米軍普天間飛行場移設「日本外交の急務は日本の安全保障の要である米国との信頼関係の再構築である」

2010-06-09 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

菅内閣に注文する 熟慮と信頼の外交を
毎日新聞 社説2010年6月9日
 新政権は重い外交課題を背負ってのスタートとなった。米軍普天間飛行場移設をめぐる鳩山前政権の迷走は日米関係にきしみを生じさせた。一方、東アジアの情勢は韓国海軍哨戒艦の沈没事件を機に緊張が高まっている。こうした中で、日本外交の急務は日本の安全保障の要である米国との信頼関係の再構築であることは論をまたない。
 菅直人首相は外交の基本方針として日米基軸と対中関係の重視を掲げている。前政権が目指した路線を基本的に踏襲するものである。ならば、鳩山外交がなぜ挫折したのかを総括し、その教訓を学び取ることから始めなければならない。
 鳩山由紀夫前首相は「緊密で対等な日米関係」と「アジア重視」を外交の2本柱に据えた。その目標設定は決して突拍子のないものではなかった。小泉純一郎元首相が「日米関係が緊密であればあるほど中国、韓国、アジア諸国とも良好な関係が築ける」と述べたように、自民党長期政権下の外交がとかく国民の目に「対米追従」と映っていたからだ。
 これに対し鳩山前首相は対米関係で「対等」を掲げ、その一方で影響力を急速に高める中国を中心とするアジアとの関係を重視した。
 だが、前政権は「緊密で対等」な日米関係が具体的に何を意味し、それを全体の外交戦略の中にどう位置づけるのかを提示し得なかった。現状を改善し目標に近づけるための大きな戦略と具体的な手順を組み立てることができなかったのである。
 鳩山前首相が退陣間際になって在日米軍の抑止力の必要性を明確に認めたことがそれを示している。普天間問題で自らが示した決着期限に迫られ、「最低でも県外移設」との約束をほごにして苦し紛れに米政府と合意したのが県内移設を明記した共同声明だった。一連の経過をみれば思慮が足りなかったと言わざるを得ない。
 菅首相はオバマ米大統領との電話協議で共同声明の履行を確認した。政府間の合意を尊重しなければならないのは当然だが、頭越しの合意に地元の反発と怒りは激しい。首相は引き続き大きな困難を背負うことになる。
 日米合意は代替施設の位置や工法の決定時期を8月末としている。首相は8日の会見で、その期限をにらみながら沖縄の負担軽減と地元の理解を求めることに並行して取り組む考えを表明した。
 今月下旬のカナダでの主要国首脳会議(G8サミット)の際のオバマ大統領との会談が菅外交のスタートとなる。まずは首脳間の信頼を取り戻すことに全力を傾けてほしい。
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発信箱:再び抑止力=三森輝久(西部報道部)
毎日新聞2010年6月8日0時27分
 菅政権はどう答えるだろう。鳩山由紀夫前首相が自ら辞任理由に挙げた米軍普天間飛行場の移設だ。
 鳩山氏は「学べば学ぶにつけて」米軍の抑止力を重要と判断し、沖縄県内移設へと回帰した。これに反発した沖縄選出の社民党国対委員長、照屋寛徳氏が、鳩山氏の「抑止力」が具体的に何を意味し、県内移設でなければ抑止力が維持できないとする理由を質問主意書でただした。政府側が答弁書提出の予定を5月21日から1週間延ばしたことは5月25日付のこの欄で書いた。
 照屋氏側によると、政府は28日になっても答弁書を出せず、再延長は過去に例がないとして主意書の再提出を求めたという。辺野古移設を巡って福島瑞穂・社民党党首が消費者・少子化担当相を罷免された日。ドタバタもあって、照屋氏はやむなく再提出に応じ、答弁書は今月8日に出ることになった。鳩山政権は答弁書を出さないまま自壊したが、質問主意書は生きている。
 政府が答弁に困っているのは、問いが具体的だからだろう。照屋氏は在沖海兵隊が遠征する場合、長崎県・佐世保港に配備された米海軍揚陸艦部隊と行動をともにする点に注目し(1)海兵隊が必ずしも沖縄に駐留する必要はないのではないか(2)海兵隊の一体運用が不可欠なら、在沖海兵隊の県外移転を検討したのか(3)台湾や北朝鮮有事などの場合、揚陸艦部隊とは別に在沖海兵隊単独で行動するかもしれないが、出動目的は部隊規模や作戦能力から考えて米国人の保護救出にあり、日本の安全を守る抑止力とは関係ないのではないか--を聞いている。
