「再稼動 未必の故意は人災」後藤昌弘(弁護士)

2012-04-22 | 後藤昌弘弁護士

中日新聞を読んで 「再稼動 未必の故意は人災」後藤昌弘(弁護士)
 2012/04/22 Sun.
 いま原発の稼働に向けた動きが進んでいる。
 事件や事故の後に設置される外部調査委員会に指名された指名された経験は何回かあるが、その場合にまず行う作業は事実関係の確認である。何が起きたのか、誰がどのような行動を取ったのか、その結果いかなる事態が発生したのか。この点を把握しないと、原因究明も対策の検討もできないからである。
 聞くところでは、福島原発ではなだ放射線量が高く、原子炉内部の状況はいまだに正確には把握できないようである。外部電源が津波で失われたことは間違いないようだが、それだけなのか、内部の配管は地震の震動に耐えられたのか、などについてはいまだ明らかになっていない。
 今回政府は各原発に「安全評価(ストレステスト)」なるものを実施したという。しかし炉心溶融の原因すら完全には解明されていない現時点で、本当に意味のあるテストができるのか疑問である。
 以前、技術系の研究者をしている友人から次の話を聞いた。「建物であれ堤防であれ、設計上の強度がまず決められ、それに従った施工をしている。施工ミスがない限り設計強度以下の地震には耐えられるが、それを超える地震が来たら壊れるものだ」と。
 今回の震災では「想定外」という言葉が飛び交ったが、これは正確ではなく、設計に際して「想定しなかった」というにすぎない。だとすれば今後の原発再稼働に向けては、現状を把握したうえで、いかなる地震を想定するのか、それに向けていかなる対策を施すのか、この点をまず明らかにする必要があると思う。
 事故は常に起こりうる。しかし、あれだけ悲惨な事故を起こしながら、原因の調査も不十分な状態で原発を再稼働させて万が一再度の事故が起きたとすれば、それはもはや未必の故意によるというほかない。日本政府が国民の健康よりも電力不足対策を優先するとすれば、どこかの国を非難する資格があるとは思えない。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


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