内閣支持率は72・0%に達したが、明示した主要政策のうち高速道路無料化は「評価しない」58・3%が、「評価する」17・2%をはるかに上回った。共同通信社の世論調査の結果である。
 無料化で物流コスト軽減、特定地域の観光客増加など経済効果は見込まれる。それでも過半数が否定的なのは、素朴な疑問が消えないからではないか。
 疑問の筆頭は、受益者負担の原則が崩されることだ。
 高速道路は、民営化した高速道路会社が既設路線の管理、新規の建設を行う。建設に借り入れた資金返済、供用中の路線の管理などは利用者の通行料金で賄う。
 返済すべき債務の残高は今も三十兆円以上ある。東名高速道路は今年八月、地震のため静岡県で路肩が崩落したが、建設時期が古く老朽化の進む区間の管理、整備の費用も相当の額となる。
 無料化すればすべてに税金が投入される。公共交通のみ利用のお年寄り、車を運転しても身近な生活道路しか走らない人も、頻繁に高速を使う運転者と同じように建設や管理に要する費用、極論すれば高速道路会社職員の給料までも負担することになる。
 不公平ではないか。国民が思うのはごく自然である。麻生政権の下では、ETC搭載の乗用車に土日祝日など「千円で高速道路乗り放題」が実施された。国費を投じ一部の運転者だけを優遇したのにも、批判は強かった。原則無料化は不公平感をさらに強める。
 「千円で乗り放題」では、遠くへ行くことを目的としたかのようなETC搭載車が走り回った。無料化すれば、高速を走る車がもっと増えるのは確実だ。一般道路から高速へ移る車、航空機、鉄道やバスなど公共交通から高速利用の車に代わる人々が見込まれる。
 渋滞が激しくなり、早く移動できる高速本来の便益が失われないか。二酸化炭素(CO2)排出量は増えないか。
 高速のサービスエリアの店舗やレストランだけが繁盛し、一般道路沿線の観光地や市街地がさびれて、特色のある地域の産業や文化が衰えることにならないか。
 まずこれらの疑問に納得できる回答をしてから、次の手順を進めるべきだろう。

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