【財界トップに聞く】御手洗日本経団連会長・岡村日本商工会議所会頭・桜井経済同友会代表幹事

2010-01-04 | 社会

【財界トップに聞く】(1)御手洗冨士夫日本経団連会長「アジアとの関係強化を推進」
産経ニュース2010.1.4 19:03
 世界経済の回復が進むとの期待から4日の東京株式市場では株高機運に包まれた仕事始めとなったが、物価下落が企業収益や賃金、雇用をむしばむデフレがいまも続き、日本経済は依然として景気の「二番底」に陥る懸念をぬぐいきれないままだ。本格的な回復軌道を描くためには何が必要なのか、財界3団体のトップに聞いた。

 --今年の景気動向は
 「日本の景気は自律的な回復軌道に戻っておらず、デフレも進行中だ。雇用や所得の状況が依然として悪く、消費も住宅も需要が弱くなっている。設備の過剰感もかなりある。今年の前半は引き続き厳しいが、中国やインドなど、世界経済の回復に助けられるだろう。子ども手当などの家計支援策もあるので、今年の後半には持ち直してくるのではないか」
 ――景気がさらに悪化する「二番底」懸念がぬぐえない
 「自律的な景気回復に戻るまでは税財政や金融などあらゆる政策を総動員した対策を切れ目なく実行する必要がある。日銀の金融緩和政策は、政府と同じ現状認識のもとで行われ、急激な円高や株安が一服した。今後も経済状況をみながら、バランスのとれた形でやってもらいたい」
 ――成長戦略はどうあるべきか
 「緊急経済対策は景気の下支えを重視している点で評価しているが、持続的な経済成長に結びつけるには中長期的な戦略が必要だ。アジアへの事業を強化するため、日中韓の自由貿易協定(FTA)を進めないといけないし、資源や環境・エネルギー部門、医療や保育といった少子高齢化への対応も求められる。情報通信技術(ICT)の活用、道州制の導入も求めたい」
 ――今年3月には東京で初のアジアビジネスサミットを開く
 「経団連は長年にわたって東アジアを中心に経済連携協定(EPA)の締結を促し、ネットワークと人脈を築いてきた。アジアビジネスサミットはその集大成で、中韓など10カ国・地域の参加が決まっている。サミットでは、2国間によるEPAの質の向上だけでなく、アジア経済圏を統合する機運を高めたい」
 ――5月に2期4年の会長任期が終わる
 「3年半の間に目まぐるしく政権が変わったが、官民一体となって資源外交やEPAの推進などに取り組んだ。経団連の要望は鳩山政権下でもほぼ実現した。経団連はこれからも政策提言集団であり続ける」
 ■みたらい・ふじお 中大法卒。昭和36年キヤノンカメラ(現・キヤノン)。キヤノンUSA社長、本社社長を経て平成18年会長。同年5月日本経団連会長。74歳。大分県出身。
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【財界トップに聞く】(2)岡村正日本商工会議所会頭「科学技術創造立国で坂の上の雲を目指せ」2010.1.4 19:04
 「中小企業の中でも、負債金額5千万円以下の小さい企業の倒産が増えており、非常に厳しい状況にある。デフレと円高で先行きの見通しは悲観論が支配的になっており、1、2月はより悪くなるのではと心配している。鳩山政権には、景気がさらに悪化する二番底への懸念があることを念頭に経済運営、政権運営をしてほしい」
 --政府の中小企業対策をどうみる
 「緊急経済対策には雇用調整助成金の要件緩和が盛り込まれた。中小企業等金融円滑化法(モラトリアム法)もあり、金融面での対策は打たれている。われわれの要望を聞いてもらった。ただ、雇用調整助成金の手続きには時間がかかるので、手続きのスピードアップを求めたい」
 --科学技術の大切さを指摘してきたが
 「資源のない日本は、人と汗で産業を育てなければならないのに、今は目指すべき目標である『坂の上の雲』がなく、元気がない。科学技術創造立国を目指し、成長戦略を策定すべきだ。すべての技術で日本が世界一になることはできない。しかし、日本には、21世紀に必要とされる環境問題やIT、ライフサイエンス(生命科学)の技術基盤があるので、これらの技術を世界一にしてほしい。そうなれば、日本が元気になると思う」
 --1期3年の任期が10月に終わる
 「就任時に『個が光るイノベーション』の実現を掲げ、商工会議所でビジョンをつくった。現在、イノベーションを起こしながら地域をよくする動きが進みつつある。また、中小企業の国際化への戦略と生産性の向上にも取り組んできた」
 --具体的な成果は
 「昨年は『ジャパンブランド』の国際展示会をニューヨークとパリで開くことができたし、日韓の連携を強化することもできた。3月には中国にミッションを送り、中小企業の中国進出に向けた話し合いを行う。生産性向上についてはIT教育を行ってきたが、成果を出すのは今後の課題だ」
 おかむら・ただし 東大法卒。昭和37年東芝。情報処理・制御システム事業本部長、社長、会長を経て平成21年相談役。19年11月日本商工会議所会頭。71歳。東京都出身。
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【財界トップに聞く】(3完)桜井正光経済同友会代表幹事「企業は成熟社会のニーズをつかめ
2010.1.4 19:14
 --景気の先行きは
 「かなり持ち直してきているが、まだ問題はある。特にデフレと円高の問題が大きい。企業の設備稼働率も完全には戻っておらず、雇用、賃金の問題もある。先行きの見方は非常に慎重だ」
 --少子高齢化が進むなか、国内の需要には期待できない
 「日本国内の需要は非常に弱い。需給ギャップは35兆円もあり、デフレ解消には需要拡大しかない。子ども手当などで消費を刺激することも大事だが、それだけでは効果は弱い。企業が国民の本当に必要とするモノやサービスを供給することが大切だ。将来への不安から消費が進まない面も大きいので、年金、医療、介護などの社会保障制度を再構築する必要もある」
 --企業はどの分野の取り組みを強化すべきか
 「温暖化対策や資源、食糧を含めた環境分野、少子高齢化に向けた医療や介護、教育などだ。この分野での技術や商品、サービスの開発をもっと積極的にやらないといけない。本格的なエコ商品、高齢者が本当に必要とする商品やサービスなど、成熟社会にあわせた新たなニーズをつかめば企業の自律的な回復につながる」
 --企業と政府の関係はどうあるべきか
 「高度経済成長以降、政治は政治、経済は経済と分割されてきた感があるが、これからは政治と経済が両輪となるような動きがもっと求められる。企業は自律的な成長を目指すが、その一方で政府と協議し、必要な協力は求めないといけない。具体的には、開発投資への減税や、健全な競争を促す医療、介護などの分野での規制改革だ。政治と経済という両輪の組み合わせ方を模索する必要がある」
 --代表幹事として4月で丸3年となる
 「就任以来、政治と経済の変化が激しく、引き回された感じが強い。日本経済の回復、長期安定の経済成長に向け、環境変化を積極的にチャンスととらえ、企業が自律的に成長していく路線を明確にし、政府には健全な競争ができる環境づくりを求めていきたい」
 さくらい・まさみつ 早大第一理工卒。昭和41年リコー。リコーUKプロダクツ社長、本社研究開発本部長、社長を経て平成19年会長。同年4月経済同友会代表幹事。67歳。東京都出身。


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