夫婦同姓「合憲」=家族の意義と「絆」守った…夫婦、親子で姓が異なれば家族の一体感が失われていく

2015-12-17 | 社会

2015.12.17 05:05更新
【産経抄】ホームがなくなる 12月17日
 「日本にはホームの概念はありません。ハウスです」。大手食品メーカー、ハウス食品の社名は、創業者の妻の、この一言に由来するという。カレー粉を「ホームカレー」として売り出したとき、商標権問題に巻き込まれた。夫の苦境を救う、とっさの機転だったとみえる。
 ▼あえて「曲解」すれば、今の日本の状況をも言い当てている。ハウスという器だけがあって、ホームと呼ぶべき家庭生活が失われつつある。夫婦別姓が法的に認められれば、家族の崩壊は、ますます加速するだろう。
 ▼夫婦が別の姓になれば、親子でも姓が異なることになる。当然、家族というチームの一体感が失われていく。別姓のまま、代を重ねていけば、いずれ家族の歴史をたどる道も閉ざされてしまう。最高裁大法廷は昨日、民法で定めた「夫婦別姓を認めない」とする規定について、合憲との判断を下した。ひとまず、ほっとする。
 ▼日本のノーベル賞第1号の湯川秀樹博士の旧姓は、小川である。とはいえ、ほとんどの場合、女性が夫の姓を選んでいる。かつて別姓賛成論者が強調したのは、結婚後に女性が直面する、数々の不都合だった。
 ▼通称としての旧姓の使用は、もはや政治家や作家など一部の女性の「特権」ではなくなった。官公庁や一般企業で広く認められ、小紙の女性記者も権利を行使している。
 ▼シンガー・ソングライターの松任谷由実さんは、結婚20周年を迎えた平成8年、旧姓の荒井姓にもどり、コンサートを開いたことがある。もちろん、バックでキーボードを演奏していた、夫の正隆さんとの不和が理由ではない。自らの原点を見つめ直そうとしたらしい。本名と旧姓を軽やかに使い分ける。そんな女性も、増えているのではないか。
 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖
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 産経ニュース 2015.12.17 05:04更新
【主張】夫婦同姓「合憲」 家族の意義と「絆」守った
 夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定について最高裁大法廷は合憲とする初判断を示した。
 現行制度は、日本の伝統的な家族観に沿うもので社会に広く受け入れられている。夫婦が責任を共有して子供を育てていく家族の一体感につながる。それを崩す必要はない。最高裁の判断は妥当である。
 最高裁は、夫婦が同一姓にすることは社会に定着し「家族の呼称として意義がある」と認め、「強制」などとする見方を否定した。また姓を変えることの不利益は旧姓の通称使用が広まることで「緩和され得る」とした。
 夫婦同姓は、けっして男女差別を助長したり、個人の人格を傷付けたりするような制度ではないことも明確にされた。
 最高裁は「この種の制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」とも指摘した。当然、伝統や社会の状況を踏まえて慎重に行うべきだ。
 平成8年に法制審議会が、夫婦で同じにするか、旧姓をそれぞれ名乗るかの選択的夫婦別姓の導入を答申し20年近くがたっている。法改正されなかったのは、問題を放置したというより、十分な合意が得られないからだ。
 産経新聞とFNNの最近の世論調査では選択的夫婦別姓に賛成51%、反対42%と賛否が分かれ、自分は別姓を「希望しない」という人が8割と圧倒的に多い。
 単に個人の選択の幅が広がるから良いと思うのは誤りだ。仮に導入されれば、親子が別々の姓になる事態も起きる。強いられる子供にとって良いことなのか。
 旧姓が通称使用できる企業は増えているが、職場によっては認められないなど使いづらい環境もある。働きやすい職場づくりについて知恵を絞ることは重要だ。
 最高裁は女性の再婚禁止期間を6カ月とする規定は、100日を超すのは過剰な制約で違憲だとした。生まれた子の父親は誰かといった混乱を防ぎ、子供の利益を考えた規定である。法改正では、その趣旨を踏まえてもらいたい。
 家族は国や社会の基盤であることが改めて位置づけられた意義も大きい。少子高齢社会で家族が協力し合う重要性は増している。だが家庭の教育力低下が心配され、虐待など家族をめぐる事件は絶えない。責任が伴う家族のあり方について考える契機としたい
 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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2015.11.25 05:02更新
【正論】朝日新聞の夫婦別姓賛成論は的外れな論旨が多い しわ寄せは子や孫に… 秦郁彦(現代史家)
