「秘密保全法」考 中日新聞/週プレニュース/日刊サイゾー/讀賣新聞/産経新聞/後藤昌弘

2013-09-13 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

秘密保護法案 軍事国家への入り口だ
 中日新聞[社説]2013年9月13日
 政府が進める秘密保護法案は、国が恣意(しい)的に情報統制を敷く恐れがある。「知る権利」と真正面から衝突する。軍事国家への入り口になってしまう。
 自由や人権などよりも、国の安全保障が最優先されるという思想が根底にあるのだろう。政府が公表した秘密保護法案の概要を見ると、そんな印象を強く持つ。
 かつて検討された法制と異なるのは、特段の秘匿が必要な情報である「特定秘密」の事項だ。(1)防衛(2)外交-は同じだが、「公共の安全および秩序の維持」の項目を(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動の防止-と改めた。
*情報隠しが横行する
 公共の安全や秩序維持の文言は、社会のあらゆる活動に投網をかけると強く批判されたため、今回は変形させたのだろう。
 それでも問題点は山積だ。まず、特定秘密の指定範囲である。行政機関の「長」が別表で指定するが、中身があまりにも茫漠(ぼうばく)としている。防衛については十項目あり、「自衛隊の運用」が最初に規定されている。「運用」の言葉だけでは、どんな解釈も可能だろう。防衛相は恣意的に特定秘密のワッペンを貼り、さまざまな情報を国民の目から覆い隠せる。
 現行法でも昨年末時点で、防衛秘密の指定事項は二百三十四件にものぼる。秘密文書も膨大となり、一昨年末では約八万三千点が隔離された状態だ。
 外交分野でも同じだ。例えば「安全保障に関する外国政府との交渉」と別表に漠然と書かれているため、外相はいかなる運用もできよう。違法な情報隠しすら行われるかもしれない。
 ある情報が特定秘密に本当にあたるかどうか、国会でも裁判所でもチェックを受けないからだ。形式的な秘密ではなく、実質的な秘密でなければならないが、その判断が行政の「長」に任されるのは、極めて危うい。
*「知る権利」への脅威だ
 安全脅威やテロの分野も解釈次第で、市民レベルの活動まで射程に入る恐れがある。
 言い換えれば、国民には重要でない情報しか与えられないのではないか。憲法は国民主権の原理を持つ。国政について、国民が目隠しされれば、主権者として判断ができない。秘密保護法案は、この原理に違背するといえよう。
 憲法には思想・良心の自由、表現の自由などの自由権もある。政府は「国民の知る権利や取材の自由などを十分に尊重する」と説明しているものの、条文に適切に生かされるとは思えない。
 特定秘密を取得する行為について、「未遂、共謀、教唆、扇動」の処罰規定があるからだ。あいまいな定めは、取材活動への脅威になる。容疑がかかるだけでも、記者やフリーランス、市民活動家らに家宅捜索が入り、パソコンや文書などが押収される恐れが生じる。少なくとも、情報へのアクセスは大きく圧迫される。
 「取材の自由」はむろん、「知る権利」にとって、壁のような存在になるのは間違いない。政府は「拡張解釈し、基本的人権を侵害することがあってはならない」旨を定めると言うが、憲法で保障された人権を侵してはならないのは当然のことである。暴走しかねない法律だからこそ、あえてこんな規定を設けるのだろう。
 驚くのは、特定秘密を漏らした場合、最高で懲役十年の重罰を科すことだ。現在の国家公務員法では最高一年、自衛隊法では五年だ。過去のイージスシステムの漏洩(ろうえい)事件では、自衛官に執行猶予が付いた。中国潜水艦に関する漏洩事件では、起訴猶予になった。現行法でも対処できるのだ。重罰規定は公務員への威嚇効果を狙ったものだろう。
 そもそも誰が特定秘密の取扱者であるか明らかにされない。何が秘密かも秘密である。すると、公務員は特定秘密でない情報についても、口をつぐむようになる。ますます情報は閉ざされるのだ。
 しかも、国会の委員会などで、公開されない秘密情報も対象となる。つまり国会議員が秘書や政党に情報を話しても罪に問われる可能性がある。これでは重要政策について、国会追及もできない。国権の最高機関である国会をないがしろにするのも同然だ。
*憲法改正の布石になる
 新法の概要に対する意見募集期間も約二週間にすぎず、周知徹底されているとはいえない。概要だけでは情報不足でもある。政府の対応は不誠実である。
