天皇(制)の政治利用--天皇は政治的な権能を一切持たない--歴史が教える反省

2009-12-14 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
天皇陛下会見「中国側が強く要望」と官房長官
 天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見が特例的に行われる問題について、宮内庁の羽毛田(はけた)信吾長官は12日、読売新聞の取材に対し、平野官房長官から会見を実現するよう要請された際、日中関係の政治的重要性のほかに、中国側が実現を強く望んでいると強調されたことを明らかにした。
 羽毛田長官は今月7日と10日、平野官房長官から直接電話を受け、「強い調子で」特例扱いでの会見の実現を要請された。この際、官房長官が強調したのは、〈1〉日中関係は政治的に重要〈2〉中国政府側が実現を強く望んでいる――の2点だったという。一方、羽毛田長官は、民主党の小沢幹事長が会見の実現を要請したとされることについては、「誰に頼まれたとか、背景説明は官房長官から一切、聞かされなかった」と語った。
 陛下と外国要人との会見は、1か月以上前に文書で申請する政府慣行があったが、中国政府からの申請は来日18日前の11月26日だった。宮内庁は慣行を理由に断り、外務省も了承したが、官房長官が「総理の指示だ」と直接、電話で特例扱いを求める異例の展開をたどった。(2009年12月13日06時29分  読売新聞)
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天皇特例会見 憂慮される安易な「政治利用」(12月13日付・読売社説)
 宮内庁の羽毛田信吾長官が、天皇の政治利用に当たる懸念がある、として深い憂慮の念を示したのも当然である。
 14日に来日する中国の習近平国家副主席が天皇陛下と会見することになった。長官の発言は、この決定過程について記者団に語ったものだ。
 羽毛田長官によると、宮内庁が外務省を通じて、中国政府からの会見要請を受け取ったのは、習副主席の来日まで20日を切った11月26日のことだ。
 陛下と外国要人の会見は、1か月前までに申請を受け付けるという政府のルールがある。このため宮内庁は「ルールに照らして応じかねる」と回答した。
 しかし、事はそれで収まらなかった。平野官房長官が、電話で2度にわたり長官に特例扱いを要請し、最後は「総理の指示だ」と強引に説き伏せたという。
 中国側が、胡錦濤国家主席の後継者と目される習副主席の来日にあたり、民主党の小沢幹事長など複数の人脈を使って、日本政府に天皇との会見を強く働きかけたことが背景にあるようだ。
 鳩山首相は「1か月ルールは知っていたが、杓(しゃく)子(し)定規なことが国際的な親善の意味で正しいことなのか」と述べて、政治利用に当たらないとの見解を示した。
 だが、一度ルールを破ると、それが当たり前になる恐れがある。今後、例えば米国や韓国、ロシアから同様の要請があった場合、首相はどう対応するのか。
 羽毛田長官によると、平野官房長官は「日中関係の重要性にかんがみ」と話したという。日中関係が大事だからこそ、きちんと象徴天皇制などについて説明し、理解を得るべきだった。それでこそ日中友好の真の促進にもなる。
 天皇陛下が外国の賓客などに会われる回数は年100回以上に上る。国の大小や政治的重要性を問わず、事前に申請があれば平等に設定されてきた。陛下も「公務はある基準に基づき公平に行われることが大切」と語られている。
 1か月ルールは、様々な公務があり、多忙な陛下の日程調整を円滑に行うためのルールだ。陛下が2003年に前立腺がんの手術をされて以降は、健康管理のためもあり、特に厳守されてきた。
 岡田外相が国会開会式での陛下のお言葉の内容について発言し批判されたのも、最近のことだ。
 天皇が時の政権に利用されたと疑念が持たれることは、厳に慎むべきなのだ。その基本を現政権はわかっていないのではないか。(2009年12月13日01時16分  読売新聞)
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天皇会見問題―悪しき先例にするな
朝日新聞社説2009/12/13Sun.
