落合博満氏 「常識」に喧嘩を売る人生 2013.10.23

2013-10-23 | 相撲・野球・・・など

現役時代の落合博満 常識に喧嘩売り数々の権利を勝ち取った
 NEWSポストセブン2013.10.23 07:00
 監督を退任してから2年ぶりに現場復帰し、中日ドラゴンズのゼネラルマネージャー(GM)に就任した落合博満氏(59)。現役時代の落合氏は球界の“常識”に無謀とも見える喧嘩を売り、周囲の批判をよそに数々の権利を勝ち取ってきた。
 1985年に発足した日本プロ野球選手会は、選手たちの労働組合である。落合氏は副会長として選手の権利拡大に尽力した。
 6年後の1991年には、日本初の年俸調停を申し立てている。これは野球協約で認められている権利であり、落合氏の申請は、経営側の提示に泣き寝入りしがちな選手たちに発憤を促す目的が大きかったが、当時の世間やマスコミからは「金の亡者」と罵られる屈辱を味わう。無力さを実感した落合氏は、翌年、選手会を脱会している。
 それでも落合氏は「オレ流」を貫いた。1993年には、フリージェント(FA)制度の利用“第一号”として、巨人に移籍する。スポーツジャーナリストの永谷脩氏がいう。
「一番の狙いはFA制度を形骸化させないことにあったし、巨人に入団したのも“最も自分に高い評価をくれたから”というものだった。この時も世間の評価は“銭ゲバ”と散々だったが、彼は“何の保障もない個人事業主であるプロ野球選手として当然の権利”として全く意に介さなかった」
 世間から顰蹙(ひんしゅく)を買い、球界の慣例から逸脱しても信念を曲げない強さは、必然的に敵も作った。
 事実、中日での前政権時代も氏の実力を高く買う白井オーナー以外の球団フロントは「反落合」一色で、監督就任8年間はすべてAクラス、うち4回でリーグ優勝という驚異的な成績を残したにもかかわらず、2011年には追い出されるように球団を去った。今回のGM就任で現球団社長をはじめ多くのフロント陣が交代したのも、高木政権時代のチームの低調を追い風にして「反落合派一掃」を落合氏が突きつけたからだと噂されている。
※週刊ポスト2013年11月1日号
 ◎上記事の著作権は[NEWSポストセブン]に帰属します *リンクは来栖
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落合監督の『采配』を読もう/選手の情報をむやみに語らない 個人事業主の権利を徹底的にリスペクト  
 ビジネスマンよ、落合監督の『采配』を読もう
 Diamond online2011年11月30日 山崎元[経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
ソフトバンクVS中日 極上の緊張感があった日本シリーズ
 つい先日まで戦われていた福岡ソフトバンク・ホークス対中日ドラゴンズの日本シリーズは、久しぶりに快適な緊張感を覚えながら観戦した野球の試合だった。
 近年、テレビで放映される野球の試合自体が減ったが、サッカーのような一瞬も目を離せないスポーツと比較して、いかにも弛緩して見えることが多かった。しかし、今シリーズは、一球一球の「間」に緊張感が漂い、久しぶりに真剣勝負を堪能した気分になった。
 この緊張感の源は、明らかに中日ドラゴンズの監督だった落合博満氏だったと思う。今期の数字を比較した段階では、中日がソフトバンクに勝てるとはとても思えなかった。
 しかし、落合監督なら、これを何とかするのではないかという不気味さがシリーズ全体を支配した。特に、ソフトバンクの一線級のピッチャーと戦って、何とも打てない(本当に、打てなかった)中日打線で勝利をもぎ取った第一戦、第二戦の両チームを金縛り状態にするような緊張感は、腕組みをしながらじっと戦況を見つめる落合監督が作ったものだろう。
 こういう試合が見られるなら、球場にも行きたいし、テレビでも野球を見る気になる。巷間言われるところでは、落合氏は、集客効果の悪い監督だと球団に嫌われて、乱暴にもシーズンの途中に今季限りでの解任が発表されたとされている。
 しかし、筆者には、せっかく落合氏が極上のコンテンツを作っているのに、中日球団の営業努力が不十分で集客が減ったように思えるのだが、どうなのか。これは、たぶん来期の中日の様子を見ると、何が問題だったのかがわかるのだろう。
 さて、つい先日まで中日ドラゴンズの監督だった落合博満氏は『采配』(ダイヤモンド社)という本を著した。これは、現代のビジネスパーソンが読む価値のある本だと思うので、紹介してみたい。
