暴走検察の果て 「罪なき罪」をつくる検察の大罪 週刊朝日2010/2/26 検察大物OB対談 ■小沢不起訴■
聞き手 魚住 昭(うおずみ・あきら)
1951年、熊本県生まれ。一橋大学法学部卒業後、共同通信社に入社。87年から司法記者クラブに在籍し、東京地検特捜部、リクルート事件などの取材にあたる。96年退社し、フリーに。著書に『特捜検察の闇』(文春文庫)など。04年『野中広務 差別と権力』(講談社文庫)で第26回講談社ノンフィクション賞受賞
元大阪高検公安部長 三井 環(みつい・たまき)
1944年、愛媛県生まれ。中央大学法学部卒業。02年4月、大阪高検公安部長として在職中に検察の裏ガネづくりの実名告発する直前、詐欺などの容疑で大阪地検特捜部に逮捕。08年に最高裁で懲役1年8ヵ月、追徴金約22万円の実刑判決が確定、静岡刑務所に服役。未決勾留を除いた1年3ヵ月の刑期を満了し、今年1月に出所。著書に『告発!検察「裏ガネ作り」』(光文社)
元広島高検検事長 緒方 重威(おがた・しげたけ)
1934年、東京都生まれ。早稲田大学大学院修士課程中退。公安調査庁長官、仙台、広島高検検事長を歴任。97年に退官後は弁護士。07年6月に朝鮮総連中央本部の不動産売買に絡む詐欺事件で東京地検特捜部に逮捕され、09年7月に東京地裁で執行猶予つきの有罪判決を受けた。現在、控訴中。著書に『公安検察 私はなぜ、朝鮮総連ビル詐欺事件に関与したのか』(講談社)
三井 緒方さんにお目にかかれてほんまにうれしい。私ね、高松地検次席検事時代に一度お会いしとるんですわ。
緒方 そうでしたか?
三井 確か、緒方さんが公安調査庁にいたときに、巡視か何かで来られて、一杯やりましたよ。調査活動費で。(笑)
緒方 ああ。高松に行きましたね、そういえば。あれからずいぶんになりますねぇ。お互い、まさかこんな形で再会するとは。(苦笑)
魚住 今日は民主党の小沢一郎幹事長をめぐる一連の捜査について、検察幹部を経験されながら特捜部に逮捕・起訴されたことのあるお二人にお話を伺いたいと思い、お集まりいただいたわけです。東京地検は、小沢幹事長を嫌疑不十分で不起訴としましたが、私は正直びっくりしましたね。今まで特捜部が大物の政治家を公然と2度も被疑者聴取して起訴できなかった例はなかったんじゃないかと思います。
緒方 ええ。私の記憶にもありません。
魚住 今回の事件では、小沢氏の元秘書である石川智裕衆院議員らが起訴された政治資金規正法違反はいわば饅頭の皮に過ぎません。あんこは胆沢ダムの建設をめぐって、水谷建設の水谷功元会長から小沢氏側に渡ったとされる5千万円の“ヤミ献金”だった。検察は、おいしいあんこを目指して捜査を進めたけれど、実際にはあんこが腐っていた。水谷元会長のいい加減な供述を真に受けて捜査の出発点を間違えたために、与党の幹部を2度も聴取しながら起訴できない、という大失態につながったのではないでしょうか。
緒方 小沢さんの身辺を調べてきて、何であそこにカネがたまっているのか、汚職があるのではと考えていたところに、水谷元会長の供述が出て、飛びついたのでしょう。特捜部は検事の登竜門ですから、そこで手柄を立てると次のいいポジションにいける。だから焦りが出て慎重さに欠けた捜査になった。水谷元会長の供述もあることだし、石川議員ら3人を捕まえれば何か供述が出てくるだろうということで、しっかりした物証もないまま踏み切ったんでしょう。
小沢氏の剛腕に戦々恐々の検察
魚住 ところが、石川さんから、ヤミ献金の事実はもちろん、小沢氏との共謀を裏付ける具体的な供述も得られなかった。このところの検察の暴走ぶりからすると、無罪判決覚悟で「小沢起訴」もあり得たかもしれない。そう考えると、今回、検察は小沢氏に関してはよく不起訴で踏みとどまりましたね。(笑)
三井さんは現役の検事時代、検察が調査活動費を裏ガネにしている実態を告発しようとして、2002年に大阪地検特捜部に逮捕・起訴されましたね。全くのでっちあげだと否認を続けられていましたが、有罪判決が出て実刑になりました。在職時代から現在までずっと検察庁を見てきて、いつごろから検察が劣化し始めたと思われますか。