 米国の国家安全保障会議(NSC)をまねた日本版NSC法案も、秋の臨時国会で審議される予定だ。集団的自衛権をめぐる解釈も変更されかねない。自衛隊を国防軍にする憲法改正への道だ。
 秘密保護法案はその政治文脈の上で、軍事国家化への布石となる。法案には反対する。
 *上記事の著作権は[中日新聞]に帰属します
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「秘密保全法」が国民の“知る権利”を脅かす
 週プレニュース[2013年09月10日]
 8月27日、政府は秋の臨時国会に提出予定の「特定秘密保護法案」(秘密保全法)の概要を明らかにした。しかし、法律の名称と概要以外は公開されず、さまざまな危険性をはらんでいると専門家は指摘する。
 概要によると、「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」に関する事項のうち「特に隠す必要性」がある機密を「特定秘密」に指定し、これを漏らした国家公務員らには最高で懲役10年を科し、厳罰化を図る、とある。
 だが、これだけでは、具体的にどういった情報が秘密の対象になるのかわからない。上智大学新聞学科教授の田島泰彦氏はこう指摘する。
 「秘密に指定することができる分野を幅広くしておけば、なんでも『特定秘密』に指定することができます。例えば政治家や官僚の汚職を『特定秘密』として扱うことも可能です。指定は行政機関の長の判断で行なうことができ、指定が問題ないかを検証する第三者機関もありません。何を秘密にしているかを告知する必要もない」
 国家機密を扱うのは基本的に官僚などの国家公務員である。しかし、秘密保全法では「特定秘密」に触れる可能性のある大臣など政務三役や警察官、大学などの職員、行政機関と取引のある民間人も情報を漏洩した場合には処罰の対象になるという。
 「さらに、秘密の情報を扱うにふさわしい人物かをチェックする『適性評価制度』も導入されます。対象となるのは、本人だけでなく家族や親戚、友人などにも及ぶ可能性があり、『特定秘密』を扱う人を中心にプライバシー調査の範囲は、かなり広くなるはずです」(田島氏)
 おまけに処罰の対象になるのは、秘密の情報を扱う側だけではない。秘密にされた情報を調べたり、漏らすことを働きかける行為も対象になることが懸念されている。
「『特定秘密』を扱う人を取材する行為自体が、“漏洩をそそのかした”と処罰されることも想定できます。しかも、罰則は最高で懲役10年と極めて重い。取材する側にとって萎縮効果は間違いありません。また、これは報道機関だけでなく、市民も対象にしています」(田島氏)
 8月27日、「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」の座長である町村信孝元官房長官が、「正常な取材活動は問題ないことを法律上明確にしたい」と述べた。しかし、どこまでが「正常な取材活動」なのかはまったくわからない。それに、報道機関ではなくフリーランスのジャーナリストによる取材や市民活動家の調査は「正常な取材活動」に含まれるのだろうか。
 アメリカでは、機密資料でも、一定期間を過ぎると誰でも閲覧することができる制度が整っている。近年公開された文書では、イギリスが日本への原爆投下を事前に通告され、同意していた新事実も発見されている。ところが、日本では、こうした制度は存在せず、多くの公文書は存在すら確認できなくなっている。
 例えば、1971年、当時の佐藤栄作内閣とニクソン大統領の間で交わされた、沖縄返還に際してアメリカが支払うべき金銭を、日本政府が肩代わりしていたと疑われた「沖縄密約事件」の文書は、アメリカではすでに公開され、密約の存在は証明されている。ところが、日本ではいまだに公開されていない。
 こんな状況の日本において、秘密保全法という新たな法律でもってさらに“ふたをする”というのだ。これは憲法が国民に保障している「知る権利」を脅かしているとは言えないだろうか?(取材/昼間たかし)
 ≪週刊プレイボーイ38号「『秘密保全法』が政府の“情報隠し”に悪用される!!」より≫
 *上記事の著作権は[週プレニュース]に帰属します
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国家の痛いトコを取材したら逮捕される?「秘密保全法」の盛り上がらなさがヤバい!
