ハンセン病入所者の解剖、半強制の可能性 2022/11/27 読売新聞

2022-11-27 | 文化 思索 社会

ハンセン病入所者の解剖、半強制の可能性…調査委「重大な人権侵害」
 2022/11/27(日) 11:48配信 読売新聞オンライン  

 国立ハンセン病療養所・邑久光明園(岡山県瀬戸内市)で亡くなった入所者が病理解剖されていた問題で、調査していた園の委員会が公表した報告書では、不適切な実態が明らかになった。委員会は解剖が半強制的に行われていた可能性があるとして、「隔離政策下で行われた重大な人権侵害だった」と結論づけた。(岡さくら、小林由佳)
 検証結果を報告する近藤委員長(瀬戸内市の邑久光明園で)(=画像略、来栖)

 公表された報告書は全62ページ。医師や弁護士、入所者ら12人で構成される委員会が2020年10月から、文献の分析や関係者から聞き取りを進め、内容を盛り込んだ。報告書では、開園した1938年から98年までの間、亡くなった入所者の71%にあたる1184人が解剖されたとしている。7割を超える解剖率について、委員会は「一般の医療機関と比べて明らかに異常」と指摘する。
 かつては病理の解明のため意味があったが、50年には治療法が確立され解剖の根拠は薄れた。それにもかかわらず、その後も続いたことについても「人権の観点から、あり方を見直すべきだった」と非難した。

■ 正当な同意なし
 検証では、適切な同意がなされていたかも議論された。入所者が解剖を希望する場合、本人と証人として別の入所者2人の署名が必要だった。これに対し、園で見つかった解剖を希望する書類は7通で、うち2通は本人の署名があるが残り5通は証人だけだった。遺族による承諾書は164通で、遺族ではなく友人や知人の同意しかないものもあった。
 複数の入所者らへの聞き取りでは、「入園時に承諾させられた」「園の世話になったのだから、断れないという人の方が多かった」といった証言が寄せられた。

■ 研究のための「もの」
 24日に邑久光明園で行われた記者会見で、関係者らは提言への思いを述べた。
 委員長の近藤剛弁護士は「同じことを繰り返さないためには、医療者の人権意識を高めていくことが何より重要だ」と訴えた。入所者自治会の屋猛司会長(80)は「検証結果を見て、入所者を研究のための『もの』としか見ていないと感じた」と憤った。
 同席した同園の青木美憲園長(57)は「過去の過ちを明らかにし、二度と繰り返さないための方策を取ることで、初めて入所者の名誉回復が図れる。提言を受け止め、今後に生かしていきたい」と話した。

 報告書は今後、厚生労働省や全国の療養所に送付する。

 最終更新:読売新聞オンライン

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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* 違憲の「隔離法廷」で出された死刑判決…ハンセン病元患者が語る「菊池事件」の非人道性 2021/8/1 

  


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