尖閣で「中台連携」を否定 経済を軸に対中関係を改善させてきた馬英九政権、事実上「政治対話の拒否宣言」

2013-03-04 | 国際/中国/アジア

【国際情勢分析 吉村剛史の目】尖閣で「中台連携」を否定した台湾声明
zakzak2013.03.03
 沖縄県・尖閣(せんかく)諸島に対し、中国同様に主権を主張してきた台湾が2月8日、中国が平和的解決に向けた構想を示さないことや法的見解の相違などを列挙し、尖閣での中台連携を否定する声明を発表した。従来この問題で「大陸(中国)と連携しない」としてきた台湾だが、具体的な理由に踏み込んだのは初めて。尖閣周辺海域の扱いが焦点となる日台漁業協議への中国の干渉や、中国の軍備増強による地域の安定への影響などにも批判的に言及しており、2008年以降、経済を軸に対中関係を改善させてきた馬(ば)英(えい)九(きゅう)政権にとって、事実上「政治対話の拒否宣言」ともいえる内容だった。
 ■解決姿勢に相違
 声明は台湾の外交部(外務省に相当)が春節(旧正月)休暇直前の2月8日、ホームページ上に「釣(ちょう)魚(ぎょ)台(だい)(尖閣の台湾での呼称)列島の主権声明」「中国大陸と合作しない立場」と題して公表した。
 内容は(1)法的見解の相違(2)争議解決姿勢の相違(3)「中華民国」の統治権への中国の不承認(4)中国の干渉が及ぼす日台漁業協議への影響(5)地域の安定や国際社会の関心に必要な配慮-の5項目で構成されている。
 このうち(2)では、馬英九総統(62)が昨年8月、「争議の棚上げ」「資源の共同開発」などを盛り込んで提唱した「東アジア平和イニシアチブ」を中国側が無視し、中国が尖閣に関して国際司法裁判所に委ねることに反対していること、また中国が過去にインド、旧ソ連、ベトナムなど周辺国と領土紛争を繰り返し、尖閣でも平和的解決の具体的構想を示していないことなどを列挙した。
 (5)では中国が近年、海軍力や空軍力の増強に力を入れ、中国が太平洋進出の戦略上定めた台湾も含む「第1列島線」の突破をもくろんでいることを指摘。台湾は従来、日米と政治、経済、安全保障上の緊密な関係があり、軽々に中台連携すれば、地域の安定に影響する、との理由をあげた。
 ■「中華民国の統治権」
 特に(1)と(3)は、台湾の「中華民国」としての存在を、中国が承認していないという点に立ち、法的理由から連携を否定している。
 馬政権は「1つの中国」の建前で、中台間の自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)を結ぶなど対中融和を進めてきたが、台湾においては終始「その中国とは、中華民国のこと」としてきた。
 この「中国」の解釈を各自で行うとする台湾の姿勢は、「中華民国は1949年に滅びた」とする立場の中国としては本来容認できない考えだが、関係改善の中、事実上黙認してきた。
 しかし、尖閣での中国側の共闘の働きかけに対し、今回の声明で台湾は日台断交前の「日華平和条約」(52年)を尖閣への主権主張の根拠として示し、「中華民国の統治権」を承認していない中国とは交渉はできず、尖閣での連携も「困難」と説明した。
 これらは中台間の戦争状態に正式に終止符を打つ「平和協定」締結を含め、中国が「平和統一」を視野に馬政権に期待を示してきた政治対話に関し、馬総統からの事実上の拒否のサインともいえそうだ。
 ■日台漁業協議再開視野か
 ただ、声明はホームページの片隅に掲載されたものの、記者発表などはなく、春節休暇明けの18日、馬総統が与党・中国国民党内座談会で中国で働く台湾人ビジネスマンらに、これを3項目に要約して中台連携の不可能を説明。ようやく内外メディアが事実報道した。
 中国とは経済面で関係を深めつつも、日米との政治、経済、軍事上の関係も損ねない、とする方針を、中国側を刺激しないよう、日米にこっそり示したかっこうで、その背景としては(4)が浮上する。
 尖閣周辺海域の扱いが注目される日台漁業協議は、操業の線引きなどで暗礁に乗り上げ、2009年以降、中断していた。しかし、東日本大震災以降の日台関係の緊密化などを受け、昨夏、再開機運が高まったが、台湾の抗議船、巡視船の領海侵入や接続水域進入で進展はたびたび足踏みしている。
 特に、対外的に「中台連携」と映った台湾巡視船団の放水などでは、米国からも馬政権に「強い懸念が示された」(日台交渉筋)とされ、日本側交渉筋には、声明は「日台漁業協議再開と協定に向けた中国への根回しのひとつ」との見方も浮上している。(よしむら・たけし 台北支局)
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尖閣問題で日米連携、米政府が台湾に自制要求
産経新聞2013.3.3 01:36
 中国と台湾が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島をめぐる日本政府の働きかけの結果、米政府が台湾側に尖閣諸島周辺海域の公船航行について自制を求めていたことが2日、分かった。台湾公船は1月27日以降、尖閣周辺の日本の領海の外側にある接続水域を航行しておらず、馬英九総統が尖閣をめぐり中国と共闘しない方針も表明した。日米の連携で中台の共闘を阻止した形だ。複数の政府関係者が明らかにした。
 台湾公船が1月24日、26日に相次ぎ尖閣周辺の接続水域を航行したのを受け、日本政府は対台湾窓口機関・交流協会を通じて台湾側に抗議するとともに、米政府に対して台湾側に自制を求めるよう働きかけた。米政府は「台湾の戦略的利益を考えるべきだ」として、台湾に尖閣周辺海域での行動自粛を求めたという。
 1月24日に台湾の海岸巡防署(海上保安庁)の巡視船4隻と台湾の活動家を乗せた遊漁船1隻が尖閣周辺の接続水域に入った際には、台湾側が日米両政府に対し「抗議船の出航は合法的で阻む理由がない。接続水域に入る前に折り返すよう誘導する」と事前通告していた。しかし台湾船は接続水域を航行。中国公船が接続水域内で台湾船に近づき、尖閣をめぐる中台の共闘を印象付けた。米政府はこの経緯を問題視し、台湾側に自制を求めたという。
 台湾側は1月27日以降、尖閣周辺海域での公船航行を自粛し、同月24日に接続水域に入った抗議船に3カ月の出港停止処分を下した。2月8日には台湾外交部(外務省)がホームページ上で尖閣について「中国大陸と合作(連携)しない立場」と題する声明を発表した。馬総統も同月18日の会合で中国との連携を拒否する理由を説明した。
 日本政府は台湾側の動きについて「馬氏の発言や外交部の声明は積極的に評価できる」(外務省幹部)と歓迎。台湾が求める尖閣周辺海域での日台漁業協定について、安倍晋三首相は関係省庁に早期合意を目指すよう指示した。日台双方は週明けにも漁業協議再開に向けた予備協議を行う方向で調整している。
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