死刑 終わらぬ議論 バチカンは反対表明 相次ぐテロに揺れる欧州 仏など復活を望む声 2018/8/6

2018-08-07 | 死刑/重刑(国際)

死刑 終わらぬ議論 バチカンは反対表明 相次ぐテロに揺れる欧州 仏など復活を望む声
 中日新聞 夕刊 2018/8/6 Mon
 カトリック教会が教えを解説する教理問答を改訂し、死刑反対の立場を明確にした。日本では7月にオウム真理教・元教団代表の麻原彰晃元死刑囚=本名・松本智津夫=ら13人の死刑が執行され、世界に衝撃を与えたばかり。国際的に死刑廃止は広がる一方だが、欧州では相次ぐテロを受けて復活を望む声も増えるなど、死刑を巡る議論は続く。(パリ・竹田佳彦)
 「死刑は残酷かつ非人道的で、侮辱的な刑罰。誤審の可能性もある」。ローマ法王フランシスコは改訂にあたって指摘した。
 見直しは2代前のヨハネ・パウロ2世らも模索したが、従来の教えとの整合性から教会内で慎重な意見が根強かった。「重大な罪を犯しても人間の尊厳は奪えない」との意識が広まる中で、ようやく実現した。
 人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、昨年末時点で142の国・地域が一部を含む廃止か執行停止をしている。経済協力開発機構(OECD)加盟36ヵ国で、死刑を残すのは日本と米国だけだ。
 廃止に先鞭をつけた欧州では1982年、欧州人権条約で平時の廃止を規定。「人権は不可侵」との理由は、今回の法王の決定と通底する。欧州連合(EU)は全28ヵ国が撤廃し、廃止は加盟要件でもある。
 麻原元死刑囚らの執行後、EU駐日代表部は「いかなる状況下でも極刑の使用に強く明白に反対する」と表明。「究極の人権否定。処刑は正義の実現にはなりえない」(英紙ガーディアン)、「執行は死刑囚に当日朝に知らされる」(ロイター通信)など、欧州では批判的な見方が相次いだ。
 ただ、イスラム過激派によるテロの多発などで、再び極刑を求める声も強まっている。仏調査会社イプソスによると、2015年1月のパリの週刊紙襲撃事件後、復活を望む声は52%に。今年、EU内12ヵ国の若者(14~24歳)の約半数が復活を支持したとの調査結果もあった。
 一方、テロを受けても、死刑より更生を目指すのが諾威だ。11年、極右思想の男が、キャンプ中の政党の若者77人を殺害。国内外を震撼させたが、当時の首相は「暴力への反応はより民主主義的、人間的であるべきだ」と事件直後に語った。
 犠牲者の仲間の党員はツイッターに書き込んだ。「一人の男性がこれほどの憎悪を示せたのです。社会全体がどれほど大きな愛を示せるか考えてみてください」。男は最高刑の禁固21年で服役している。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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カトリック、死刑反対を明記 ローマ法王、教理問答を改訂
2018年8月3日 朝刊
 【パリ=竹田佳彦】ローマ法王フランシスコがカトリック教会の教理問答を改訂し、死刑は「容認できない」と全面的な反対を明記したことが二日、明らかになった。ローマ法王庁(バチカン)が発表した。
 教理問答はキリスト教の教えを分かりやすく解説したもの。改訂された問答では「死刑は人間の不可侵性と尊厳への攻撃であり、容認できない」と記載。全世界での死刑制度廃止に向けて、教会が「確固たる態度をとる」と表明した。
 改訂前の一九九二年版の教理問答では「不当な侵犯者から効果的に人命を守ることが可能な唯一の道であるならば、死刑を科すことも排除されない」としていた。
 変更の理由について、法王は「長年、死刑の執行は重大な犯罪に対する適切な対応と考えられてきた」としつつ「今日では、たとえ最も重大な罪を犯しても人間の尊厳は奪えないと、より多くの人が考えるようになっている」と指摘。改訂は五月に行われた。
 法王自身はこれまでも死刑への反対を表明している。フランスのカトリック系新聞によると、昨年十月、ローマで開かれた司教の会議で「どれほど犯罪が重大でも容認できない」と演説していた。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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世界のこぼれ話 2018年8月3日 / 14:28 
カトリック教会は死刑に全面反対、バチカンが容認部分の教理変更 
 [バチカン市 2日 ロイター] - ローマ・カトリック教会は2日、信者に対する教理の手引きである「カテキズム」の文面を変更し、死刑はいかなる状況においても容認できないと明記した。
 カトリック教会は数世紀にわたり、極端なケースに関しては死刑を容認してきた。しかし、2005年に死去したヨハネ・パウロ2世の在任中に立場が変化し始めた。バチカン(ローマ法王庁)は今回の改定については、死刑に全面的に反対するローマ法王フランシスコの姿勢が反映されたと説明している。
 新たな教理は、「死刑は個人の不可侵性と尊厳に対する攻撃であり、容認できない」と述べ、教会は世界規模の死刑廃止に向け「決意を持って」働いていくとしている。
 この方針変更は、米国など死刑が合法とされている国から強い反発を招く公算が大きいとみられている。
 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、昨年死刑が宣告された国は53カ国、このうち23カ国で少なくとも993人が処刑された。執行が多かったのは、中国、イラン、サウジアラビア、イラク、パキスタンだった。
 米国の処刑は23人で、アムネスティは同国は米州で唯一死刑を執行している国だと付け加えた。
 欧州では、大半の国で死刑が禁止されており、昨年死刑を執行した国はベラルーシのみ。
 一方、昨年末までの時点で死刑を禁止した国は106カ国だった。 

