中日新聞【社説】
天皇特例会見 親善も傷つけた不手際
2009年12月15日
中国の習近平国家副主席と天皇陛下との会見がきょう行われる。一カ月前までに申請するという通常の手続きから外れて設定された会見は、天皇の政治利用との批判を招き、日中友好をも傷つけた。
天皇と外国賓客との会見を設定するには一カ月以上前に申請する「一カ月ルール」があるという。
このルールは、会見が増え続ける状況を受けて一九九五年に文書化され、天皇陛下が前立腺がんの手術を受けられた翌年の二〇〇四年以降は厳格に適用されてきた。陛下の年齢や健康に配慮し、負担を軽くするためだ。
今回、中国政府の要望を受けた外務省が打診したのは十一月二十六日。宮内庁はルール上、受け入れられない旨を回答したが、平野博文官房長官は羽毛田信吾宮内庁長官に今月七日と十日の二回、電話で「日中関係は重要」「首相の指示」などと迫ったという。
首相指示に、十日から民主党国会議員百四十人以上を引き連れて訪中した小沢一郎幹事長の意向が反映された可能性も指摘される。
習氏は胡錦濤主席の最有力後継者と目される。胡主席が副主席当時に来日した際も陛下と会見しており、習氏との会見は日中親善に有意義だろう。
しかし、鳩山政権がルールを破ってまで会見を実現させたことは会見の意義を減じさせないか。
羽毛田氏は記者会見で「賓客との会見は国の大小や政治的重要性などでは差をつけないで実施されてきた」と強調した。
時の政権によって天皇の会見が恣意(しい)的に扱われれば、憲法で「国政に関する権能を有しない」と定められた象徴天皇を政治利用することになりかねない。
鳩山由紀夫首相は「一カ月を数日間切れば、しゃくし定規でダメだというのは、国際親善の意味で正しいことなのか」と説明したが、政治利用との疑念が持たれるようなことは厳に慎むべきだった。
会見設定をめぐり、実現を望む中国側の強い意向も明らかになった。日本政府が中国側の姿勢に屈した形に映れば、首相の狙いとは裏腹に、日本国民の対中感情を悪化させ、日中友好を損ねることになりかねない。
首相官邸・小沢氏側と羽毛田氏との軋轢(あつれき)が表面化し、混乱した印象を与えていることも残念だ。
政権発足から三カ月足らず。外交に不慣れなことは理解するにしても、象徴天皇制など憲法の根幹にかかわる部分で「未熟な政治」は断じて許されるものではない。
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「宮内庁長官は憲法を理解していない」 小沢氏、「特例会見」問題で反論
J-CASTニュース 12月14日20時22分
さながら「小沢一郎の憲法講座」のようだった。天皇陛下と中国の習近平副主席の「特例会見」について「天皇の政治利用ではないか」という批判が起きていることについて、民主党の小沢一郎幹事長は2009年12月14日の会見で憲法を根拠に反論した。
「日本国憲法をもう一度、読み直しなさい」と記者に言いながら、「天皇陛下の国事行為は、国民が選んだ内閣の助言と承認で行われるんだ。(宮内庁長官の懸念表明は)日本国憲法を理解していない人間の発言としか思えない」と強く批判した。
「内閣方針に反対なら、辞表を提出したのちに言うべき」
天皇陛下と外国要人との会見は、陛下の健康上の理由から1か月前までに申請するという内規がある。しかし習副主席との会見はこの内規に反して認められ、12月15日に実施されることになった。特例措置について、宮内庁の羽毛田信吾長官は「二度とこういうことがあってほしくない」と会見で述べ、天皇陛下の政治利用への懸念を表明。マスコミや野党から批判が起きただけでなく、民主党内からも異論が出ている。
ところがこのような批判に対して、中韓訪問から帰国したばかりの小沢幹事長は、憲法を盾に真っ向から反論した。「1か月ルール」に反していることを指摘した共同通信の記者に向かって、小沢幹事長は
「君は日本国憲法を読んでいるかね? 天皇の行為はなんて書いてある?」
と逆質問。記者が戸惑いながら「国事行為…」と答えると、さらに、
「どんなふうに書いてある、憲法に?」
とたたみかけた。共同の記者は答えられない。小沢幹事長は得意な様子で、
「国事行為は内閣の助言と承認で行われるんだよ」
と「正解」を口にして、宮内庁長官への批判を展開した。