 11月4日、最高裁大法廷は「夫婦は同じ姓(氏)を名乗る」「女性は離婚後6カ月間は再婚できない」とする民法の規定が憲法違反かどうかを争っている2件の訴訟で、原告(4人の女性)と国から意見を聞く弁論を開いた。判決は12月16日に予定され、新聞は大きな話題として取り上げた。
 ここでは論点を前者、すなわち夫婦別姓問題に限定したい。どんな制度も長所と短所が絡み合っているので、新聞は賛否両論を公平に紹介し読者の判断に委ねるべきだと思うが、そうなっていない。各紙が概して別姓制の導入に好意的ななかで、特に朝日新聞はかなり露骨な賛成論を展開している。
≪今の時代にそぐわない?≫
 たとえば11月7日の社説は「家族の一体感が損なわれるなどを理由とした」反対論は、「今の時代にそぐわないのは明らかだ」とあっさり切って捨てる。そして推進派に立つ理由を次々に列挙するが、的外れの論旨が多い。
 好例は「海外でも夫婦に同姓を義務づける国はほとんどなく」のくだりだ。わが国の世論は「先進諸国の大勢」とか「グローバルな基準」のような「神託」に弱く簡単に説得されてしまう傾向がある。これもその一例だが、そもそも全国一律の戸籍制度を完備してきた国は日本以外はほとんどないから、次元の違う制度比較は空論になってしまう。
 キリスト教国の多くは、誕生も結婚も教会に登録され、横の連絡網が欠けるので家系をたどりにくく、わが国ではありえない重婚(の罪)も起きる。姓名の変更も欧米では法的規制が緩やかで、極端に言えば自由自在に近い。たとえば結合姓であるヒラリー(洗礼名)・ロダム(父の姓)・クリントン(夫の姓)は、大統領選を意識してか、洗礼名のみのヒラリーに変え、最近はヒラリー・クリントンと名乗っている。
 ミャンマーは姓を持たぬ国で、アウンサンスーチーは父と祖母と母の名の一部ずつから合成した名だというから、世界の姓名事情がいかに多彩かわかるし「女性差別」とは無関係だ。
≪問題の核心は「親子別姓」≫
 差別といえば現行民法では、夫婦は「夫又は妻の氏を称する」と規定しているが、実際には96・1%が夫の姓を選んでいるのを、朝日社説は「実質的に女性が姓の変更を強いられており、正当化できない」ときめつけているが、果たしてそうか。
 だが、この高い比率にはトリックがある。筆者の高校卒業名簿から推すと、10%前後いる養子による改姓が除外されている。また20歳代のカップルが、姓の選択をめぐって激論になったという話は聞いたことがないが、もし女性からお願いされれば受けいれる男性は意外に多いと思われる。筆者も電話などで難読の姓の字体を説明する煩にうんざりしていたので、お願いされれば応じたろう。
 それに男が年長である場合が多く、カップルの大多数は無意識に男の姓を選んでいるので、姉さん女房が増えると改姓の男女比は五分五分に近づくかもしれない。
 ところで別姓反対者の論拠は「家族の一体感を損なう」としか報じられないが、問題の核心は夫婦別姓が親子別姓を意味する点にあると筆者は考える。ここで、結婚の態様を整理してみると、(1)同姓婚(通称併用は可)(2)別姓婚(3)事実婚(4)新姓創造(結合姓を含む)(5)通称拡大(戸籍法の裏付け)-となる。現状は(1)だが、(5)の方向へ進みつつある。(4)の結合姓(一例は関・谷・三郎)は日本人の姓名になじまないのは一目瞭然で、賛同者はいないと思う。
≪理念倒れにならぬ判断を≫
 (2)を採用した際の難点は、子の姓を決めるすっきりした名案が見つからぬことだろう。2001年の森山真弓法相時代に別姓実現の一歩前で、(5)を推す高市早苗議員(現総務相)の奔走により流れたことがある。このとき法案の作成を命じられた法務省官僚は、子の姓について、あちらを立てればこちら立たずで、条文化に苦慮した。ジャンケンで決めようとか、交互に姓を分けたらとか、成人後の子に最終選択権(1回だけ)を与えたら、というような諸案が検討されたようだ。
 しかし最終案は、別姓での結婚時にカップルが協議して子たちの統一姓を決め、登録しないと結婚届を受理しないという「荒業」に落ち着いた。双方の親も加わる協議がまとまらないと事実婚(内縁)状態が続き子は自動的に母親の姓になるが、と法務省の担当者に聞くと「少数のわがまま女性はそれが狙いかも」とやけ気味の返答だったのを覚えている。
 最近の世論調査では別姓容認と反対は35%前後で拮抗しているが、容認しても実行する人は「百人に一人」(野田聖子議員)という見方もある一方、同姓から別姓に切り替える夫婦が多いと経費増が心配だという声もある。いずれにせよ、しわ寄せが子(や孫)に集まる事情に変わりはない。
 最高裁は予見される実務上の波及効果も念頭に置いて、理念倒れにならぬ判断を下してほしい。(はた いくひこ)
 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断 2015/12/16 
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