千葉地裁 刑の一部執行猶予を適用2016.6.2 清原和博薬物報道に関連してマスコミに触れてほしいこの話

2016-06-02 | 行刑/司法/検察

TBS News 最終更新:2016年6月2日(木) 14時23分
千葉地裁 刑の一部執行猶予を適用、全国初か
 千葉地裁で2日、薬物事件の裁判が開かれ、刑の一部を執行猶予とする判決が言い渡されました。刑の一部を猶予する制度が適用されるのは全国で初めてとみられます。
  千葉地裁は、2日に開かれた裁判で、覚醒剤を使用した罪などに問われた37歳の女の被告に対し、懲役2年の実刑としたうえで、このうち6か月は保護監察付きで、2年間執行を猶予する判決を言い渡しました。
 これは、受刑者の社会復帰を進める目的で3年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受けた人を対象に刑の一部の執行を猶予する制度で、適用されたのは全国で初めてとみられます。
 この被告は1年半服役した時点で、刑期は6か月残っていますが出所をします。その後、2年間保護監察下で過ごしこの間に再び罪を犯さなければ収容されることはありません。
 千葉地裁は制度を適用した理由について「薬物離脱の指導を受ける期間を設けることが有用」としています。(02日13:46)

 ◎上記事は[TBS News]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖
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清原和博薬物報道に関連してもっとマスコミに触れてほしいこの話
 篠田博之 月刊『創』編集長 2016年6月2日 12時20分配信
 5月31日に執行猶予付の有罪判決が出た清原和博元被告。判決自体は予想通りだが、一連の報道は、薬物依存について考えるためのきっかけになったと思う。そこでぜひお願いしたいのだが、6月1日から始められた「刑の一部執行猶予」制度について、もっと注目してほしい。この制度については、5月29日付読売新聞や、31日付朝日新聞が大きな記事を載せているが、清原裁判の報道に比べて今一つ関心を持たれていない。
 でも、この制度改革は大変意味のある事柄だ。薬物依存への対処をめぐって処罰から治療へという流れに司法の世界が舵を切ったことを意味するからだ。清原元被告の場合は、もとから執行猶予付き判決が予想されたケースで、この「刑の一部執行猶予」制度の対象とはならないのだが、でももう少しマスコミは関連付けて報道してほしい。
 日本の薬物依存に対する取り組みはアメリカに比べて20年以上遅れていると言われてきたが、ようやくアメリカの後を追い始めたといえる。アメリカではドラッグコートという独特の司法システムを導入しているのだが、日本の場合は法律改正も必要だし、いきなりドラッグコートの導入は無理と言われてきた。今回の「刑の一部執行猶予」制度は、日本でも可能な範囲で司法システムを変えていこうという方向を示したものだ。
 こうなったのは、薬物犯罪など再犯率が高いと言われるものに対しては刑務所に隔離しておくだけの処罰法では限界があることが指摘されてきたことと、刑務所の収容定員オーバーという問題が深刻化してきたためだろう。後者はアメリカが薬物依存対策について舵を切った背景のひとつとも言われてきた。
 改正の方向を一言で言えば、処罰だけでなく治療を、ということだろう。刑務所だけでなく社会全体で薬物依存対策を進めようという考え方だ。
 私もこれまで、三田佳子さんの次男や田代まさしさんなどのケースで薬物依存の恐さに触れてきたが、「え?」と思ったのは、例えば、田代さんが2008年に出所した時のことだ。満期出所だったため、刑務所を出た時点で保護観察もつかず、何のフォローもなされない。出所後は家族を始め周囲のサポートによって更生を図るしかなかったのだが、「放り出した」という印象に近いものだった。一般の犯罪と比べて再犯率が高いと言われる薬物依存への対応がこれでは再犯防止はできないだろうと思った。逮捕して刑務所に一定期間閉じ込めて懲罰を与え、刑期が過ぎたらフォローもせずに放り出すというのが、これまでの日本の薬物対応だった。これでは薬物依存は減っていかないだろう。
 今回導入された「刑の一部執行猶予」制度は、少し早めに出所できるようにするのと引き換えに、保護観察を受けたり治療プログラムを受けることを求めるというものだ。アメリカのドラッグコートも導入されて効果があったとされているが、日本でも治療にもっと軸足を置いた対応に舵を切ろうという考え方だ。 
 ただ、マスコミ報道でも指摘されているように、民間にそれだけの受け皿が十分に備わっているかが重要で、そこの充実を伴わないと制度だけ変えても実効性はない。読売新聞が「薬物犯 社会で更生支援」と大見出しをつけ、サブタイトルで「長期的に専門治療 出所後の態勢課題」と謳っているのは的確だ。朝日新聞も「保護観察年3000人増 受け皿足りぬ恐れ」と中見出しを付けている。
 だから、まだまだ課題は多く、今回の制度改正はその第一歩なのだが、薬物事件にどう対処すべきかという方向性を示したという点では意義は大きいと言える。これまで薬物事件のたびにテレビで「もっと厳罰に処すべきだ!」と声高に叫ぶ識者が多かったが(今回の清原元被告の執行猶予判決に対してもそう言っている人もいたが)、それは薬物依存の実態を知らない人の見方と言わなければならない。刑務所にぶち込んでおいて、薬物依存が治るという実態はない、というのは、実際に受刑したほとんどの人たちが口にしていることだ。
 5月31日に清原元選手の判決、そして6月1日に新たな制度が始まったというのは、偶然ではあるのだが、これを機に薬物依存を減らしていくにはどうすべきなのか、もっと報道し、議論してほしい。
 ちなみに清原元被告について言えば、妻と離婚し、子どもともあまり会えなくなったという孤独な状況が彼の薬物依存を悪化させた背景にあることは明らかだから、その状況を変えない限り解決にはならないかもしれない。そこが薬物依存との闘いの大変なところなのだが、でも「またやったら刑務所行きだ」といった脅し効果でやめさせるという、これまでの考え方では限界があることは明らかだ。逆に言えば、それほど薬物依存とは深刻なものだということだ。
 今回の清原薬物報道全体を見ていた印象としては、報道する側が薬物依存の背景に踏み込むなど、かつての「厳しく処罰せよ」という単純な報道からかなり改善されつつあると思う。だからその意味で、「刑の一部執行猶予」制度についてもっと報道してほしい。犯罪防止というものに国が、社会がどう対応していくべきかという、かなり本質的な問題提起を、今回の制度改革は投げかけている。これをきちんと社会に提示して議論する基盤を作るのがマスコミの役割ではないかと思う。
 …と書き終わったところへ、岡崎聡子さんから手紙が届いた。岡崎さんは元オリンピック体操選手だが、薬物依存で何度も逮捕され、今も服役中だ。もう何年か前からのつきあいだが、深刻な薬物依存になると、そこから抜け出すというのはかなり困難だ。その彼女の手紙の中で、清原元被告の保釈の時にヘリコプターまで飛んでマスコミが大騒ぎした様子が刑務所のテレビでも映し出されたことが書いてあった。刑務所の中では、薬物依存で服役している人が実はかなり多い。再犯率が高いからだ。マスコミの薬物報道は、昔に比べればかなり改善されつつあるとは言えるが、大事なことにもっともっと踏み込んでほしいと思う。

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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「一部執行猶予制度」2016/6月1日に施行…薬物使用の受刑者ら対象
2016年6月までに始まる「刑の一部執行猶予」 適用は薬物事件など限定的に
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