落合監督の根底にある考え方 全てのビジネスパーソンは「個人事業主」
 筆者の読むところ、「采配」の最大のメッセージは、野球の場合は全ての選手・監督・コーチ・球団スタッフ、また野球関係者だけではなく、全てのビジネスパーソンは基本的に「個人事業主」なのだという考え方の徹底にあると思う。
 マネージャーとしての落合氏は、部下である選手を徹底的に競争させ、競争の文脈の中で鍛え上げて、パフォーマンスを発揮させる。だが、選手が落合氏のチームの中でパフォーマンスを上げ得る「ポジション」を得ることは、容易ではない。
 たとえば、自分から「痛い」と予め言い訳をするような選手を、落合監督は使わない。せっかく掴んだ、あるいは掴みかけたレギュラーのポジションを簡単に明け渡すような選手は戦いには使えないということなのだろう。
 「采配」の中には、中日の選手のポジション争いの実例が出てくるが、選手に嫌われることを一切恐れず、厳しい評価と使い方に対するバランスを公平性で保つ落合流のマネジメントが語られている。
 ビジネスパーソンのマネージャーの場合、自分自身がマネージャーであると同時にプレイヤーであることが多いので、自分も含めた公平性という難しい問題が出てくるが、マネジメントの基本は同じだ。
 近年、日本の会社で、ベテラン社員の持つ技や顧客が後の世代に十分伝えられていないのではないかという問題が生じているが、社員それぞれが「個人事業主」なのだとすると、会社が期待するような「引き継ぎ」が自然に起こると考える方がおかしい。
 個々の社員に対する公平な扱いと共に、後進の育成に関してはマネジメントの積極的関与が必要だ。
 レギュラーのポジションは、選手同士で決着をつけさせろと落合氏は言う。また、個人が勝負に必要な孤独に耐えるためには、「野心」を持てとも落合氏は言うのだが、落合氏の言う「野心」とは、相対的な競争の中で「何が何でも勝つ」という決意のことだ。
 近年の日本企業では、「競争」と「野心」によるマネジメントが後退しているような感じを受けるのだが、ビジネスパーソン読者は、どのように思われているだろうか。
 一方、落合氏のマネジメントは、鉄拳制裁のような安易な田舎芝居に頼らない。彼は、鉄拳制裁が嫌で大学の野球部を辞めた人だ。活躍の場を与えるか否か――。これが最も厳しく有効なインセンティブであることを、かつて「下積みも、頂点も知っている選手」であり、個人事業主的な選手を突き詰めた落合氏はよく知っている。
選手の情報をむやみに語らない 個人事業主の権利を徹底的にリスペクト
 そして、非情なまでに厳しい評価者・マネージャーである一方で、落合氏は、個人事業主である選手の権利を最大限尊重する。
 特筆に値するのは、選手の情報に関する徹底的な管理だ。
 落合氏は、選手の体調に関する情報は、個人事業主たる選手にとって企業秘密に匹敵する重要情報だという。表の故障・隠れた故障を問わず、監督がぺらぺらと選手の体調についてメディアに話すことは、戦いに不利であると同時に、個人事業主である選手に対する背信行為なのだ。
 レギュラークラスで戦い続けている選手は、ほぼ必ず「どこが痛い」といったトラブルを抱えているものだが、時には、監督にも不調を隠してポジションを維持し続けるものなのだと落合氏は語る。
 選手に関する技術的な情報監理も徹底している。本の中では、セカンドとショートの共に名手である荒木選手、井畑選手のコンバートに関するエピソードが語られているが、読者が最も知りたいと思うコンバートの技術的理由に関しては、「2人の技術に関わることは記述を避けるが」と断って、語られず終いなのだ。
 本が出た時点では、落合氏は中日の監督を解任されることが決まっており、この気遣いは、当面の落合氏の利害から発生したものではないだろう。選手に対して当然払うべき敬意の表れであると共に、これが落合氏のプロ(野球人)としての倫理感なのだろう。
 そしてもちろん、これは、落合氏が再びユニフォームを着て仕事をする際に必要な「信用」に関わる問題でもある。
個人事業主をリスペクトする姿勢は 今の企業においても尊重されるべき
 ちなみに落合氏は、「選手がユニフォームを脱ぐときの去り際はきれいにする方がいい」とも言っている。今後も、野球に関わる世界で食べていくとすると、球団と険悪な関係になって引退すると、後々不都合が多いのだという。ビジネスパーソンにとっても、転職や退職の際に参考になる考え方だ。
 日本のビジネスの世界では、かつてよりも企業というものが頼りないものになって来た。今や企業は、社員の一生の生活の面倒を見ることができる存在ではなくなった。
