世界的な動物愛護で入手困難 三味線の代替素材で プロ奏者らセミナー (中日新聞2016/5/14)

2016-05-17 | 本/演劇…など

世界的な動物愛護で入手困難 三味線の代替素材で プロ奏者らセミナー
 中日新聞2016/5/14 Sat.夕刊 4面【伝統芸能】
 和楽器の素材となる動植物の入手がますます困難になっている。特に三味線の胴に使われる犬と猫の皮は世界的な動物愛護の高まりを受け、輸入がほぼ停止、新たな素材が入手できなくなっている。このような事態に対処しようと、三味線の製造業者や奏者、研究者たちは代替素材の開発を急いでいる。
 四月上旬、和楽器素材の問題を考えるセミナー(専門誌「邦楽ジャーナル」主催)が東京都内で開かれた。プロ奏者や研究者、製造業者らが参加する中、これまで犬や猫の皮の供給元となってきたタイや中国が輸出を禁止、危機的状況にあることが報告された。
 こうした現状に対し、長唄三味線方の芳村伊十冶郎(いそじろう)が犬や猫の代替品として、カンガルーの皮を張った三味線を実演。「犬や猫(の皮を使った三味線)と音色は遜色がなく、将来的に期待ができる」と語った。また、神奈川県内の三味線専門店が開発した合成皮革を使った三味線もプロたちが試演したが、こちらは音色の評価は分かれた。
 また、三味線のバチで使われる象牙の代替品に関して、名古屋大大学院工学研究科の大槻主税(ちから)教授がバイオナノテクノロジーでつくる新素材の開発状況について講演した。
 地歌・生田流箏曲の人間国宝である富山清琴は「将来、こうした新素材がプロの演奏家にとっても選択肢の一つになる。その中から昔の音を追い求めていかなければならない」と話していた。
*カンガルー皮を使用 長唄協会の夏季演奏会
 長唄協会(鳥羽屋里長会長)は、東京・国立小劇場で7月5日に開く「夏季定期演奏会」にカンガルー皮の三味線を使った演奏を披露する。
 長唄三味線の奏者杵屋佐吉、東京芸大の小島直文准教授らがつくる「邦楽器音響研究会」と東京邦楽器商工業協同組合(藤井公宣理事長)などが2014年からカンガルー皮の研究を開始。皮の測定を重ね、三味線に応用できるという結論に至った。また、安定的に輸入が見込める利点もあり、試作と改良を続けているという。既に演奏会で使用したことがある佐吉は「音色はまったく遜色がない。私がカンガルー皮の三味線を使っていることを知らない仲間もいる」と話す。その一方で、小島准教授は「なめす(柔軟性を高める)技術の向上など課題もある」と指摘。商品化にはまだハードルがある。(小林泰介)

 ◎上記事は[中日〈東京〉新聞]からの転載・引用です


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。