介護労働 処遇の改善が急務だ

2008-07-28 | 社会

【社説】
介護労働 処遇の改善が急務だ
中日新聞2008年7月28日

 高齢者によい介護を提供したいと意欲的な介護従事者は多い。にもかかわらず離職が多いのは、厳しい労働の割には給料が低いためだ。仕事に見合う処遇にし、安心して働けるようにすべきだ。

 介護保険制度が二〇〇〇年に始まった際、ホームヘルパーや介護福祉士などは高齢者介護を担う重要な人材としてもてはやされた。

 都道府県認可のヘルパーの養成講座には多数の受講者が参加し、国家資格の介護福祉士を目指す専門学校や大学には多くの若者が夢を抱いて入学した。

 厚生労働省の「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」がまとめた中間報告は、その様相が大きく変わったことを示している。

 介護福祉士の資格を取得しながら実際に介護・福祉の現場で働いているのは六割弱の二十七万人にすぎない。専門学校では定員割れが相次ぎ、大学の社会福祉系学部でも入学者は定員ぎりぎりだ。

 これほど人気がなくなったのは「仕事内容の割には給料が安い」「仕事への社会的評価が低い」など労働条件がよくないことが広く知られるようになったからだ。

 常用労働者の給与は、男性の場合、全産業平均で三三・七万円だが、介護関係では二一・四万円と十二万円以上も低い。女性の場合も同様に低水準である。

 他産業に比べて賃金カーブにおける上昇率が低いのも特徴だ。

 一年間の平均離職率も全産業平均が16・2%だが、介護では21・6%と高い。勤続三年未満の離職は75%に達する。離職が多い最大の要因は処遇の悪さだろう。

 介護従事者数は二〇〇〇年の五十五万人から〇六年には百十七万人に増えたが、要介護の高齢者の増加、介護期間の長期化などで、数年後には最大百六十万人が必要とされる。これだけの人数を確保・定着させるには、介護職場を魅力あるものにしなければならない。

 先の国会では、介護従事者の処遇改善法が全会一致で成立した。 この具体化の一環として来年四月の三年ぶりの介護報酬改定では思い切って介護報酬を引き上げるべきだ。そのために財源のめどをつけておくべきである。

 介護現場では、介護技術向上のための研修体制、介護能力の給与への反映も不十分である。小規模事業所ほどこの傾向が強い。こうした労働環境も改善すべきだ。

 救いは介護従事者の多くは介護業務に「働きがい」「やりがい」を感じ、長く続けたいと思っていることだ。その意欲に報いたい。


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