<少年と罪>第3部 塀の中へ再び [4]「居場所」と「支える人」の存在が、更生への一歩 (中日新聞2017/8/20 )

2017-08-21 | 少年 社会

<少年と罪>第3部 塀の中へ再び[4] 
2017/8/20 朝刊 居場所、自立への一歩
 鉄格子のある雑居部屋。また「塀の中」に戻ってきてしまった。世話になった人たちの顔が浮かぶ。「みんなを裏切った」。自身の犯した罪を心から悔いた。
 中部地方出身の男性(28)は2015年、パチンコ店などで置引きを繰り返し、懲役1年8か月の判決を受けた。初めて路上強盗をした14歳から数えて、5度目の過ち。収容先は岡崎医療刑務所(愛知県岡崎市)だった。
 同県西尾市で1999年、17歳で「ストーカー殺人事件」を起こした加害者が10年間、服役した場所でもある。出所から3年弱で「通り魔傷害事件」を起こし、逮捕後に「刑務所の教育は、意味がなかった」と語った。
 一方の男性。少年院や刑務所にいる間は「早く外に出たい」とばかり考えていたが、5度目は違った。「周りに迷惑を掛け続ける自分ではだめだと気付いた」
 服役中に初めて更生を真剣に誓った。そのきっかけを与えたのは「愛知県地域生活定着支援センター」だった。
 21歳で4度目の逮捕を経験し、実家の父から「もう面倒をみない」と突き放され、帰る場所を喪った。事情を知ったセンター職員が、刑務所まで面会に来てくれた。
 センターは、出所後に帰る先がない障害者や高齢者のために、住居探しの手助けなどをする。再犯を防ぐため、09年に始まった新しい仕組みだ。軽い知的障害がある男性は、4度目の逮捕で出所した後の12年末、センターが仲介した名古屋市内のグループホームで暮らし始めた。だが他の入所者との仲たがいなどが重なり、ホームを飛び出した。そして5度目の罪を犯した。
 「自分は見捨てられると思っていた」。予想に反して、公判にはセンターやホームの職員らが傍聴に駆けつけた。ホームの男性職員は情状証人として「引き続き面倒を見ます」とまで約束してくれた。支えてくれる人のありがたさが、初めて身に染みた。
 疎遠だった兄も服役中、面会に来た。アクリル板越しに「困ったときに使え」と、刑務所内で生活用品をそろえるために5万円を差し入れてくれた。
 男性は出所後、ホームへ帰った。再び自分のために用意されていた6畳間。「お帰り」。出迎えた職員は、みんな笑顔だった。
 いま、日中は障害者施設へ通い、中古家電の清掃作業をしている。兄は時々、外食へ誘って「二度とするなよ」と諭してくれる。目標は、一定の収入がある職に就いてホームを巣立ち、1人暮らしをすること。「やり直すチャンスをもらえた。今までと違う自分を見せたい。今度こそ」
 この男性を含む700人以上の出所者を支援してきたセンター長の岡部昭子(63)は、再犯防止のために「居場所と、見守る人の存在が必要。つまずいても、辛抱強く支えることが更生につながる」と話す。
 「以前は誰かに相談することを恥ずかしいと思っていた。今は違う。相談できる人がいる」と男性。支えてくれる人たちに、恩返しをしたい。だから二度と罪を犯さない。その自信は「ある」という。
 (敬称略)

  *上記事は中日新聞からの書き写し(=来栖) 
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<少年と罪>第3部 塀の中へ再び[3] 「三度目」もあるのか 「5%の確立で、事件を起こすかもしれない」(中日新聞2017/8/19)
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