三井 私は今年の1月18日まで静岡刑務所に服役していたのですが、興味があったので資料を取り寄せて、檻の中から小沢さんの事件を見ていました。私は「検察の捜査能力が落ちた」「見込み捜査」というよりも、検察による意図的な小沢・民主党つぶしという気がするんです。水谷元会長の供述そのものが怪しい、そのことぐらいは逮捕する前から検察だってわかっていたはずです。普通はもっと証拠を固めてから逮捕する。こんな杜撰な捜査はしませんから。
魚住 私は今回、検察が再び小沢さんの捜査に乗り出した一番の動機は昨年の西松建設事件の“失地回復”だと見ています。この事件で、小沢氏の公設第一秘書、大久保隆規氏の逮捕は小沢氏への入り口に過ぎないといわれながら、小沢氏にまで手が伸ばせなかった。逆に「不公正な捜査」だと世論の批判を浴びて、「小沢はこれだけ悪質だったんだ」ということを立証しなくてはいけない立場に検察が追い込まれた。その焦りが裏目に出たんじゃないでしょうか。
三井 確かに。以前は選挙に影響を及ぼす時期に強制捜査をしないということは不文律になっていた。でも、西松建設事件では09年3月3日という総選挙に影響のある時期に大久保秘書を逮捕した。ただ、検察独自の判断ではないでしょう。当時の麻生政権は断崖絶壁でしたし、長年握ってきた権益を手放したくない、そういった“権力筋”が土壇場でやったことかもしれない。
魚住 いや、検察は麻生さんの指示で動くような組織ではないでしょう。彼らは政治家を馬鹿にして自分たちがいちばんエライと思っている。国家の主役は俺たちだと。
緒方 いや、官邸主導の捜査というのはありえます。私のケースがそうです。私は07年6月28日に朝鮮総連本部の不動産売買をめぐり、事実無根の詐欺の疑いで東京地検に逮捕されましたが、これには当時の安晋三首相サイドの意向が強く反映しているんです。
魚住 どういうことですか。
緒方 朝鮮総連の会館の登記が私の経営していた会社に移ったのは6月8日でした。その日に当時の公安調査庁長官から総連会館を買った経緯について問い合わせの電話があったんです。理由を尋ねると「官邸に報告しなくてはならない」という。さらに休み明けの月曜日の朝、再度、長官から電話が来て「官邸からもっとよく聞くようにと言われたので人をやります」というんですね。翌日には検察からも話を聞きたいといってきた。そしてまさにその火曜日の12日の朝刊で毎日新聞が朝鮮総連本部の売却問題をトップ記事で書いたわけです。
魚住 なるほど。
緒方 驚いて、官邸にどういう報告をしたのか、公安調査庁の担当者に聞くと「緒方さんの言う通り、報告しました。井上義行首相秘書官(当時)が烈火のごとく怒ってましたよ」と言うんです。私は在日の北朝鮮の人たちのよりどころを守るために、大使館的な役割を果たしている総連会館を購入したわけですが、このことが、北朝鮮に対し厳しい態度を取っていた安倍首相に刃向かったと取られたのでしょう。その日のぶら下がり取材で、安倍首相は「元公安調査庁長官がこんなことをやるなんてとんでもない」と発言し、その翌日には特捜部が私に対する捜索差し押さえを実行しました。この流れを見れば、官邸の意向を忖度してやったのは明らかです。
魚住 そうですか。ところで、僕は小沢さんをターゲットにした二つ目の動機として、彼に対する恐怖心があると思うんです。小沢さんが政権の中心にずっと居座り続けるとなると、今まで検察が中軸になって守ってきた霞が関の秩序が、例えば事務次官会議の廃止などによってめちゃくちゃになる、という。
三井 霞が関というより検察を守るための“小沢つぶし”ですわ。民主党が取り調べの可視化法案を出したり、検察庁の人事にも手を突っ込むとにおわせたりしてるでしょう。検察にとって小沢さんは“目の上のたんこぶ”ですから。
魚住 特に、人事に手を突っ込まれることに対する恐怖感が強かったでしょうね。田中角栄元首相もロッキード事件で10年くらい検察とにらみ合っていましたが、あれほどの権力者でも検察人事には手を出せなかった。でも小沢氏ならやりかねない。