 日刊サイゾー2013.09.06 金
 8月後半から、新聞・テレビなど大手メディアが盛んに報じるようになった秘密保全法。「国家公務員の守秘義務を厳罰化する」などと解説されているが、多くの人は「それはよいことだ」と思うのではなかろうか。
 ところが、この法律ができれば、官僚や政治家が「国家機密」の名目で、都合の悪い情報をすべて隠蔽し尽くしてしまう、恐ろしい事態が想定されているのだ。
 まだ法案は具体的な条文として示されてはいないが、「国の安全」「外交」「公共の安全および秩序の維持」の各分野にかかわる情報を、行政組織の長が「特別秘密」に指定できるというのが、秘密保全法の基本だ。ところが、この時点で、見る人が見るとヤバさに気づくだろう。なにしろ、上に記した3つの項目が実際になんなのかまったくわからない。つまり、なんでも「特別秘密」にできてしまうというわけだ。
 現在、自衛隊法では防衛機密を似たような方法で指定し、守秘義務を課している。建前では国民の知る権利を侵害しないとしているが、実際には自衛隊で扱うあらゆる情報は防衛機密として、国民に一切公開しなくても済むように扱うことができる。
 純然たる軍事情報である防衛機密だけが対象なら、まだよい。ところが秘密保全法では、対象となる情報の範囲が曖昧すぎるのだ。「公共の安全および秩序の維持」なんて名目にすれば、どんな情報でも対象にできてしまうではないか。
 さらに、守秘義務の対象は秘密を扱う国家公務員だけではなく、情報に触れる可能性のある民間人や、研究者なども含まれる。加えて秘密の情報を扱うにふさわしい人物かをチェックする「適正評価制度」という制度も導入されると考えられている。ここでチェックの対象となるのは、本人だけでなく家族や親戚、友人などにも及ぶと考えられる。「特別秘密」を扱う人が一人いれば、周囲の人間はみんな揃って、国家にプライバシーを暴かれてしまうというわけである。
 そして、秘密保全法の最大の問題と指摘されるのは「特別秘密」に指定された情報にアクセスしようとしたり、漏らすことを働きかけるだけでも罪になることだ。
 具体的にいえば、国家のヤバい情報を取材しようとしたら「アウト!」というわけである。しかも、行政機関は「何が『特別秘密』に指定されているか」を公にしなくてもよい。なので、ヤバそうな情報を取材しようとしただけで、アウトになる可能性も。当然、秘密を扱っている人物から情報を得ようとしたら、もっと悲惨な結果に……。
 8月後半になり、政府は秘密保全法の概要をようやく明らかにした。この中で、町村信孝元官房長官は記者団に対して「正常な取材活動は問題ない」と発言している。しかし、いったい何が「正常な取材活動」に当たるのかは、明示されない。ともすれば、大手報道機関がやるのは正常だが、日刊サイゾーのような新興メディアやフリーランスはNGということも想定できる。
「報道を除外するのは想定の範囲。新聞各紙は秘密保全法が“知る権利を奪う”と批判していましたが、読売新聞なんかは、ここで妥協しちゃうんじゃないでしょうか」(政治部記者)
 表現の自由の問題に詳しい上智大学教授の田島泰彦氏は、たとえ報道除外規定が設けられても、まったく無意味だと指摘する。
「情報の漏洩に対しては、最高で懲役10年の厳罰が科せられます。そうなると、いくら報道は除外しているといっても、情報源になる人はいないでしょう」
 この法律ができれば、国民が知ることのできる情報が次第に減少していくのは間違いない。しかし、肝心の国民の側には危機感はまったくない。ある新聞記者は語る。
「児童ポルノ法の問題を記事にすると、オタクから反応があるじゃないですか。でも、秘密保全法は、まったく誰からも反応がないのです。それは、やはり国民の日常生活にどのような影響を及ぼすか、シミュレーションしにくいからです」
 知る権利が制限されるとは、どういうことか? その危機感が国民に伝わることのないまま、法律だけは出来上がろうとしている。 (取材・文=昼間たかし)