「天皇陛下の行為は、国民が選んだ内閣の助言と承認で行われるんだ。それが日本国憲法の理念であり、本旨なんだ。だから、なんとかいう宮内庁の役人がどうだこうだ言ったそうだけれども、まったく日本国憲法、民主主義というものを理解していない人間の発言としか思えない。ちょっと私には信じられない」
小沢幹事長が法律や制度の知識を使って記者を「不勉強だ」となじりながら、自らの主張を展開するのは記者会見でおなじみの光景だが、今日はボルテージが特に高い。批判はさらに続いた。
「内閣の一部局の一役人が内閣の決定したことについて、会見して方針をどうだこうだと言うのは、日本国憲法の精神・理念や民主主義を理解していないと同時に、もしどうしても反対なら、辞表を提出したのちに言うべきだ」
「政治利用」批判にも、憲法を根拠に反論
「1か月ルール」に反して特例が認められた点についても、
「宮内庁の役人が作ったからといって、金科玉条で絶対だなんて、そんな馬鹿な話があるか。天皇陛下ご自身に聞いてみたら、『手違いで遅れたかもしれないけれども会いましょう』と必ずそうおっしゃると思うよ」
と述べ、今回の特例措置は間違っていないという見解を示した。
続いて、読売新聞の記者が「政治利用という批判があるが…」とたずねると、
「君も、憲法をもう一度、読み直しなさい」
と再び憲法を持ち出して反論した。
「みんな何をするにしたって、天皇陛下の国事行為は内閣の助言と承認で行うと、憲法にちゃんと書いてあるでしょうが。それを政治利用だといったら、なんにも天皇陛下はできない。内閣に助言も承認も求めないで、天皇陛下が個人で勝手にやるの? そうじゃないでしょ?」
そう強弁したが、記者もなんとか食い下がる。今回の特例措置を、小沢幹事長が平野博文官房長官に要請したと報道されている点について「事実なのか」と質問すると、
「私が、習近平副主席を天皇陛下とお会いさせるべきだとか、させるべきでないということを言ったような事実はありません」
ときっぱり否定した。
こういう視点も有ります。
長年、中国人と中国語で深く付き合い、ビジネスをやって来た者の経験からして、論理だけ或いは情だけの胆力の無い人間では、中国の要人を動かせない、ということだけは言い切れます。
小沢さんがどうかは、同氏にも胡錦涛さんにも会って話をしたことが無いので分りませんが、外務省チャイナスクールの木っ端役人に、その胆力が備わっていないことだけは、自信を持って断言出来ます。
ビデオのご案内、ありがとう。一国の要人の来日がにわかに予定に組まれる、とは考え難いですね。外務省が何かを意図、或は画策したものかどうか分かりませんが。
議論が、天皇さんの政治利用(か否か)、というところに集中してしまいましたね。ただ、きっかけ・経緯はどうであれ、天皇制については、どこかで考えねばならない一事だと思います。
何一つ権利付与のない天皇さん。結婚何十周年だったかの会見で記者に「一番幸せだったことは」と質問され、「皇后と結婚したことです」と答えられた。こんないじらしい哀れな男がいる。自分のやりたいこと、言いたいこと、行きたいところ・・・、一切の欲求を断念しなければならない非人間的な制度、これは残酷です。
それから、事業仕分けごっこですが、最優先で改革しなければならないところは、官僚司法と外務省ではないでしょうか。聖域として手をつけられない。
なぜだか多くの人が最高裁の無謬性を信じて疑わない。
が、ここ(司法官僚)こそ悪の中枢、というふうに新藤宗幸さんは言います。
また、外務省の最大の悪はその給与体系だ、と佐藤優さんは言っていますね。外国の大使館へちょっと赴任して帰ってくると、簡単にマンション程度が買える。キャリア外務官僚がスイスへ行き、10年間で家を4軒も建てた、なんて話がある。
今回の事業仕分けでほんとに困窮を余儀なくされるのは、学校や地域、文化芸術といった現場です。思いやり予算っていったって、実際に削られて困るのはそこで働く日本人じゃないですか。
他の“お飾り的”官職とは一線を画す、重大、深刻な国家権力を行使する「特別な認証官」という意識が、司法官僚達の内在論理ではないのか(→ 強烈な正義感/使命感⇔暴走)、と神保哲生氏が指摘していました。
天皇と司法.....。 こりゃ、一筋縄ではいかない、大変なテーマです。