ワクチン接種・殺処分、農業高も  生徒育てた牛「あまりに酷」

2010-05-28 | いのち 環境

口蹄疫殺処分、農業高も 生徒育てた牛「あまりに酷」
 asahi.com2010年5月27日6時17分
 宮崎県内で猛威をふるう口蹄疫(こうていえき)。牛などを飼育している農業高校にも危機が迫る。とくに県立高鍋農業高校(高鍋町)の牧場の牛と豚は全頭、ワクチン接種のうえ殺処分の対象となる。生徒や教職員、卒業生らは悲痛な思いを抱えている。
 「『牧場はどうなるとか』と、涙ながらに電話してくる卒業生もいます」。100年以上の歴史を持ち、県内の農業を牽引(けんいん)するリーダーを多数育てた高鍋農業高校。電話取材に対し、同校教員はこう話した。生徒や卒業生らから、牛たちを気遣う問い合わせが相次いでいるという。
 同校の専用牧場「舞鶴牧場」では、約60頭の牛や約200頭の豚などを飼育。生徒たちが丹精込めて育てた牛のなかには、県畜産共進会でグランドチャンピオンを受賞した牛や、その子牛もいる。
 国は19日、「発生農場から半径10キロ圏内(移動制限区域)では牛と豚にワクチンを打ったうえで全頭殺処分する」という方針を打ち出し、一部地域で22日、ワクチン接種を始めた。同校の牧場も10キロ圏内に入っており、22日に町が開いた説明会で学校側はこの方針に同意したという。
 教員は「生徒たちは愛情を込めて日々丁寧に牛たちをブラッシングし、餌をやってきた。(ワクチン接種・殺処分は)あまりにも酷」と声を落とす。
 同校では乳牛も飼育しており、寮の食事の際は、生徒たち自身が搾った牛乳が食卓に上っていた。口蹄疫発生以来、それも途絶えている。「牛は一生懸命世話をすればするほど、いい牛に育つ、正直な生き物。殺処分されたら、生徒たちはどれほど心を痛めることか……」
 県が18日に出した非常事態宣言では、畜産農家同士の接触を控える旨の要請が盛り込まれている。農場から農場への人の出入りを制限することで、ウイルスが運ばれるリスクを抑えようとの趣旨だ。
 全寮制の同校には畜産農家の子どもも在籍する。生徒たちは同校の牧場への出入りを控えているが、念には念を入れて自主的に、週末も帰省せずに寮に残る生徒が多いという。高千穂町出身の3年、田崎勇樹さん(17)も帰省を控えており、電話取材に「とにかく早く終息してほしい」と声を絞り出すように話した。
 「生徒たちが、自分たちにできることを自発的に考えて行動している。口蹄疫の発生以降、『こんなに大人だったのか』と感心させられてばかりです」と教員は語る。
■高原では出入り時に消毒
 牛を飼育している県内の高校のなかで唯一、校舎と同一敷地内に畜舎がある県立高原高校(高原町)。県によると23日現在、同校は移動制限区域や搬出制限区域(発生農場から半径10~20キロ圏内)には含まれていないが、上池恭広教頭は電話取材に対し「感染が出たり、ワクチン接種の対象になったりしたらと思うと、非常に怖い。生徒も教職員も不安でいっぱいです」と話した。
 約40頭の牛と約100頭の豚を飼育する同校では、生徒は畜舎に近づかないよう規制し、学校に出入りする際には消毒を徹底している。
 とくに不安なのは、消毒がどの程度有効なのか、どういう方法での消毒が一番効果的なのかが見えないことだ。
 上池教頭は「ウイルスは人が運ぶのか、風に乗っていくのか。消毒ではどの程度、ウイルスを死滅させられるのか。それが分からないと効果的な防疫はできない。国や県などは、生徒たちにもわかりやすい図入りで、消毒マニュアルを示してほしい」と言う。(松井望美)

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