日本郵政新体制 許されぬ政官主導の改悪

2009-10-30 | 政治
【主張】日本郵政新体制 許されぬ政官主導の改悪
産経ニュース2009.10.30 03:13
 日本郵政の新社長に元大蔵事務次官の斎藤次郎氏が就任し、新体制がスタートした。斎藤氏は「郵便局網を活用し、公共性を重視した事業展開をしたい」と語り、行政との連携を強調した。
 しかし経営戦略は、はっきりせず、会社の中核を占めるのは官僚OBで、新体制の本質は政官主導による巨大「官業」の復活と映る。反民営化による郵政「改悪」を許してはなるまい。
 そもそも新役員の選任からしてルール無視だった。日本郵政は民営化に伴い、委員会設置会社の形態をとっており、社外取締役で構成される指名委員会が取締役候補を指名する決まりである。だが、今回は亀井静香郵政改革担当相と斎藤氏が指名委員会を経ず、株主総会を主導して決定した。
 最大の問題は、計300兆円もの資産残高がある郵貯と簡保の金融事業だ。「民業を圧迫している巨大な官制金融を見直す」というのが郵政改革の原点である。とすれば、金融事業を縮小していくのが本筋だろう。民営化路線を歩んだ西川善文前社長も金融事業拡大に走った点で原点を見失った。だが地域金融機関との協調融資の検討などを示す斎藤氏も、事業縮小は念頭にないようだ。
 斎藤氏の案自体にも問題がある。郵貯には融資のノウハウがなく、国債での運用が8割を占める。しかも地銀や信金などの地方金融機関の数はすでに過剰で、資金需要はそれほど多くない。放漫経営で経営難に陥っている企業にまで無理して融資する事態になれば、不良債権を抱えることになる。地方金融機関も郵貯と一緒に融資することが事実上の政府保証と考えれば、同じ結果を招く。
 斎藤氏が描く郵便局網活用の目玉は、年金や介護などを視野に入れた「ワンストップサービス」だという。年金手続きなどを代行し、地方自治体から手数料を取るモデルである。そうした手数料事業の拡大は、有力なビジネスのありかたではあろう。
 だが経営戦略の根幹である4分社化について、転換の方向性が示されていない。政府内では日本郵政と郵便事業会社、郵便局会社を統合し、傘下に郵貯と簡保をぶら下げる案などがあるが、「どんぶり勘定」となる点で経営の効率化は望めない。公益重視という聞こえがいい言葉の裏で、経営赤字から国民負担が増すという懸念が強まるばかりである。

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