 かつて普天間問題を解けない「4元方程式」と言った理系の菅直人首相。早々と日米合意踏襲を明言したが、辺野古移設の理由をどう説くか。大ざっぱにしか言わなかった鳩山氏も理系だったが。
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発信箱:「鳩山辞任」の予言当たる=布施広(論説室)
毎日新聞2010年6月3日0時34分
 鳩山由紀夫首相の辞意表明を聞いて、ある大学教授の言葉を思い出した。「鳩山さんは米国に謝って辞めるしかない。県外、国外への移転をあきらめて自民党政権時の日米合意に戻しますと。それでも米国が許すかどうか」。この発言は4月上旬。鳩山首相が米軍普天間飛行場の県外移設断念を表明する1カ月前のことだった。
 米国に謝ったかどうかは別として、教授の予言通りである。その後鳩山氏は「学べば学ぶにつけて」と沖縄駐留の米海兵隊の抑止力を評価して「県内」移設へ転向する。この変心が国内的には事態を悪化させて、ついに辞意表明に至ったわけだ。
 鳩山氏の学習内容はともかく、私も「抑止力」が気になる。海兵隊が抑止力に寄与するのは自明だが、駐留地は「絶対に沖縄」、飛行場移設先は「絶対に辺野古」でないといけないのか。いやいや、抑止力はそんなに型にはまったものではあるまい。
 例えば91年の湾岸戦争と03年のイラク戦争とでは米軍の配置も装備も違う。ブッシュ政権の東欧ミサイル防衛計画はオバマ政権になって大幅修正された。米国の戦争や戦略を取材してきた身としては「絶対に辺野古」という理屈がよくわからない。
 つまるところ米国が過去の日米合意を重視したためだろう。日米の再交渉になった以上、米側も沖縄の負担軽減へ新たに踏み込んでほしかった。「現行計画」(辺野古)に固執して「びた一文まけない」という交渉姿勢では、米軍自身が言う「フットプリント(基地負担)軽減」はおぼつかない。
 07年9月、インド洋での給油継続に「職を賭す」と言った安倍晋三元首相が辞任したことを思い出す。普天間問題に「職を賭す」と語った鳩山首相も辞めていく。3年足らずで2人の首相が対米関係がらみで辞めるのは、どこかさびしい。
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余録:鳩山首相の辞任表明
毎日新聞2010年6月3日
 「だからこそ武装した預言者はみな勝利をおさめ、備えのない預言者は滅びるのだ」。君主が権力を獲得し、維持する術を説くマキアベリの「君主論」の一節である。「だからこそ」の前には改革をめざす君主に必要な条件が書かれている▲マキアベリはそこで旧制度に依存する多くの敵対者と、新制度へのいいかげんな支持者に囲まれた「改革」の難しさを説く。改革に挑む君主には自らの能力への信頼と、自前の「力」が欠かせない。他人をあてにすれば、必ず災いを招き、何も実現できないというのだ▲「私は10年、20年先の日本の姿を国民の皆さんに申し上げてきた」。鳩山由紀夫首相は辞任表明演説で「地域主権」「新しい公共」「東アジア共同体」などの持論を再説して、そう述べた。「預言者」の言葉に国民は聞く耳をもたなかった。そういいたげな物言いだ▲神ならぬ国民には預言が実現するかどうか分からない。だが一国の指導者がその実現の努力と責任を放棄する辞任会見で語る「預言」があろうとは、神様もびっくりだろう。改革を達成する自前の力などはなから自分で信じていないのならば、「滅び」も致し方ない▲改革にあたり首相がその「力」をあてにした小沢一郎幹事長も道連れにしての辞任劇である。結果責任が問われる政治にあって最後まで「思い」をうたい続けた首相だったが、ことツートップ辞任ではマキアベリ並みの駆け引きを成功させたように見えるのが皮肉だ▲政権交代をまたぎながら、またまた見慣れた短命内閣の再演だ。なぜこの国の政治は「備えのない預言者」しか生み出せなくなってしまったのだろうか。

普天間「政治には国民の命を守る責任がある。地元だけで決まらず」=岡田外相 「日米合意、堅持」=菅首相2010-06-09
鳩山さん。理解、認識が遅すぎた。安全保障・外交・・・archive
日本とアジアの安定にとって、在日米軍による抑止力が必要であることは言うまでもない
狭い沖縄に米軍基地の75%が集中するのは地勢的・戦略的要因からだ 「綸言 汗の如し」
安全保障の現実〔在日米軍の役割〕をしっかり説明した上で沖縄などに負担を頼むべきだ


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