後期高齢者  国民健康保険(国保)脱退させられ、市町村の施策からも“締め出し” 地方の医師会が反乱

2008-04-29 | 社会

国保から移行で75歳以上は対象外 保養施設割引や人間ドック助成…
2008年4月29日 朝刊

75歳以上は助成の対象外となったことを知らせる張り紙=三重県桑名市の「名古屋市休養温泉ホーム松ケ島」で
 
 75歳以上を対象に始まった後期高齢者(長寿)医療制度で、市町村の国民健康保険(国保)から移行したお年寄りが、保養施設の割引や人間ドックの助成といった国保加入者向けのさまざまなサービスが利用できないことになった。国保脱退に伴い、市町村が独自に実施するこうした施策からも“締め出し”を受けたためで、困惑が広がっている。

 「そんなばかな話があるかと。同じ名古屋市の高齢者なのに」

 三重県桑名市にある名古屋市の保養施設「休養温泉ホーム松ケ島」。同市南区の男性(85)は4月に入って初めて利用したとき、割引対象から外されたと知った。近所の高齢者同士で年数回の利用を楽しみにしてきた。

 料金は60歳以上なら1泊2食付きで6000円。名古屋市国保の加入者は、保険証を示せば1000円の助成がある。ところが、75歳以上は通常料金を請求されることになった。新制度ではこうした割引はない。

 「お役所仕事で冷たい。高齢者がどう困るのかなんて考えちゃいない。私らが国保脱退を望んだわけじゃないのに、悔しくて」

 昨年度は約7400人が助成を受け、4割は75歳以上だった。施設には毎日「なぜ割引されないのか」と問い合わせが相次ぐ。

 市保険年金課は「あくまで国保に加入する人の健康増進が目的だから」と説明する。

 一方、福井市では75歳以上が人間ドックの助成を利用できなくなった。通常は4万数千円かかる費用が1万円程度の負担で済むお得な制度。「われわれは『死ね』ということか」。対象外となったお年寄りが市の担当課に詰め寄った。

 岐阜県関市でも「脳ドック」が対象外に。長野県飯田市では退院後に自宅療養する際、電動ベッドや車いすなどのレンタル料について9割の助成を受けられる制度があるが、利用できなくなった。

 市町村の間では、救済措置を取る動きも。愛知県豊橋市は近く後期高齢者医療制度の対象者向けにも脳、肺、心臓ドックの助成制度を設ける。市介護医療課は「年齢でサービスに格差があるのはよくないと判断した」としている。

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<後期高齢者医療制度>地方の医師会が反乱
4月29日20時10分配信 毎日新聞


 後期高齢者医療制度がスタートし、約1カ月。新制度の柱の一つ、「後期高齢者診療料」に反対する動きが全国20以上の府県医師会に広がっている。厚生労働省は鎮静化に躍起で、日本医師会も同診療料の導入を認めた手前、「身内」の説得に乗り出しているが、地方の反乱はやみそうにない。

 「高齢者の医療を制限する萎縮(いしゅく)医療だ」。反対派の急先鋒(せんぽう)、茨城県医師会(原中勝征会長)は後期高齢者診療料にとどまらず、新制度自体の撤廃を求めている。15日の関東甲信越医師会連合会で原中氏は、反対運動への協力を訴えた。

 新制度で厚労省は、糖尿病などの慢性病を抱える75歳以上の人を、かかりつけの「高齢者担当医」に診察させる方針を打ち出した。患者の年間治療計画を作成し、継続的に診察した担当医は月に1度、後期高齢者診療料(月6000円、患者の負担は原則600円)を算定できる。ただ、一部の検査や治療は何度しても6000円しか払わない「定額制」で、その狙いは過剰診療をなくし、12兆円に及ぶ老人医療費を抑えることにある。

 ただ、複数の地方医師会は「必要な治療をしない利益優先の医師が現れる」との危惧(きぐ)を表明。愛知、大阪、兵庫などの各府県医師会も会員に自粛や慎重な態度を求める通知を出したほか、下部組織の郡市医師会単位でも拒否が広がっている。

 地方医師会は、高齢者担当医が同診療料を算定すれば、他の医療機関が同じ患者を診ても、同診療料を請求できない点にも強く反発している。医師による患者の囲い込みが進み、患者から自由に医療機関を選ぶ権限を奪う、というわけだ。

 これに対し、厚労省は「後期高齢者診療料を算定するかしないか、患者がどこの医療機関にかかるかは自由。誤解に基づく反対だ」(保険局医療課)と説明しているが、27日の衆院山口2区補選で自民党候補が敗れた要因の一つは新制度にあるとみなされ、与党内に制度見直し論が起きていることも同省への逆風となっている。【吉田啓志】 

最終更新:4月29日21時28分


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