雇用保険、迫る給付終了 (中日新聞2009年7月7日)

2009-07-08 | 社会

【雇用崩壊】
「帰国するか職探しか」ブラジル人悩む 雇用保険、迫る給付終了 
中日新聞2009年7月7日
 不況のあおりで、昨年末から年始にかけて大量に解雇されたブラジル人労働者の雇用保険の給付期間の終了が近づきつつある。自動車産業などで働く人たちがまとまって住む愛知県三河地方では、仕事を探しながら日本に残るか、日本以上に就職が難しい母国へ帰るか、厳しい選択を迫られている。
 約150世帯のブラジル人が暮らす同県岡崎市本宿町の県営住宅。タベラ・ジュオン・マントバニさん(50)は、4年間勤めた自動車部品会社を昨年9月に解雇された。別の会社で働いていた妻も12月に失業。ブラジル人学校に通わせていた15歳の男女の双子のうち、娘は親類に預けるため帰国、息子も2月に学校をやめさせた。
 マントバニさんの場合、雇用保険が給付されるのは本人があと1カ月、妻も3カ月。「給付が切れる前に職に就かないと、帰国するしかない」と嘆く。
 一方、ブラジル人約4000人が住む同県豊田市の保見団地。支援活動を続ける特定非営利活動法人(NPO法人)「保見ケ丘ラテンアメリカセンター」がブラジル人を対象に調査したところ168世帯から回答があり、収入がないと答えた世帯は131世帯。うち雇用保険受給は63世帯だった。代表理事の野元弘幸さんは「今後、雇用保険が切れるがどうしたらよいかという相談が増えそう」とみている。
 帰国を希望する日系人には4月から支援金が給付されており、活用するケースも増えている。2日現在で全国で4281件に上り、このうち愛知県が3割を占める。ただ、この制度を利用した人は原則として3年間、日本に再入国できず、ブラジルに帰っても失業率8・5%と厳しい雇用情勢が待ち受けるため「帰国は避けたい」というのがブラジル人たちの本音だ。
 草の根の支援も持ちこたえられなくなっている。岡崎ブラジル協会の呼び掛けで今年1月から始まった失業者への食料支給は資金に余裕がなくなり、6月中旬で打ち切りに追い込まれた。同協会代表の永井太郎さん(73)は、連日のように舞い込む相談に「職業訓練や日本語の学習に努めて」と言うのが精いっぱいだ。
◆日本人も同じ、「終了」今後ピーク
 雇用保険の条件に日本人と外国人との区別はなく、給付期間終了が迫る状況は日本人にとっても同じだ。
 愛知労働局によると、給付日数は加入期間や年齢によって違いはあるが90~120日間が一般的。4月以降は解雇された人を対象に解雇後に就職活動をしていることなどを条件に60日延長が認められた。給付期間を終える人数は6月ごろから増えており、今後ピークを迎えると予想する。
 愛知県内では、雇用保険給付の決定件数が、昨年12月に7295件と前年同月比で57%の増加。さらに今年1月、件数自体が1万4383件と前月から倍増した。5月まで1万6000~2万件台で推移しており、同労働局は「製造業を中心とした非正規社員の削減が影響している」と分析する。
 給付期間が終わった人の救済措置として、職業訓練を無料で受けられる制度があるが、生活面での金銭的支援はなくなる。


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