広島女児殺害、精神鑑定請求を却下 差し戻し控訴審
asahi.com 2010年4月15日1時7分
広島市安芸区で2005年11月、小学1年の木下あいりさん(当時7)が殺害された事件で、殺人など四つの罪に問われているペルー国籍のホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(38)=一審で無期懲役=について、広島高裁(竹田隆裁判長)は14日、8日の差し戻し控訴審で弁護側が求めた精神鑑定と情状鑑定を「必要性がない」と却下する決定をした。弁護側は異議を申し立てる方針だが、6月1日の次回公判で結審する見通しが高まった。
控訴審では、検察側が改めて死刑を求め、弁護側は、犯行当時、被告が心神喪失状態だったとして、殺人と強制わいせつ致死罪について無罪を主張し、減刑を求めている。
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遠い解明 遺族苦悩
朝日新聞〈MY TOWN広島〉2010年04月09日
広島高裁で8日始まった、木下あいりさん(当時7)殺害事件の差し戻し控訴審。2005年11月の事件発生から4年余りが経過した。長引く裁判に翻弄(ほん・ろう)される父の建一さん(43)は、「真相解明」と「早期終結」の思いのはざまで苦悩する。(小俣勇貴、村形勘樹)
「裁判も今回で4回目。つらい思いが、裁判が終わるまで続くと思うと非常に残念だ」。意見陳述の冒頭、建一さんは胸中を明かした。
地裁に審理を差し戻した08年12月の広島高裁判決後、長期化は覚悟したが、審理が尽くされることに望みをつないだ。だが、ヤギ被告の上告による最高裁での審理では司法手続きの是非だけが争点となり、決着は先送りされた。
1月に久しぶりにあいりさんの夢を見たという。所属する陸上自衛隊の隊員らで編成された国際緊急医療援助隊の一員として、大地震が起きたハイチに派遣され、入国した日の夜だった。自宅の玄関で、出勤する建一さんに手を振って見送るあいりさんに会った。目が覚め、がっかりした。「『みんなを励ましてあげてね』と言っていたのかな」と少しだけほほえんだ。
3月中旬、弁護士を通じてヤギ被告から直筆の謝罪文が届いた。「心から許していただきたいとお願いします」「あいりさん、ご家族のために祈り続けることが、私ができる唯一のこと」。スペイン語で書かれた手紙の文面は、事件をひとごとのように語っているとしか思えなかった。この日の法廷でも、裁判長から再三の警告があったのに、不規則な発言を繰り返した。
建一さんは裁判での真相解明について「(真実は)死んだときに分かるのかな。あいりに会って、話すことができるので、死んだ時のことが非常に楽しみ」とあきらめの気持ちさえ口にする。
一方、弁護団の久保豊年(ほう・ねん)弁護士は閉廷後、広島市中区の広島弁護士会館で記者会見。法廷では、目を充血させ、奇声をあげるなど興奮した様子のヤギ被告を何度もなだめた。被告は「木下さんに土下座して謝りたい」と訴えていたと話した。
さらに、3月中旬、建一さんに、弁護団との面会を求める手紙を送ったことも明かした。被告と会って言い分を聞いてもらえるよう伝えるつもりだったというが、断りの手紙が届いたという。久保弁護士は「木下さんは真実を話していないと疑っているが、被告は『うそはついていない。法廷で述べたことがすべて真実だということを信じてほしい』と話している」と強調し、改めて争う構えをみせた。
■広島小1女児殺害事件の経過
2005年11月22日 広島市安芸区で、木下あいりさん(当時7)の遺体が段ボール箱に入った状態で発見される
11月30日 広島県警が、三重県鈴鹿市でヤギ被告を殺人と死体遺棄の容疑で逮捕
12月21日 広島地検がヤギ被告を殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄の罪で起訴
06年3月15日 「公判前整理手続き」が広島地裁で始まる。5月まで計8回開かれる
5月15日 広島地裁で初公判。5日連続開廷の集中審理(証人尋問や被告人質問など証拠調べ終了)
6月9日 結審。検察側が死刑を求刑
7月4日 広島地裁が無期懲役を言い渡す。14日までに検察側、弁護側の双方が控訴
07年11月8日 広島高裁で控訴審始まる
08年12月9日 広島高裁が、審理不尽を理由に一審判決を破棄し、地裁に審理を差し戻す。12日、弁護側が上告
09年2月10日 最高裁が上告を受理
9月11日 最高裁が、検察側、弁護側双方の主張を聞く弁論を開く
10月16日 「広島高裁が刑事訴訟法の解釈を誤った」として、最高裁が審理を同高裁に差し戻す
10年4月8日 広島高裁で差し戻し控訴審が始まる
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〈来栖の独白〉
「当事者が立証しようとしていない点まで立証を促す義務はない」として2審広島高裁判決を破棄、審理を高裁に差し戻し、司法制度改革(裁判員制度・拙速)に逆行した楢崎さんを、所長とはいえ山口の家裁へ「異動」させた最高裁であった。
その意を酌むなら、差し戻し審が精神鑑定など行うはずもない。手間隙(精密司法)かけず、とっとと(核心司法)、時代の流れ(厳罰潮流)に即した判決で一丁上がりってところでなければよいが。
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◇広島女児殺害事件
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◇広島女児殺害 最高裁=当事者が立証しようとしていない点まで立証を促す義務はない2009.10.16
◆ 光市母子殺害事件(差戻し)・広島女児殺害事件控訴審裁判長だった楢崎康英氏が山口家裁所長・・・(10月14日14時1分配信 毎日新聞) 山口家庭裁判所(山口市)に今月1日着任した楢崎康英所長(60)が13日、着任会見を行った・・・
◆ 〔広島女児殺害事件 控訴審 判決文要旨〕2008年12月9日 広島高裁 楢崎康英裁判長 言渡し