 *上記事の著作権は[日刊サイゾー]に帰属します
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秘密保護法案 報道の自由への配慮が必要だ(9月6日付・読売社説)
2013年9月6日01時33分  読売新聞
 安全保障に関する機密情報の管理がずさんでは同盟国などの信頼を得られず、情報共有が進まない。新たな情報保全法制の整備が急務だ。
 政府が、秋の臨時国会に提出する予定の特定秘密保護法案の概要を公表した。
 特に秘匿性の高い安全保障分野の情報を「特定秘密」に指定し、漏えいした公務員や、政務三役の政治家らに最高で懲役10年の重罰を科す内容だ。
 安倍政権は、国家安全保障会議(日本版NSC)の創設に必須な法案と位置づけている。
 日本版NSCは、外交・安全保障の司令塔として関係省庁の重要情報を集約するほか、米国などからテロ・軍事関連の機密情報の提供を受けることが想定される。
 核開発を進める北朝鮮の軍事的脅威や、中国の急速な軍備増強が顕在化している。日本の平和と安全を守るためには、情報保全体制を強化し、米国などと情報交換を密にすることが重要である。
 法案の概要によると、特定秘密の対象となるのは、「防衛」「外交」「諜報ちょうほう活動の防止」「テロ活動の防止」の4分野の情報だ。所管する閣僚が秘密指定する。
 秘密指定は最長5年で、更新も可能だが、必要性がなくなれば解除される。厳正な運用を担保する上で、妥当な仕組みである。
 特定秘密を扱う国家公務員や都道府県警の警察官、省庁と契約を結ぶ民間企業の従業員らは、海外渡航歴や飲酒の節度などで問題がないかどうか調査される。
 情報漏えいのリスクを軽減するには、こうした秘密取扱者の「適性評価」は必要だろう。
 特定秘密の漏えいに対する懲役10年以下の罰則は、国家公務員法の懲役1年以下や、自衛隊法の懲役5年以下より重い。
 懸念されるのは、漏えいに重罰を科すことで、取材・報道の自由が制約されないかという点だ。取材を受ける公務員が萎縮し、取材への協力をためらうといった悪影響が生じかねない。
 公務員に漏えいを働きかける行為も処罰の対象になる。
 政府は「正当な取材活動は問題にならない」と説明するものの、運用次第で、熱心に相手を説得する通常の取材まで処罰対象とされる可能性が否定できない。
 取材・報道の自由が確保されなければ、国民の知る権利は守れない。政府は法案に「国民の基本的人権を不当に侵害しない」との規定を設ける方針だが、これで十分なのか。更なる検討が必要だ。
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秘密保全法案の概要判明 公務員に最高懲役10年
 産経新聞2013.8.27 22:42
 政府が国の機密情報を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込む「特定秘密保護法案」の概要が27日、分かった。「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分類に関する事項のうち「特段の秘匿の必要性」がある機密を「特定秘密」に指定する。特定秘密を漏らした国家公務員らには最高で懲役10年を科し、厳罰化を図る。
 政府は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)を年内に発足させる方針。米国のNSCなどと機密情報の共有を活性化させるためには秘密保全法制の強化が不可欠としている。
 各府省の大臣らは、特定秘密の対象を指定、秘密を取り扱う国家公務員の範囲を定める。罰則は「日米相互防衛援助協定(MDA)等に伴う秘密保護法」の最高刑が懲役10年であることを踏襲した。
 民間人に対しても、特定秘密を得るために(1)あざむき・暴行・脅迫(2)窃取(3)施設侵入(4)不正アクセス-の行為をすれば最高で懲役10年。共謀や教唆、扇動も処罰対象となる。一方、言論・報道の自由や国民の知る権利が損なわれるとの懸念もあるため、法案には拡大解釈や基本的人権の侵害を禁じる規定も盛り込む。
