〈来栖の独白〉
『汚染水の真実』(Newsweek日本版 2013.11.12)。原発事故対策に関わったアメリカの専門家2人が現状と課題を分析。日本政府が建設しようとしている凍土遮水壁の有効性への疑問、汚染水の厳しい放出基準が逆効果であることなどを指摘。以下に、アウトライン。*強調(太字・着色)は来栖
* システム内部の汚染水は1日当たり約400トン増加する。大型ガソリン運搬車に換算して13台分だ。
* 貯水タンクも大問題だ。現在、約1000基のタンクがパイプでつながれており、合計でオリンピックの競泳用プール120個分に相当する水でいっぱいになっている。汚染水は増え続けるから、さらに多くのタンクを建設中だ。
* 今年に入って、程度はさまざまだがタンクの漏水が何度も見つかっている。そのたびに大きく報道されているが、このようなタンクやパイプの漏れであれば、その影響はごく限られたものと考えていい。
* タンク内の汚染水のほとんどは、セシウム除去のフィルターを通して(完全な除去はできないにしても)放射能のレベルを大幅に減少させた後のものだ。
* 損傷した原子炉およびタービン建屋の周囲を凍土方式の遮水壁で囲むことも提案されている。
* こうした方法の潜在的メリットと成功の可能性を、そのコストおよび必要となる労働力を勘案して総合的に評価すると、日本政府が320億円を投じようとしている凍土遮水壁の建設には疑問を呈さざるを得ない。
* むしろ適切なのは、労働力と資源を現在進行中の重要な作業の強化・促進に集中させることではないか。
* 例えば、地下室の汚染除去を進めて最終的に密封閉鎖することだ。放射性物質の海洋流出を防ぐために海側遮水壁を設置すること、港湾内に設置したカーテン状のシルトフェンスの管理を強化すること、トレンチ内の汚染水をくみ上げて閉鎖すること、汚染されていない地下水を建屋よりも標高の高い場所でくみ出すことなどもある。
* 議論が必要なのは汚染水をためておくか海に放出するかという問題だ。
* 現状では、飲料水と同じくらい厳しい基準を満たさないと汚染水を放出することは許されない。
* 日本の飲料水のセシウムの安全基準は、1リットルにつき10ベクレル以下となっている。ところが、福島の地下水を海に放出するためには、セシウムの量が1リットル当たり1ベクレル以下でなくてはならない。それ以外の水の放出基準は、25ベクレル/リットル以下に設定されている。
* 厳しい基準があるため、地面に蓄積されたセシウムによってわずかに汚染された雨水さえ海に流すことはできない。
* 従って、地下水の放出基準を国際的な基準に合う程度まで緩和することを議論してもいいだろう。それによって少しは汚染水対策の重荷を減らせる。
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◇ 『汚染水の真実』(Newsweek 2013.11.12) こういう記事がなぜ日本の新聞や週刊誌で報じられないのか 2013-11-10 | 政治/原発
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◇ 情報汚染=国も専門家も世論の反発と不信の前で、科学的に処理すれば汚染水は安全だと説明できない 2013-11-04 | 政治/原発
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