三井 私自身は人事に手を突っ込むことは良いことだと思います。外国では検事や裁判官を選挙で選ぶ国が結構あります。それがいちばん民意を反映するんです。今の検察や法務省人事はほとんど民意が反映されていませんから。
魚住 それから、三井さんが告発した“検察最大の恥部”裏ガネ問題を暴かれてしまうのではないかという強い恐れもあったと思います。私は、02年に鈴木宗男議員の汚職事件を無理やり摘発したのは、三井さんの裏ガネ告発から世間の注目をそらすためだったのではないかと疑っているくらいです。世間の耳目をひく事件をどんどん摘発していけばマスコミの関心はそちらに向く。裏ガネ問題にフタをするためには、常に新しい事件をやらなければならないという自転車操業体質が身についてしまったのではないでしょうか。
大声で怒鳴られ人格を壊される
三井 そのために、検察は縄張りを経済界まで広げていった。今まで政官界ばっかりやってきたんだけれど、それができなくなってきましたから。
魚住 その典型が06年のライブドア事件ですね。いきなりライブドア本社へ強制捜査に入り、堀江貴文社長(当時)ら経営者を逮捕した。しかし、起訴されたのは有価証券報告書の訂正で済むような証券取引法違反のみ。強制捜査するほどの事案ではなく、「万引きに死刑」と揶揄されました。今回の事件も、04年10月に土地を買ったのに05年1月と政治資金収支報告書に書いたという、2、3ヵ月記述がずれた、あるいはずらしただけの話です。それをあたかも重大で悪質であるかのように見せかけてマスコミをあおり、石川議員の逮捕に踏み切ったんです。
緒方 確かに、元検事として、このような地検の暴走に対して、高検、最高検などの上層部が現場の検察官をどうして抑えられなかったんだという思いがあります。ただね、政治資金規制法違反があったことは、石川さんが取り調べで認めているように事実ですし、リークの問題は別として、マスコミにあれだけ騒がれたら、検察もやらざるを得ないということもあったんでしょう。
魚住 そこで緒方さんに伺いたいのが、特捜の取り調べの実態です。緒方さんも、07年に朝鮮総連本部の売却をめぐる詐欺の疑いで逮捕され、一度は自白していらっしゃいますよね。
緒方 ええ。本当に情けないことで、ずっと後悔しているのですが、私も「虚偽の自白」をしています。特捜は事情聴取のなかで私の否認調書すらとりませんでした。特捜は彼らが描いたとおりの供述のみを取ろうとする。でも、それは事実と乖離しているわけです。それでも、否認し続けられるかというと、弁護人のサポートがあってもグラグラするんですよ。
魚住 元検事の緒方さんでも、そうなるんですか。
方 私の場合、なまじ、実態を知っていることが裏目に出たと思います。毎日、昼から深夜まで調べられてヘトヘトになっているところに「物証がある。共犯者、被害者の証言も取れている」と言われる。のちにこれはウソだとわかりましたが、そのときは、今の裁判のシステムではいくら僕が否認しても持たないな、という迷いが出てくるんです。後輩の検事に大声で怒鳴られるのもきつかった。
魚住 大先輩の緒方さんを怒鳴りつけるんですか。
緒方 そうです。検察のシナリオで被害者とされた朝鮮総連は、「だまされたとは思っていない」と言って被害届けも出していませんでした。しかし、私の逮捕に踏み切った以上、なんとしても起訴に持ち込まなければならず、そのためには私から容疑を認める供述を取らないと事件にならない。必死だったんでしょう。取り調べる側から取り調べを受ける側になってわかったのは、検察は人格を破壊して被疑者や参考人から思うような供述を取るということです。
魚住 特捜の常套手段で、「壁に向かって立て」と言って、何時間も立たせたまま取り調べるそうですね。緒方さんは何が一番つらかったですか。