 安倍晋三首相は秘密保護担当相を森雅子少子化担当相に兼任させる。政府は10月召集予定の臨時国会に法案の成立を目指す。
 自民党も27日、「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」を開き、法案を議論した。
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【「いま」がわかる政治解説】「秘密保全法制」日本は刑罰軽い“後進国”
 産経新聞2013.5.21 14:52
 政府は、外交や安全保障、治安に関する機密情報の漏洩(ろうえい)を防ぐため公務員の罰則規定を盛り込んだ「特定秘密保全法案」の準備を進めている。守秘義務がある公務員には、すでに国家公務員法や自衛隊法などによる罰則があるが、欧米諸国と比較して罰則が緩く情報漏洩の抑止力に欠けるとの指摘がある。国家安全保障会議(日本版NSC)創設を念頭に、政府内の「秘密」保全を強めたいとの目的もある。
 「極めて重要な課題だ。法案を速やかに取りまとめ、早期に国会に提出できるよう努力したい」
 安倍晋三首相は4月16日の衆院予算委員会で、秘密保全法案の早期法制化に言及した。
 日本版NSCは、外務省や防衛省、警察庁の機密情報を一元化し、中長期的な戦略性の高い政策を立案する。また、世界中に情報網を張りめぐらせる米中央情報局(CIA)や英秘密情報局(MI6)のような強力な対外情報機関がない日本は、多くを友好国の情報にも頼らざるを得ない。
 NSCの事務局には、各府省から計約100人が投入され、職員は国内外の機密情報に接することになる。問題は、ここから機密が漏れる心配がないかだ。
 米軍の機密情報を取り扱う防衛省幹部は「NSC側に漏洩の罰則がなければ、機密情報を安心して提供できない」と指摘する。
 ところが、現行の国家公務員法は公務員に職務上知り得た情報に関する「守秘義務」を課すが、罰則は1年以下の懲役か50万円以下の罰金にすぎない。米国をはじめ主要各国は表の通り、厳しい罰則が科せられている。日本はその意味で「後進国」なのだ。
 安倍首相も「日本に法整備がないことに不安を持つ国があるのは事実だ」と述べ、他国との情報共有には秘密保全による信頼関係が必要だと強調した。
 秘密保全法制については、民主党政権下でも、平成22年9月の中国漁船衝突事件で元海上保安官がビデオ映像を流出させたのをきっかけに検討が進められた。
 主な内容は、政府が指定した「特別秘密」を漏らした公務員への罰則を「10年以下の懲役」とした。米国から供与された装備品の構造や性能などを対象とした日米相互防衛援助協定(MDA)に伴う秘密保護法に準じた措置だ。
 特別秘密は(1)国の安全(2)外交(3)公共の安全と秩序の維持の3分野で、特に秘匿性が高い情報が該当する。自衛隊法の罰則も現状の5年以下から10年以下の懲役に引き上げ、特別秘密の対象は別表で列挙することとしていた。
 ただ、個別の情報を「特別秘密」かどうか決めるのは政権の裁量になるとみられる。ビデオ映像流出をきっかけにした法制化では、本来は公開すべき情報を隠蔽(いんぺい)しようとしたとして当時の菅直人政権が批判を浴びた。日本新聞協会や日本雑誌協会も国民の「知る権利」や取材、報道の自由を阻害しかねないと反対した。
 安倍首相は「国民の知る権利や取材の自由を尊重しつつ、さまざまな論点を検討している」と配慮を示す。政府は、秋の臨時国会に向けて法案化を目指すとみられる。(峯匡孝)
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秘密警察が跋扈する 後藤昌弘(弁護士) 2013-09-15 | 後藤昌弘弁護士 
 中日新聞を読んで 秘密警察が跋扈する 後藤昌弘(弁護士)
  2013/9/15 Sun.
