田中角栄「彼らの目の黒いうちにこの問題を片付けたい」=毛沢東と周恩来

2022-12-02 | 政治

中日春秋
 2022年12月2日
 一九七二年、日中国交正常化交渉を控えた田中角栄首相は、中国建国の父・毛沢東とその右腕・周恩来の両氏を「革命第一世代」と呼び、自身の側近にこう語った。「彼らの目の黒いうちにこの問題を片付けたい。日本企業でも第二、第三世代になると社内の意見が割れて大変だろう。戦後補償の問題もある」(前野雅弥著『田中角栄のふろしき 首相秘書官の証言』)
▼実際に、毛氏らは国内の反発を抑えて抗日戦争の賠償請求を棄(す)て復交を決める。中ソ対立も考え、日本に寛容であろうとした
▼第一世代と話をつけておいて良かったと思わせた後世の対日強硬派が逝った。江沢民・元国家主席。第二世代の鄧小平氏に続く第三世代である
▼抗日戦勝利を強調する愛国教育に力を入れ、民の反日感情は高まった。訪日時の宮中晩餐(ばんさん)会でも歴史問題に言及。民に銃を向けた天安門事件やソ連などの共産政権崩壊で中国共産党の権威が揺らぐ中、自身の権力維持にも「反日」が必要だったらしい
▼角栄氏にも、自民党総裁選で親中派を取り込もうと国交正常化交渉を掲げ、首相の座を射止めた経緯がある。一方で、中国大陸への出征経験から平和への思いも。病気で内地に送還されたが「一度も人に銃を向けなくて済んだ。幸運なことだった」と常々語っていた
▼半世紀前に汗をかいた先人の思いを心に留めるべきは、先方だけでもない。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です


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