緒方 家族をダシにされたことですね。20日間の勾留のうち16日目までは頑張っていたんです。でもそこで、家族からのメールを見せられて。そのときに副部長から「争うなら裁判に5年はかかるよ。あんたそのとき80歳だろ。それから実刑で刑務所に入ったら死ぬまで出られない。長期公判でつらい思いをする家族のことも考えてやれよ」と言われたんです。僕がのみ込めば家族のためにもいいのかなと、それで僕は落ちたんです。認めたはいいが、どうウソの供述を重ねようと悩んでいたんですが、それは杞憂でした。私が結論として詐欺を認めれば、具体的に事実を供述しなくても検察はすでに共犯者から得た供述をもとにしたストーリーをつくっていましたから、そのとおりの調書が作成され、後は調書にサインするだけだった。
魚住 三井さんも取り調べはきつかったですか。
三井 私のときは雑談ばっかりやったですよ。ハナから認めさせようとは思っていなかったんでしょう。否認でも有罪にできる、と思っていたんですわ。
緒方 しかも、三井さんは刑を満期まで務めていらっしゃいますよね。正直、驚きました。服役態度が真面目で、再犯などまったく考えられない人がこのような扱いを受けることはふつうないですよ。満期いっぱいまでというのは過激派と暴力団だけのはずです。
魚住 三井さんが入っていた静岡刑務所は短期刑の初犯の受刑者が入るところですし。
三井 いや、実は昨年3月の時点では、6月に仮釈放になるはずだったんですわ。ところが5月になって、もう1回反省文を書いてくれって言われて、これは駄目やな、と。検察の横槍が入ったということがはっきりわかったのは8月の末。刑務所長が申請した仮釈放が却下される率はわずか2%程度なんですよ。私はその中に入れられたんです。
魚住 要するに検察はできるだけ長く三井さんに刑務所にいてほしかったんでしょう(笑)。検察の裏ガネ問題がこのところの検察の暴走の底流にあると思うんですが、三井さんの今後の動向には検察も相当神経をとがらせているでしょうね。
三井 先日、鈴木宗男議員とお会いしましたが、彼は法務委員会で私を参考人招致して裏ガネ問題を追及したい、と言ってくれました。検察が裏ガネの存在を認めて謝罪すればこの問題も終わります。そうすれば時の権力に利用されることもなくなるでしょう。私は政権交代を獄中で迎えましたが、政権が代わった今こそ、検察が自らを正し、清らかな体で再スタートを切る最大のチャンスだと思う。私は、検察が裏ガネを認めて謝罪してくれるという希望をまだ持っています。
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「小沢VS検察」その報道は何だったか 私は「検事」と「被疑者」の2つを経験した
2010年02月25日 09時00分 Infoseek 内憂外患編集部
新聞やテレビは検察のリーク情報をそのまま報道しているのではないか──。
1月15日に民主党の石川知裕議員が逮捕されて以降、ネットを中心に検察とマスコミに対する批判が巻き起こった。一方、大手マスコミは検察によるリークの存在を一斉に否定。情報はすべて独自の取材結果によるものだと反論した。検察のリークははたして本当に存在するのか。
2月26日(金)18時~ 開催される「緊急シンポ!『小沢VS検察』にみる検察と報道のあり方」にも出演が決定している元大阪高検公安部長の三井環氏(警察・検察評論家)に、リークの実態を聞いた。
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── 2002年4月22日、三井さんは検察の裏金づくりの実態を告発しようとした直前に逮捕されました。一転して捜査する側から容疑者となってしまったわけですが、そのときにはどのようなことを感じましたか?
私は「検事」と「被疑者」という2つの経験をしました。リークする捜査側も経験したし、リーク報道をされる被疑者の立場も経験した。檻に入れる方もやったし、檻の中にも入った(笑)。
だから、両方の考え方がわかります。特に、逮捕される立場になってからは検察とメディアにいろいろな問題点があることがわかりました。
── 事件がおきると、被疑者の情報が一斉に報じられます。今回の事件でも検察しか知り得ない情報が報道されていました。なぜ、検察は捜査情報をリークするのでしょうか?