 4日の朝刊に、特定秘密保護法案に関するパブリックコメント(意見公募)が始まった旨が報じられていた。見出しには「知る権利に一定配慮」とある。しかし本当に配慮されているのだろうか。
 法律案の概要を見ると、保護対象となる秘密が別表に列記されている。しかし、いったん法律が制定された後に、別表の内容が加えられる可能性は常にある。拡張解釈の禁止規定を定めることとされてはいるが、解釈するのは国自身であり、法律制定後に恣意的な解釈がされてきた事案は嫌というほど見てきている。
 さらに怖いのは、特定秘密を扱う公務員や企業の社員について、行政機関の長または警察本部長が個々の職員の適性を評価することとなっている点である。評価対象は、テロ活動に関する交友関係から犯罪歴、精神疾患、酒癖の悪さ、経済的信用状況まで多岐にわたる。警察が市民の交友関係から飲酒歴、信用状況まであらゆる個人の情報を調査できることになっているのである。適性評価については一応本人の同意が必要とされるようだが、対象者が拒否などできるはずもないし、調査に必要だから、との名目でどんな情報が集められるのか国民には知りようもない。
 別表の内容にも問題がある。現在、自衛隊の兵器配備状況はネットで調べられるが、今後は秘密となる。政府がどんな兵器に幾ら金を使ったのか、国民は知ることができなくなる。外交分野も政府間の密約などは秘密となる。政府は臭い物にふたができる。原発もテロ被害の対象となり得るから、原発の構造上の欠陥を政府が秘密の対象に含めることすらできるのある。
 この法律の目的はスパイ対策といわれている。しかし法律は日本国内でしか適用できないから、外国に逃げた者は処罰などできない。結局この法律は国民を監視する機能しか持たない。こんな法律は断じて許してはならない。こんなことを書くと、私などは真っ先に素行調査の対象にされるのだろうが。
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〈来栖の独白2013/9/15 Sun. 〉
 戦後アメリカの占領政策の成果で、日本人の国防、インテリジェンス意識は、奇妙なものになってしまった。というより、「自国を自分で守る」という、国際社会においては当然の「義務」すら果たさない国民となった。
>現在、自衛隊の兵器配備状況はネットで調べられるが、
 この状況は、当然、我が国の防衛状況が(実際は、防衛といえるほどのものはないのだが)外国に筒抜けであることを意味する。
 たとえば、武器輸出三原則についてだが、輸出するほどのものを持っておらず、武器は買うばかりの国であるなら、「防衛」は不可能である。日本においては戦闘機も護衛艦もアメリカ製である。ということは、現在、武器の大半はソフトウェアであるから、アメリカが工作しようとすればいくらでもできてしまう。作動不能にすることも、アメリカ(武器輸出国)には可能だ。
 戦後教育の成果であろうか、日本人は何かにつけ、オープンでクリーンであることが善いことと信じてきたようだ。が、これでは、世界に対して、国は守れない。
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「秘密保護法」考 / ちなみに、ソ連邦の崩壊は、「情報公開(グラスノスチ)」が大きなきっかけになった 2013-09-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
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尖閣諸島ビデオ「なぜ公開許されないのか」=一色正春元海上保安官 2011-01-21 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
一色正春元保安官 尖閣ビデオ流出 2010-12-25 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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秘密保全法案 言論に配慮し情報管理を 産経新聞【主張】 2013/8/18 Sun. 2013-08-18 | 政治
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◇ 秘密保全法案 中日新聞 【特報】 2013/08/17 Sat. 2013-08-18 | 政治
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「隠蔽だらけの民主党が進める秘密保全法(反情報公開推進法)を許してはならない」西山太吉氏が警告 2012-02-25 | 政治 
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『沖縄密約』西山太吉・澤地久枝・吉野文六「嘘をつく国家はいつか、滅びるものです」/小沢一郎氏裁判 2012-02-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
「沖縄密約証言」をよみくらべる 2009-12-03 | 政治 
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