 ◎上記事は[REUTERS]からの転載・引用です
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社説 中日新聞 2018年7月27日
オウムの死刑 制度の在り方の論議も
 オウム真理教事件の死刑囚六人の刑が執行され、事件の死刑執行はすべて終わった。だが、日弁連などは死刑制度の廃止を求める声明を出している。不透明な制度の在り方などの論議は必要である。
 七月だけでオウム事件の幹部ら十三人が処刑されたことに異様さを感じる人も多かろう。これほどの人数の死刑執行がなされたことがないからだ。法務相によっては宗教観などから執行命令書に署名しない人もいた。ある同省幹部が「平成の事件は平成のうちに」と語ったと伝えられる。
 来年の天皇陛下の退位を念頭に置いた発言だろうが、それにしてもなぜオウム死刑囚に限っての一斉処刑なのかの答えにはならない。前回は元代表の麻原彰晃元死刑囚やサリン製造役が中心で、今回は林泰男死刑囚ら地下鉄サリン事件の散布役が中心だった。
 法務省は一連の執行順序についての理由をほとんど説明しないでいる。不透明だといわざるを得ない。「執行は当然」という遺族の方々の心情はもっともである。それでも心神喪失が疑われたり、再審申し立てやその準備の段階にある場合はどう判断しているのか、それを国民に説明しない姿勢には疑問を持つ。
 死刑は国家権力の最大の行使でもあるからだ。一〇年の千葉景子法相時代は報道機関に刑場の公開をしたこともあるが、それ以降はそんな雰囲気も消えてしまった。
 近代刑事法は「あだ討ち」を否定し、犯罪への応報と更生をめざしている。かつ死刑囚の冤罪(えんざい)が明らかになった事例もある。
 世界百四十二カ国は死刑の廃止・停止であり、欧州連合(EU)に加盟するには、死刑廃止国であるのが条件になっている。OECD加盟国でも、死刑制度があるのは日本と韓国・米国だけだ。でも韓国はずっと執行がない事実上の廃止国である。米国も十九州が廃止、四州が停止を宣言している。つまり、死刑を忠実に実行しているのは日本だけなのだ。
 誤った司法判断なら取り返しの付かない究極の刑罰であり、究極の人権を奪う刑罰でもある。内閣府の世論調査では「死刑もやむを得ない」が八割だが、うち四割は「状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい」。終身刑の導入なら「死刑を廃止する方がよい」が四割である。
 国連からは死刑廃止の勧告を何度も受け続けている。もっと国際的な批判を真面目に受け止めた方がよかろう。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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「死刑とは何か~刑場の周縁から」 【「神的暴力」とは何か 死刑存置国で問うぎりぎり孤独な闘い】死刑の暴力の恐怖を、身体を接触し分かち合う感覚が中和している
《死刑とは何か~刑場の周縁から》 加賀乙彦著『宣告』『死刑囚の記録』 大塚公子著『死刑執行人の苦悩』
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