捜査に世論の追い風を吹かせるためです。追い風が吹けば、事件がやりやすくなる。被疑者以外の参考人の事情聴取でも、追い風が吹いていると調書がとりやすい。
具体的に言うと、私が高松地検で次席検事していたときは、私が取材の窓口でしたので、昼間に1時間ほどとって取材を受け、順番に記者と面会していました。そのときに捜査情報をリークすれば、その情報に憶測が加わったプラスアルファのものが報道されます。記者によって異なりますが、事実でないことを書く記者もいます。
──その場合、検察側は注意や抗議をしないのですか?
検察側に不利となる報道でない限り、反応することはありません。そもそも記者クラブの記者が検察に不利になるような記事を書くことはありませんけどね。
仮に検察にとって不利になるような記事が出た場合は出入り禁止です。だから記者クラブは捜査批判ができません。
──陸山会の政治資金問題では記者クラブ批判が巻き起こりました。一方、大手メディアの記者は、検察と記者の間には緊張関係にあり、リークは存在しないと反論しています。
検事と記者に緊張関係などありません。ブン屋さん(新聞記者)には厳しいスクープ競争がありますので、できるだけ早く書かないといけない。だから記者クラブの記者は裏付けも取らず、こちらの言ったとおりに書く。
また、鈴木宗男議員が検察のリーク問題を問いただす質問趣意書を政府に提出しましたが、政府はその事実を否定する答弁書を出しました。政府がリークを認めてしまえば国家公務員法の守秘義務違反となってしまいますので、法務省の官僚に問いただしたところで返事は「リークはない」と言うに決まっています。
しかし、実際には検事はリークをしています。さきほど捜査をスムーズに進めるために「風を吹かす」と言いましたが、逆に言えば、風が吹かないと捜査が進まない場合もあるからです。徐々に情報を出していくなどして、私も風を吹かすことをやってきました。
── 具体的にはどのような情報をリークするのですか?
私個人の経験では、捜査側の考えが被疑者の供述と異なる場合にリークをしていました。たとえば、被疑者が容疑を否認しているときは「あいまいな供述をしている」という情報を流す。「否認している」とは言いません。
なぜかというと、否認していることが報道されてしまうと、被疑者以外の事件関係者もつられて否認に転じる場合があるからです。ですので、新聞で「容疑者はあいまいな供述をしている」と書かれている場合は、被疑者が否認していると考えた方がいい。
── こういった「リークの技術」は上司や先輩から教育されるものなのですか?
それはありません。検事によってリークの方法は違うと思う。ようするに、マスコミに風を吹かす方法は自分で考える。記者からの取材も、受けるか受けないかは自分で判断するわけで、上司の指示でやるわけではありません。
── 記者が持っている情報を得るために、捜査情報をリークすることもあるのでしょうか?
検事としては、記者が独自取材によって得た情報が欲しい場合もあります。一つの情報が事件につながる場合もありますから。だから検事は記者との付き合いも大事にしています。
私自身も過去にある新聞記者からもらった情報を元に強制捜査をしたものの、何も出てこなくて失敗したこともあります。とは言っても、実際には記者から情報をもらうということはほとんどありません。だいたいがこちら側からの情報提供です。
── メディアのあり方もふくめ検察改革が実現する可能性はあるのでしょうか?
私の目的は、検察に裏金問題を認めさせ、国民に向かって謝罪してもらうことです。それには国民の声が盛り上がる必要がある。国民の声が盛り上がれば、方向が変わる可能性があります。裏を返せば、国民が盛り上がらない限り、いくら政権が変わっても裏金問題の解決はできない。取り調べの可視化も同じです。
相手は法務官僚や検察という巨大権力です。鈴木宗男さんのような政治家が一人で頑張っても、残念ながらどうしようもない。ましてや私一人ではどうしようもない。だから、みんなが鈴木議員のような人をバックアップしなければならない。日本全体に検察問題追及の風が吹けば、検察の問題がもっと表に出て、状況が変わるかもしれません。