 特に、こうした環境では、相手が上司であっても、部下・同僚であっても、1人1人が個人事業主として一国一城の主なのだという前提で付き合うべきだろう。
 ちなみに、三度三冠王を獲った落合氏の「実績」に対するこだわりは、並々ならぬものがある。現在の中日の選手(野手)で、実績において自分を上回る選手がいない以上、彼らは落合氏の言うことを聞くのが当然だと氏は考えているし、200勝を達成した山本(昌)投手、300セーブを達成した岩瀬投手のような実績のある選手だけが、ユニフォームを脱ぐ時を自分で決めることができるのだ、とも言っている。
 自分の仕事の実績をもって、胸を張ることができるマネージャーがどれだけいるかと考えると、日本のビジネス界はまだまだ甘いのではないかと、思わずにはいられない。
*勝負の分かれ目はどうやって「差」を作るか 野村ID野球に対する「落合流基礎体力野球」
 落合・中日はいかにして勝って来たのか。
 おおよそ勝負事には全て、相手に対して何で「差」を作って勝っていくかというゲーム・プランが必要だ。落合氏は、どう勝負したのか。
 監督としての勝負のあり方については、たとえば、データを駆使して作戦を考え、選手にも考えさせる「ID野球」で有名だった野村克也氏との比較で、自分の戦略を説明している。
 落合氏によると、かつてヤクルト・スワローズを率いた際の野村監督は、選手の基礎体力や基本的な技術がかつてよりも落ちていることを、感じていたはずだという。そこで、当時の野村監督は、これを頭脳の強化で戦うことにしたのだろう。
 一方、落合氏は、「12球団一」と言われるハードなトレーニングで、基礎体力を強化することと、技術の基本を徹底することによって、中日を勝たせることを基本戦略とした。頭よりも前に体を鍛えることで、差を作ろうとした。
 落合氏は、2004年の監督就任当時にキャンプ初日から紅白戦を行なうことを選手に通告し、キャンプインまでに野球ができる体を作ることを要求した。また、他球団が四勤一休を基本とするキャンプのスケジュールを、中日は「六勤一休」として、選手を鍛え上げた。
 厳しい練習で基礎体力ができたお蔭だろう。中日は、特に体力的にきつくなる夏場以降の戦いにおいて優位に立つことができ、シーズン後半に強いイメージが定着した。
ビジネスの世界に目を転じると、そもそも「何で勝とうとするのか」が明確でないチーム(企業)があまりに多いように見える。たとえば、製品にもビジネスモデルにも特徴が感じられない、似たような家電メーカーが数社、日本国内では「大手」と呼ばれて競争している。
 あるいは、外資系証券から世界のライバルに勝てるとは思えない事業部門を買って、プレイヤーを上手くマネージできずに、かえって会社がプレイヤーたちの喰い物にされている感のある大手証券会社がある。彼らは、漫然とライバルの真似をしながら、自分が勝てる幸運を待っているだけのように見えるのだが、どうなのだろうか。
 ところで、ID野球的なデータの活用は、落合氏自身も「嫌いでない」と言っており、また中日は、落合氏の監督就任以来、データを集めるスコアラーを他チームの2~3倍有していることでも知られている。しかし、データの集め方、使い方に類する技術的な問題について、落合氏はこの本でほとんど何も語っていない。
『采配』で語れらなかった胸の内 落合監督には「続編」がありそう
 ちなみに、落合氏が「秘密」を開陳しているのは、自分の選手時代のエピソードだけであり、これは掛け値なしに面白い。データマンの錯覚を利用して「外角球が得意な落合」というイメージを作り、実際には、内角や真ん中の球をよく打っていた、という話が出ている。現役当時、このことは、奥さんや息子さんにも話さなかったそうだ。詳しくは本を読んで欲しい。
 「六勤一休」のキャンプや、川崎憲二投手を開幕戦に先発させて選手の人心を掴んだ最初のシーズンのエピソードなどは、たぶんすでに表に出ているので、説明してもかまわないのだろう。
 しかし、データの使い方のような監督としての技術論に関わる情報は、これから再び監督としてユニフォームを着るかも知れない「個人事業主」たる落合氏にとっては、まだまだ企業秘密なのだろう。
 監督としての落合博満氏には、遠からぬ時期に「続編」がありそうだ。いつなのか、どのチームなのかはわからないが、再登場を大いに期待したい。
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