ロス銃撃事件「三浦元社長逮捕」の行方

2008-06-04 | 社会

追い詰められたロス検察
 1981年の米ロサンゼルス銃撃事件で、米捜査当局による三浦和義元社長(60)=日本で無罪確定=逮捕の違法性がカリフォルニア州ロス郡地裁で審理されている。検察側は公判請求手続きに入れず、弁護側は元社長釈放に自信を見せ始めている。
 元社長は2月にサイパンで逮捕され、身柄はそのままだ。逮捕をめぐり、弁護側は、同じ事件で再び訴追されない「一事不再理」原則に反するとし、逮捕無効を申し立てている。罪状認否や公判が妥当かどうかを決める予備尋問にも至らない入り口段階だ。
 検察側は、重犯罪容疑者の出廷義務を盾に、「一事不再理」の議論に入らず審理を突破するシナリオを描いていたが、根底から崩れている。
 「三浦氏の(サイパンからの)移送は意味がない」。ロス郡地裁のバンシックレン裁判官は5月9日の審理で明言し、元社長の身柄移送は棚上げされた。さらに、裁判官は日本の公判記録を取り寄せるように求め、逮捕の違法性について実質審理入りする姿勢を明らかにした。
 弁護側請求の「門前払い」を望んだ検察側の思惑はくじかれた。「一事不再理」が正面から問われると、検察側に分が悪いとの見方が強い。
 逮捕当初、ロス郡検察局は「一事不再理」原則について、外国の判決を対象から外した2004年の州法改正を指摘し、「日本の判決は影響しない」と説明した。
 ただちに弁護側から、元社長の事件は州法改正前で、日本の判決は考慮されるべきだと反論が出た。新しい法や改正法は、過去にさかのぼって適用されないとする「遡及処罰の禁止」という考え方があるからだ。
 同州で4月、母国メキシコで殺人の有罪判決を受けた男について、同州での訴追を違法とする司法判断が出た。この事件も州法改正前で、元社長のケースと類似している。
 このためか、元社長の審理で、検察側は04年の州法改正に触れず、「法的議論は罪状認否の後で」として「一事不再理」の議論を避けている。
 次回の6月16日までに、日本の公判資料が裁判官に出されることになっている。米国の逮捕状を見る限り、容疑は日本の公判で審理された事実と違いはない。
 仮に逮捕状取消の決定が出た場合、注目されるのは元社長の身柄。検察側は「不服なら控訴する」としているが、サイパンの裁判所はカリフォルニア州での司法手続きに縛られず、拘置続行か釈放か、独自の判断ができる。
 これまでのところ、捜査当局がなぜ、事件発生から4半世紀が過ぎて身柄拘束に踏み切ったのか、全く見えてこない。逮捕当初にうわさされた「新証拠」はあったのか。検察は追い詰められている。阿部伸哉(ニューヨーク支局)
中日新聞夕刊2008/06/03
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米への捜査協力拒否求め提訴=「憲法違反」と三浦元社長-東京地裁
(時事通信社 - 05月30日 20:01)
 ロス疑惑銃撃事件でサイパン島に拘置されている元会社社長三浦和義容疑者(60)=日本で無罪確定=が30日、国を相手取り、米国側からの捜査共助要請に応じないよう求める訴訟を東京地裁に起こした。
 訴状によると、三浦元社長は銃撃事件などについて日本で判決が確定しており、国際捜査共助法に基づく要請に応じる場合、同じ事件で二度裁けない「一事不再理」を定めた憲法に反するなどと主張している。
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