尊い命が失われた干拓事業 諫早湾

2007-11-20 | 社会

<諫早湾干拓>着手21年で完工 抗議活動の中で記念式典
11月20日11時18分配信 毎日新聞

 国営諫早湾干拓事業(諫干)の完工記念行事が20日午前、干拓地内などで開かれた。86年の事業着手から21年、総額2533億円の巨大事業は、事業目的の変更や開発面積の縮小などの曲折をたどった。有明海の漁業不振が続く中で、反対派の漁業者らは、干拓地周辺や諫早湾で抗議活動を展開。有明海沿岸4県の各県漁連・漁協も記念行事への出席を取りやめた。

 干拓地内であった記念式典には、谷川弥一農水政務官や長崎県の金子原二郎知事ら約70人が出席。テープカットの後、農耕用トラクター6台が干拓農地をパレードした。続いて近くのホテルで完工式があり、約280人が完成を祝った。沿岸の▽福岡県有明海漁連▽佐賀県有明海漁協▽長崎県漁連▽熊本県漁連--の代表者は、農水省から招待を受けたが欠席した。

 諫干は食糧増産を目的とした52年の「長崎大干拓構想」が発端。漁業者の反発を受けて、70年には飲料水や農地確保のための「長崎南部地域総合開発事業」に変更された。86年、防災機能を持たせた現計画で事業着手にこぎ着けた。

 しかし、「ギロチン」と形容された97年の潮受け堤防(長さ7キロ)閉め切り後の00年末、有明海でノリなどの不作が問題化。01年の事業再評価で環境などへの配慮を求められ、干拓面積は700ヘクタールと当初予定から半減された。04年には、佐賀地裁が工事差し止めを命じるなど、漁業者との対立も先鋭化。現在も有明海への影響を懸念し、潮受け堤防の中・長期開門を求める声は根強い。

 この日、反対派の市民団体は干拓地周辺や諫早湾で抗議活動を繰り広げた。中央干拓地前では、市民団体メンバーらが「宝の海を返せ」などとの横断幕を並べて抗議し、潮受け堤防の北部排水門付近の海上でも漁船などが出て「有明海SOS」と書いた巨大横断幕を掲げた。【宮下正己】

 【ことば】◇諫早湾干拓事業◇ 諫早湾央部を潮受け堤防で閉め切り、干潟を含む湾奥部を干拓した。造成される農地は約700ヘクタールで、中央(約600ヘクタール)と小江(約100ヘクタール)の二つの干拓地があり、来年4月営農が始まる。営農希望者は個人と法人で計62件の応募があり、長崎県農業振興公社が書類審査などで12月下旬に入植者を決定する。農地賃貸料は10アール当たり年1万5000円が標準。 

最終更新:11月20日11時45分


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