新型コロナから犬や猫を守るために「絶対にしてはいけない」たった1つのこと 2020/4/11

2020-04-11 | 社会

新型コロナから犬や猫を守るために「絶対にしてはいけない」たった1つのこと
  清談社  2020/4/11 ライフ, ライフスタイル, 社会 

 新型コロナウイルスはヒトからヒトへ感染するとされてきた。ところが、いま世界で動物への感染事例が相次いでいる。3月中旬に香港で犬への感染が確認されたのを皮切りに、3月終わりにはベルギーで飼い主から猫へ感染、4月初めにはニューヨークの動物園で飼育されているトラにも陽性反応が出たという。
 もしヒトから動物に感染するなら、犬や猫などのペットを飼っている飼い主はさらに心配の種が増えることになる。新型コロナは本当に動物にも感染するのか。野村獣医科Vセンターの院長である獣医師の野村潤一郎さんに話を聞いた。(取材・文=押尾ダン/清談社)

■本来、人間のウイルスは犬や猫に感染しないが……
──4月9日現在、世界各地で犬、猫、トラと、少数の動物への感染事例が報告されています。実際のところ、コロナウイルスは人間から動物にも感染するのでしょうか。
野村医師(以下、野村) 新型コロナは、まだ本当の正体も明らかになっていない未知のウイルスです。正直にいえば、動物については何もわかっていないに等しい状態ですね。世界中で多くの人が亡くなり、日本では政府から緊急事態宣言が出された。そういう状況では、動物に関する研究はどうしても優先順位が低くなってしまい、後回しにならざるをえないのです。
──研究が進んでいないということは、現時点の可能性としてゼロではない?
野村 ウイルスというのは、「宿主特異性」といって、本来は鍵と鍵穴の関係が厳密です。たとえば、犬の代表的な感染症にジステンパーがありますが、ジステンパーウイルスが人間や猫にうつったという話は聞いたことがありません。猫には伝染性鼻気管炎というヘルペスウイルスの病気がありますが、これが人間や犬にうつることもない。
 口唇に水ぶくれができる人間のヘルペスも、やはり犬や猫にうつった話は聞いたことがありません。つまり、犬のウイルスは犬だけ、猫のウイルスは猫だけ、人間のウイルスは人間だけというように、ウイルスは本来、感染する相手が決まっています。ところが、ごく稀に、一部のウイルスが感受性の高い異種動物へ感染することがあるのです。

■「人間から犬に感染することはまずない」理由
──具体的に、どういうケースがあるのでしょうか。
野村 たとえば、フェレットは犬のジステンパーにかかり、人間のインフルエンザにも感染します。イタチやアザラシもジステンパーにかかる。先ほど言ったように、ウイルスは感染する相手が決まっていますが、これまで出会わなかっただけだったり、たまたま条件が合ったりすると、本来の相手とは異なる動物へ例外的に感染するんですね。
──人間から動物へと新型コロナが感染する可能性を排除できないことになります。
野村 新型コロナは、武漢の市場で売られていた野生動物、コウモリやセンザンコウなどを食べたことから広まったといわれています。動物から人間にウイルスが感染したとすれば、人間から動物に感染する可能性もゼロではない。ただし、犬はフリー(非感受性)です。人間から犬に感染することはまずないと思います。
──なぜ犬は大丈夫なのですか?
野村 ヨーロッパで感染者数が拡大していますよね。もし本当に新型コロナが犬に感染するなら、いまごろ大問題になっているでしょう。なぜなら、欧州諸国には愛犬国家が多いからです。ドイツなどでは病院やレストラン、地下鉄へも犬同伴が許され、子どもはダメでも犬なら入ってOKという店もあります。当然、畜犬登録数も非常に多い。
 犬に感染する事実があるなら、ヨーロッパは大変なことになっていないとおかしいはずです。しかし、そういう話は聞きません。香港では17歳のポメラニアンに弱い陽性反応が出て、翌日に死んでしまったとのことですが、どこまで信憑性のある話なのか……。

■犬や猫の体の表面に付着したウイルスに注意
──猫はどうですか? ベルギーで飼い主から猫への感染事例が報告されています。
野村 猫に関してはそこまではっきりしたことはいえません。ただ、猫には人間とは別の症状の出る猫コロナウイルスがあり、純血種などには不顕性感染(症状がまったく認められない感染)のコロナをもつ個体が多いのです。そういう猫が検査キットに反応した可能性が考えられるかもしれません。トラにも同じことがいえます。
 そもそも犬や猫よりも豚や鳥のほうが人間と共通するウイルスが多いのです。人間に広がるウイルスで問題になるのはいつも豚や鳥です。それがなぜ今回は犬や猫なのか。もしかすると、そばにいる人が感染したことで犬や猫の体にウイルスが付着しただけかもしれません。そういう形でヒトから動物へ、動物からヒトへと広がる可能性はあります。

■犬の散歩中に「撫でてもいいですか?」はNG
──むしろ犬や猫の体の表面に付着したウイルスにこそ気をつけるべきだと。
野村 いま各施設が店舗のドアやエレベータのボタンなど、多くの人が触れるものを神経質に消毒しています。しかし、意外と動物の体には注意が払われていません。飼い主さんには、犬を撫で回すのはもちろんのこと、一緒に寝たりお風呂に入ったりと、いつも犬とくっついて過ごす人が多い。いわば濃厚接触しているわけです。
 もし飼い主さんが感染者だったとすると、犬の体表には当然ウイルスがつきます。その犬を散歩させているときに誰かが体に触れば、その人の手にもウイルスが付着します。散歩中に犬好きの人から「撫でてもいいですか?」と言われて触らせることは日常茶飯事です。その点については、しばらくは触る側も気をつけたほうがいいでしょう。

■人類と犬猫の長い歴史は共通の病気がなかった
──犬や猫の体にウイルスがつく可能性というのは盲点でした。
野村 しかし、私は犬や猫のコロナ感染についてそれほど神経質になる必要はないと思っています。豚や鳥と比べて、犬も猫もはるか昔から人間と一緒にいます。人類との歴史は、猫が5000年、犬は1万年というのが定説ですが、12万5000年と主張する研究者もいます。人類の友人、パートナーとして、長い間ずっと手伝ってきてくれたのです。
 なぜそれだけ長い年月にわたり一緒にいることが可能だったのかというと、お互いに共通する病気がないからです。それに対して、発生源とされるコウモリやセンザンコウは人類と交わった歴史がありません。それらの動物と犬や猫を同列に考えるのは間違いです。不安に思っている飼い主さんも多いでしょうが、過剰に心配する必要はないと思います。

 ◎上記事は[文春オンライン]からの転載・引用です


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