 あす来日する中国の習近平(シー・チンピン)国家副主席と天皇陛下との会見が、鳩山由紀夫首相の強い要請で、慣例に反して決められた。
 習氏は胡錦濤(フー・チンタオ)主席の最有力後継者と目されている。日中関係の将来を考えれば、この機会に会見が実現すること自体は、日中双方にとって意味のあることに違いない。
 問題は、政権の意思によって、外国の要人との会見は1カ月前までに打診するという「1カ月ルール」が破られたことだ。高齢で多忙な天皇陛下の負担を軽くするための慣例である。
 羽毛田(はけた)信吾宮内庁長官は、相手国の大小や政治的重要性によって例外を認めることは、天皇の中立・公平性に疑問を招き、天皇の政治利用につながりかねないとの懸念を表明した。
 日本国憲法は天皇を国の象徴として「国政に関する権能を有しない」と規定した。意図して政治的な目的のために利用することは認められない。
 鳩山政権は習氏来日の直前になって、官房長官自ら宮内庁長官に繰り返し電話し、会見の実現を強く求めた。天皇と内閣の微妙な関係に深く思いを致した上での判断にはみえない。国事に関する天皇の行為は内閣が決めるからといって、政権の都合で自由にしていいわけがない。
 日程の確定が遅くなったとはいえ、習氏の来日自体は、以前から両国間で調整されていた。日中関係が重要だというなら、もっと早く手を打つこともできたはずだ。
 1カ月ルールに従い、外務省はいったんは会見見送りを受け入れた。
 ここに来て首相官邸が自ら乗り出して巻き返した背景には、中国政府の働きかけを受けた民主党側の意向が働いたと見るべきだろう。小沢一郎幹事長が同党の国会議員140人余を引き連れて訪中した時期と重なったことも、そうした観測を強める結果になった。
 首相の姿勢は、このルールに込められた原則を軽んじたものと言わざるを得ない。
 首相はしゃくし定規にルールを適用するのは国際親善の目的にかなわないと語った。今後、他の国から同様の要請があった場合、どうするのだろうか。1カ月ルールを維持するのか、どんな場合に例外を認めるのか。
 鳩山政権では、岡田克也外相が国会開会式での天皇陛下の「お言葉」について、「陛下の思いが少しは入るよう工夫できないか」と発言し、波紋を広げたこともあった。
 歴史的な政権交代があった。鳩山政権にも民主党にも不慣れはあろうが、天皇の権能についての憲法の規定を軽んじてはいけない。この大原則は、政治主導だからといって、安易に扱われるべきではない。今回の件を、悪(あ)しき先例にしてはいけない。
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中日春秋
2009年12月13日
 二〇〇四年秋の園遊会で、天皇陛下が異例の発言をされた。棋士で東京都教育委員だった米長邦雄さんの「日本中の学校で、国旗を揚げ国歌を斉唱させるのが私の仕事です」との発言に答えた
▼「やはり強制になるということでないことが、望ましいですね」と陛下。米長さんがどんな反応を期待したのか分からない。自身の言葉の影響を自覚した当意即妙の回答に感心させられた
▼中国の胡錦濤国家主席の後継者と目される習近平副主席が十五日、陛下と会見することになった。官邸の強い意向で実現した会見が「天皇の政治利用に当たるのではないか」と議論になっている
▼外国要人との会見は一カ月以上前に文書で申請する慣例があり、宮内庁は断っていた。鳩山由紀夫首相の指示を受けた平野博文官房長官が強く要請した結果、特例で決まった
▼「二度とあってほしくない。憲法下の陛下の基本的なあり方にもかかわる」と宮内庁の羽毛田信吾長官は異例の強い不快感を表明したが、将来の主席の“箔(はく)付け”に協力するだけなら、政治利用といわれても仕方ない
▼明治維新後、近代的な国民国家を確立するため、新政府は天皇制を利用した。太平洋戦争に敗れて新憲法が制定された際に、天皇は政治的な権能を一切持たない国民の「象徴」になった。戦前の反省がそこにある。政治はもっと歴史に敏感であってほしい。

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